【大紀元日本9月5日】8月30日、英国コンサルタント会社、エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が「世界で最も住みやすい都市」についての報告を発表した。
半年に一度のこの報告は、世界140カ所の都市において調査を行う。今回のトップ3はオーストラリア・メルボルン、オーストリア・ウイーン、カナダ・バンクーバーとなった。中国の8都市もランキングされており、北京の72位をトップに、蘇州73位、天津74位、上海79位、深セン82位、大連85位、広州89位、青島98位と続く。
交通、汚染問題が深刻な北京
EIUは順位を決定する際、社会の安定、環境、医療水準、基礎インフラ、教育、文化など30項目のレベルを判断基準としている。しかし一部のウォッチャーからは、この順位に疑問の声が上がっている。
ニューヨーク大学ワグナー公共政策大学院都市行政専攻・郭湛教授はVOAの取材に対して、次のような考えを示した。
北京には中国全土からの資金や資源が集中し、基礎インフラ、教育、医療、文化などの方面におけるレベルは間違いなく高い。これらいくつかの面だけを見れば、この順位付けにも納得できる。
だが、都市交通の点から見れば、北京は今の順位より遥かに下である。北京の交通問題が中国の他の都市より深刻であることはよく知られており、上海、深セン、広州とくらべても最も深刻だ。この点は現地の人々や政府職員も認めている。この点から見れば(中国で)最も居住に適しているとは言い難い。
空気の質から言っても北京はあまり居住に適していない。以前北京には首都鉄鋼集団有限公司(首鋼)など多くの工業が存在したため、汚染が深刻だった。現在全ての産業は移転しており、この面においての汚染状況は以前よりはよくなっているが、北京に近い内モンゴルの砂漠化地帯では砂嵐が深刻になり、空を覆い尽くす黄砂は北京の大きな問題となっている。
ニューヨークに13年住んだ向さんは、家族と共に最近北京へ移った。VOAの取材を受けた際、向さんは北京で最も大変な事は外出だと話している。「移って来て間もなく自転車を2台買ったが、これでは近くに行くことしかできず、遠い場所へは車で行くしかない。でも本当に車での移動が必要な時、タクシーは捕まらない。大雨が降った時、子供を連れて路上で3時間待ってもタクシーに乗れなかったことがある。今は車を購入したが、通勤ラッシュ時の道路の渋滞はひどいものだ」
最も適した居住者はだれだ
英フィナンシャル・タイムズの「北京は誰が住むのに最も適した都市か」と題する報道によると、北京では毎日数百万台のドライバーが渋滞の影響を受けているし、数百万人の出稼ぎ労働者は、家賃が高いため、職場から2時間離れた農村で仲間と一緒に狭い部屋を借りたり、地下室に住むことしかできない。また、外来人口を制限するために、北京市にある20カ所以上の出稼ぎ労働者の子供のための学校は今夏、期限付きの運営停止命令を受け、3万人の児童が勉学の機会を失ったという。報道は最後に、あるタクシー運転手の「北京は億万長者が住むのに最も適した都市だ」ということばで締めくくられている。
最近、中国の著名な芸術家で人権活動家の艾未未氏が米誌「ニューズ・ウィーク(電子版)」で、北京は暴力都市で、「終わりなき悪夢」であると批判した。この「カネと権力、絶望」の都市のなかで、幹部や企業経営者が贅沢の限りを尽くしている一方で、数百万人の出稼ぎ労働者たちは北京の奴隷である、と同氏は同情している。
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