【大紀元日本10月12日】9月、尖閣諸島沖で海保船に中国漁船が衝突した事件は、外交問題に発展した。事件以来、両国間のモノの流れを滞り、貿易・物流に影響が出た。
「子供っぽいやり方だ」-東京の繊維商社に勤める営業社員は、中国からの貨物の着荷遅延の通知を受け、そうつぶやいた。一部企業の内部情報によると、先月21日から日中間の輸出入貨物について追加通関検査が新たに設けられ、中国に工場を置く日本企業の生産活動に遅延が出ており、「いつまでこの状況か続くか把握できない」と不満を漏らしている。
経済産業省は今月5日に発表した、中国における輸出入状況に関する報告書の中で、424社のうち214社が「対日輸出で遅延が生じている」と回答した。遅延は20日前後に多く発生し、その地域は上海(121)、深セン(35)、天津(31)と各地に及んでいる。同報告書では遅延の理由のひとつに貨物検査率の引き上げを指摘しており、上海の税関では対日輸出のある部品については開梱率が100%だという。明確に供給を停止するわけではなく、遅延させる。それについて説明もないという。
また同報告書によると、電化製品に不可欠なレアアースの輸出について、レアアース輸入に直接関わる関連企業31社に、9月後半に「輸出に支障が生じている」と回答し、契約キャンセルも多く報告された。またあらゆる新条件をかけて意図的にレアアース輸出を停止・遅延させている。たとえば①中国語の申請書書類添付の要求②「検査価格が安い」と通関許可が降りない③荷物が船積みされないなどの「嫌がらせ」が報告されている。
レアアースの世界生産量シェア90%以上が中国で、日本は需要の大部分を中国に頼っている。経産省は政治事情などで外交が不安定になりやすい中国より、カザフスタンやベトナムなど他の産出国からの輸入へ移行させ、中国資源の依存から脱却を図っている。
禁輸について大畠経済産業相は世界貿易機構(WTO)へ提訴も検討しており、またWTO側も「加盟国が輸出を制限することは許されない」と述べており、世界機構からもルールを脱線した行為として非難を浴びている。
世界で進む「脱中国」
住友商事はカザフスタンの国営原子力公社とウラン残存物からレアアースを回収する事業を2011年末から開始する。報道によると、商社関係者は不安定要素の多い中国間との貿易に懸念を抱き「脱中国の流れを進めたい」と話し、状況変化の必要性を訴えている。日本の商社はすでに、調達ルートの分散化に動きだしている。
また米国政府も、資源調達先の多様化を計画している。米エネルギー省のサンダロー次官補(政策・国際問題担当)は30日、「(中国での)生産の集中は、深刻な懸念を生む。貴重な資源の供給源を多様化することが重要」と述べた。
日本貿易振興機構(JETRO)によると、日本の貿易総額に占める中国のシェアは2009年度に2割を超え、うち輸出については米国を抜いて世界最大の輸出相手国となった。しかし国内外に不安定要素の多く、外交に信頼をおけるような中共政権ではないため、日本にとって確かな約束を結べる相手ではないのは、今回の事件でさらに広く知られることとなった。
枝野幸男民主党幹事長代理は最近、「法治主義や人権に対する考え方をみると、中国との信頼関係を期待することが間違っている」と中国の現政権の体制を指摘した。多くの専門家が経済において「綿密な関係」と日中間を例えるが、改めてどう向き合うかを認識するべき時が来ている。