【大紀元日本10月5日】中国の電子商取引最大手、アリババ・グループの馬雲(ジャック・マー)会長は9月30日、米スタンフォード大学で講演した際に、同社の株主でもある米インターネット検索大手ヤフーの買収に「非常に関心を持っている」と、買収を検討していることを明らかにした。
このニュースが世界を駆け巡る中、かつてヤフーが中国当局にユーザーの個人情報を提供したことで中国人記者が10年間の禁固刑を言い渡されたことや、米国民の個人情報が中国政府とつながりをもつ中国企業に支配されることへの不安が浮上し、波紋を呼んでいる。
アリババが買収意欲を表明
アリババは1999年に浙江省杭州市で設立された電子商取引運営会社。同社の発展は米ヤフーの大規模投資によるものが大きく、現在もヤフーはアリババ の株式の43%を保有している。しかし、経営不振に陥ったヤフーと対照的に、アリババは「ヤフー中国」や電子商取引サイト「淘宝網 (Taobao.com)」などを運営し、急成長を遂げてきた。
アリババの馬雲会長はこうした背景から米ヤフー買収への意欲を示した。9月30日、スタンフォード大で開催された中国のインターネットの現状・展望についての会議「CHINA2.0」で講演した馬会長はその後の質疑応答で、「ヤフーに非常に関心を持っている」と述べ、「(ヤフーを)買うとしたら、部門ではなく全部だ」「我々はヤフーをよく知る数少ない企業の1つだ」と買収への強い意欲を語った。
個人情報への懸念
中国企業が発した買収発言は、世界でヤフーユーザーの個人情報に対する懸念を呼び起こした。3日付の英フィナンシャル・タイムズ紙は、米国の個人情報保護団体の警告として、「中国国外にいるユーザーの個人情報が漏えいする危険性や通信傍受に関する米国法の運用への疑問が生じている」と報じた。
同報道はさらに、「アリババがヤフーを買収すれば、中国政府がかつてひそかにグーグル利用者を偵察していたとされる代わりに、米国民数百万人の監視が可能になる」と、同じ団体の指摘を引用して伝えた。
中国インターネット業界のアナリストで投資家の米国人ビル・ビショップ氏(北京在住)は同じ3日に、自らのブログで「米政府はアリババによるヤフー買収を阻止する可能性がある」と題する文章を発表。「政治上の考慮で買収は難しいだろう。ヤフーには億に上るメールアカウントや、米インターネットユーザーの数十億、数百億の閲覧履歴がある。さらにアメリカ人のクレジットカード情報や支払い情報。今現在の政治環境で、外国投資委員会(CFIUS)や国会は、米国の大手インターネット企業が中国企業の手に渡されることを座視するわけがない」
ダウ・ジョーンズ系の経済メディア「マーケット・ウォッチ」も同じ見解を示している。3日掲載された報道で、「インターネット上の個人情報の敏感性が関係して、(アリババがヤフーを買収する)すべての動きに米政府当局者が注目するだろう」とアナリストや弁護士らの見方を紹介した。「買収は反トラスト法に引っかかる可能性は低いが、国家安全問題に触れる場合は話は別だ」という。
ヤフーの顧客情報提供の過去
マーケット・ウォッチはさらに、「インターネット企業が中国で経営を存続させるためには、(中国政府に)個人情報を提供することが条件である」と指摘する。その例として、2005年にヤフーが提供したメール通信記録により、中国人記者がいまだ監禁されていることを挙げた。
2005年9月、中国の記者・師涛氏は国家機密漏えいの罪で中国当局に10年の禁固刑を言い渡された。「罪」の証拠となったのは、前の年に師涛氏がヤフーのメールアカウントを通じて米国へ送信した電子メールだった。当時、中国の関連調査部門がヤフーの協力の下で、師涛氏のメール記録にアクセスし、「国家機密情報」漏えいの証拠とされるメールを入手したという。
ヤフーが中国企業に買収された場合、そういった漏えいがいっそう頻繁に行われることが懸念される上、国外ユーザーにも同様な不正アクセスが及びかねない。前出のビショップ氏はブログ記事の中で、馬会長がヤフーを買収できたとしても、「ヤフーユーザーが果たして自身の個人情報を安心して中国の企業に任せるかどうか」といった挑戦にぶつかると指摘した。
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