【大紀元日本4月3日】中国人民軍の機関誌・解放軍報2日付の記事で、七大軍区の首長を含む17人の軍高官が習近平主席に忠誠心を誓った。3月31日に軍史上最大の汚職事件が起訴された直後の出来事に、中国問題専門家は軍内部に亀裂が生じたと分析する。
七大軍区の首長のほか、海軍、空軍、第二砲兵隊、武装警察部隊、総参謀部などの高官の署名記事は同紙第六面を埋め尽くした。どの記事も習主席を全面的支持する内容だった。「習近平の指示はいつでも成し遂げられるよう保障する」、「習主席が自ら舵を取り、軍は大きな試練を迎えようとしている」、「党中央、中央軍事委員会と習主席の戦略と決定で足並みをそろえよう」などなど。
3月31日に軍の物資調達を担当する総後勤部の谷俊山元副部長が横領、収賄、公金流用、職権濫用の容疑で軍事裁判所に起訴された。汚職金額は3000億円と伝えられている。同月14日、谷を抜擢した徐才厚元軍事委員会副主席は軟禁状態に置かれていると海外メディアが報じた。また、同月15日、新たに設立された軍の改革深化を監督する新組織「国防・軍隊改革深化小組(指導グループ)」の第一回目の会合が開かれ、習主席がトップに就任した。順当であれば、軍ナンバー2の軍事委員会副主席の範長龍が常務副組長に就任するはずだが、それより低い席次の副組長の職に留まった。範は現在軟禁中の徐と親密な関係にあり、いずれも江沢民グループに近いとみられている。
2年間の拘束を経て起訴された谷の汚職事件は軍内の腐敗がはびこり、既得権益層の改革に対する抵抗が根強いことを意味する。米紙ニューヨークタイムズ1日付の記事は軍に近い情報筋の話として、谷の汚職に多くの上層部が関与しており、「根まで腐っている」と伝えている。さらに、これまでに分かった汚職事実からみると、谷は利権の末端に過ぎないという。
そのため、2012年に失脚した谷への調査はなかなか進まなかった。調査チームから谷に情報が漏れ、証拠隠滅などで難航していた。これに激怒した習は国家主席に就任後、調査に本腰を入れたとの情報もあった。
習主席は軍の腐敗で自身が掲げる「強軍目標」の妨げになっていると危機感を強めており、軍の内部講話で「谷を生んだ土壌を深く掘り下げ」、「様々なスケールの谷俊山を処分する」と発言したという。
薄煕来や周永康など江グループの中心人物が相次ぎ失脚するなか、汚職撲滅はついに軍部に及んだ。このことに江グループは反撃を見せている。習主席が外国訪問中の3月27日、国営中央テレビ(CCTV)のゴールデンタイムのニュース番組で突然、56秒の長さで江沢民元主席に関する本の出版が報じられた。同時に、江グループに近い立場の海外メディアは習主席の「性急な」腐敗取り締まりを江元主席が批判したと伝えた。英フィナンシャル・タイムズもその後、「反腐敗運動の勢いを落とし、党の上層部とその親族を摘発対象にしないよう」江元主席が習主席に警告したとの記事を掲載した。
こうした背景で軍高官らの「忠誠記事」について、大紀元のコラムリスト・石蔵山氏は「異例な出来事だ」と指摘し、軍内で大きな亀裂があったと分析した。
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