【大紀元日本6月20日】中国人民銀行が6月14日に発表した報告によると、90年代半ばから汚職幹部や企業トップ、在外政府機関、公安幹部など約1万8千人が8000億元(約9兆9000億円)の資産を海外に持ち逃げしているという。2008年にまとめられたこの報告はなぜか3年後に同銀行の公式サイトに掲載され、直ちに各メディアに転載され、大きな反響を呼んだ。しかし、新華社通信はその後、事実無根と批判し、3日後の17日に報告書はサイトから取り下げられ、著者も「数字に誤りがある」と謝罪した。
真実は闇の中だが、深刻化する資産の不正流出について、北京理工大学の胡星闘教授は、中国政府の腐敗への取り組みはほとんど効果がないうえ、中国企業の「走出去」(海外進出)戦略が、資産の流出を加速させたと分析する。「資金洗浄の取締りを強化しているが、資産流出額は年々増加している」と米VOAの取材で話した。海外逃亡した人数と金額は実際、8000億元を上回っているとの見方もある
米CNNは腐敗幹部らの海外逃亡について、優れた教育制度や完備した社会福祉など安心して暮らせる環境を求めているほか、市民の「仇富」(金持ちを恨む)現象の高まりも原因の一つだと指摘した。貧富の差を広げた特権階級はつねに市民の批判の的であり、万が一に備えて資産を海外に流出させたほうが安全だという。
国家資産の持ち逃げのほか、富裕層の移民ブームで多額な資産が流出している。「金持ちであればあるほど、移民したい」。中国・招商銀行などが発表した「2011中国個人財富報告」はこのように分析し、個人資産1億元(12億3000万円)を所有する富豪のうち、27%の人はすでに移民し、47%の人は移民を考えているという。香港メディア・文匯報によると、海外に移民する富裕層が増加するにつれ、ここ3年で少なくとも170億元(2103億7000万円)の資産が海外に流出した。
腐敗で一攫千金となった人も、努力で財を成した人も海外に出ていく現象について、米在住の政治評論家・曹長青氏は中国の政治制度は国民に安心感を与えられないからと見ている。「米国人の貯蓄率はリーマンショック後でさえ6%にとどまっているのに対し、中国では45%の高い水準を維持している。人々は中国の制度と将来に不安を感じているのではないか」と分析する。
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