日中韓首脳会談 哨戒艦沈没事件に温度差 中国、制裁言及せず

2010/05/30
更新: 2010/05/30

【大紀元日本5月30日】30日、韓国・済州島で行われた日中韓首脳会談は、前日に続いて、北朝鮮による韓国哨戒艦「天安(チョンアン)」沈没事件が焦点となり、3首脳が意見交換をする形となった。日本は「国際社会全体で韓国を支持していこう」との姿勢で国連安保理への問題提起を訴えたが、期待されていた中国の対応は、前日から変化することなく、北朝鮮に対する制裁には言及しなかった。

「産経新聞」の報道によると、30日の会談で、鳩山首相は「毅然(きぜん)とした効果的な対応をとる必要がある」と述べ、国連常任理事国で北朝鮮の核・ミサイル問題を協議する6カ国協議議長国でもある中国に同調を呼びかけた。

一方、会談後の共同記者会見で温家宝首相は、「朝鮮半島の平和と安定なしに東アジアの発展はない」と強調。「事件の影響を払しょくし、緊張を徐々に鎮め、衝突を避けることが急務」と述べたが、具体的な北朝鮮へのはたらきかけには言及しなかった。

また「中国は各国と積極的に意思の疎通をはかり、協調をとる」と温首相が述べた。北朝鮮へ「断固たる対応」を求める日米韓の圧力に立たされた境地から転身し、同事件の協議に主導権をとろうとする意図が窺われる。

先週韓国政府は、北朝鮮の攻撃による哨戒艦沈没事件の調査結果を公表した。それ以来、北京当局は北朝鮮に対する態度表明では、延長戦術を取ってきた。

貿易経済面での中韓関係への重視と軍事戦略面での中朝関係重視の間で板挟みになる中国。国際社会は、28日からの温首相の韓国訪問を注視していた。中韓貿易関係の強化が焦点となるが、北朝鮮問題に対する温首相の態度表明は避けられないと多くのアナリストが見ていた。

韓国「朝鮮日報」は、中韓貿易額は中朝貿易の百倍で、中国の朝鮮半島での利益は韓国との結合によるものであり、朝鮮半島での地位を固めたければ韓国との協調を強めるようと評論文で温首相の訪韓前に中国に促している。一方、英紙「ファイナシャルタイムズ」は、すでに中国の現代社会と経済の現代化から時代遅れになっている中国の北朝鮮政策だが、日米韓の対中国包囲網を破るため、戦略上の理由から、中国は依然として北朝鮮支持の立場をとるだろうと分析している。

中国が哨戒艦沈没事件における曖昧な外交的立場に変化をみせるかと国際社会が注目する中、温首相は28日、韓国の李明博大統領と会談。韓国「連合ニュース」の報道によると、温首相は「中国は一貫して朝鮮半島の平和と安定のために努力している。朝鮮半島の平和と安定を破壊するいかなる行為にも反対し、糾弾する」と述べ、「最終的な結論をみる。誰であっても庇わない」と一歩踏みこんだ発言をしたという。

この発言を北朝鮮に対する警告と受け止めることが有力だと「連合ニュース」は報じたが、一方、中国国内報道では温首相「誰であっても庇わない」との発言は全く言及されなかった。

温首相の発言を中国の立場が変化した兆しとするのは時期尚早と指摘する声もある。中国人民大学国際関係学院の時殷弘教授は、温首相の発言は「『天安』事件で損ねられた韓中関係を念頭に置いた言及であり、中国政府の『天安』事件に対する立場が変わったとは言い難い。『天安』事件が国連安保理で協議されれば、国際社会での面目と中朝関係の板挟みで中国の苦悩はさらに深まる」と「朝鮮日報」で指摘している。

同氏は、この発言に対して、二通りの解釈ができるが、「一つは韓国の解釈。韓国は、北京当局が自分の味方になることを切に期待しているため、中国の立場は変わったと理解している。しかし中国側の立場からみると、北朝鮮への態度表明には多くの要素を考慮しなければならないので、このような可能性は低い」と指摘する。

また、同氏は、韓国側の報道から判断すると、温首相は、韓国に北朝鮮のメッセージを伝えていないようだと分析する。「ピョンヤンはまだ中国と話し合いをしていないようだ。おそらく中国の話には耳を傾けようともしないのだろう。困った局勢だ」と語る。

30日午後、韓国の訪問を終え、温首相は済州島から直接来日。6月1日までの日程で、天皇や鳩山首相と会談し、衆・参議院両院議長とも会見する予定と「新華社」が報道している。食品安全問題やエコ、電子商務など、多領域での協力文書に調印するという。 

(翻訳編集・趙MJ)