【大紀元日本5月28日】米金融大手ゴールドマン・サックスは20日、香港株式市場において、11億ドル(約1114兆円)に相当する中国銀行最大手の工商銀行(ICBC)の持ち株を売却した。これでゴールドマン・サックスは所有する工商銀行の株をすべて売却したこととなり、同行から完全に資本を引き揚げたことになった。
20日、同社は1株あたり5.47~5.50香港ドル(約71~72円)と設定して売却を始めた。工商銀行の同日の終値は1株あたり5.64香港ドル(約73円)となり、およそ3%のディスカウントという格好になった。
2006年、工商銀行が香港市場で新規株式公開(IPO)する前に、ゴールドマン・サックスは25億8000万ドル(約2613億円)で同行発行の株式のうち4.9%を獲得した。しかし今回を含め、ゴールドマン・サックスは2009年以降、 所有する工商銀行の株式を6回にわたり売却してきた。これらの売却を通してゴールドマン・サックスは約100億ドル(約1兆127億円)の資金を調達したとみられる。
ゴールドマン・サックスが工商銀行の持ち株をすべて売却した理由は、中国の景気減速に伴い、製造業セクターにおける過剰生産問題が深刻化しており、銀行セクターの不良債権が急増し、投資リスクが拡大したことが主因だとされている。
中国建設銀行のある支店長(匿名希望)は大紀元の取材に対して「中国経済が急速に発展しているときは、銀行のすべての不良債権や回収不可能の貸付などは一時的に隠されたが、現在景気が鈍化しているため、潜んでいたリスクが一斉に露呈する可能性がある。中国建設銀行の(不良債権や回収不可能な貸付の)具体的な数字については言えないが、 すでにかなり恐ろしい水準になっている」と話した。
国内のある私募ファンドのマーケティング・マネージャーを務めている張盛杰さんは大紀元の取材に対して、「ゴールドマン・サックスが所有するすべての工商銀行の株を売ったのは当然のことだと思う。われわれのファンドも持ち株を減らしている。一見銀行セクターは利益が多そうだが、実際には不良債権が増え続けているし、地方政府の債務も増加しているからだ。 このリスクを看過ごすことはできない。国際資本はもう中国を空売りしている。これは冗談ではない」と述べた。
18日付英紙「ディリー・テレグラフ」電子版によると、米調査会社マディ・ウォーターズ・リサーチの創業者で空売り投資家のカーソン・ブロック氏は、中国の銀行システムのリスクは2008年世界金融危機前の欧米金融機関が持つリスクを上回っていると指摘した。また、ブロック氏が、中国経済の減速より、英金融大手スタンダード・チャータード銀行の中国における融資業務を懸念しているとの認識を示したため、13日のロンドン株式市場において、同行の株価は前営業日終値と比べて4.7%も急落した。統計によると、過去2年間において計6つの空売りフォンドが、香港株式市場に上場している14社の企業に対して空売りを行っていた。
国債資本が中国をターゲットに空売りを行う原因が主に三つある。一つ目は、中国経済成長の回復力が乏しいことだ。今年第1四半期(1~3月期)の国内総生産(GDP)伸び率は7.7%で、8%を下回る予想外の鈍化となった。また英銀行大手HSBCが23日発表した5月中国製造業購買担当者指数(PMI、速報値)は、7カ月ぶりに景気の悪化を示す節目の50を下回り、49.6となった。二つ目は、増え続ける莫大な負債に対して、中央政府による不動産価格抑制政策の実施で地方政府の土地譲渡収入と地方政府の税収が伸び悩んでいることに投資家たちの警戒感がますます高まっていることだ。三つ目は、抑制政策を厳しく実施すれば実施するほど不動産価格は吊り上がり、不動産バブルをさらに膨張させている状況が、かつての日本の不動産バブルとよく似ていることだ。
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