ベルリンの壁崩壊20年、中国:ばつの悪い当局 自由を熱望する民衆

2009/11/11
更新: 2009/11/11

【大紀元日本11月11日】20年前に共産体制が欧州で終結し、欧州統一をもたらしたベルリンの壁の崩壊記念日の9日、自由世界各国の首脳と民衆がベルリンの中心にあるブランデンブルク門の前に集まり、自由の勝利を祝ったが、北京当局は神経を尖らせている。その日を控え、北京市インターネット管理部門は一級レベルの指示を通達。各ポータルサイトに、ベルリンの壁崩壊記念の記事を速やかに取り下げるよう指示し、ベルリンでの記念式典に参加する各国首脳の様子を伝える報道を禁止するなどの方針を伝えた。

言論統制の壁を高く築いて、ベルリンの壁崩壊を祝う世界の動きを隠ぺいしようとする中国当局にとって、この話題は都合が悪い。共産陣営の崩壊、自由民主の価値観の勝利、さらには、ベルリンの壁崩壊と同年の89年に北京で起きた天安門事件との関連性は、さらにばつが悪い。

「20年前に欧州で起きた共産主義の崩壊は、同年6月に中国で起きた天安門民主運動と大きく関係している。共産体制下の民衆の自由民主に対する切望は、中国で花が咲き、欧州で実を結んだと言える」。中国四川省の民主活動家・李宇さんは、こう語った。

89年6月4日、自由民主に眼覚めた中国の大学生らが天安門広場で大規模な請願運動を行い共産党当局に民主を求めたが、当局に虐殺された。一方、欧州では、共産独裁の残酷さに気付いた自由世界の国々が共産体制下の民衆を支援し、東西ドイツの統一をはじめとして、欧州の共産体制が次々に崩壊した。

20年後、共産陣営が残存する最終地・中国では、官員の腐敗堕落と貧富の格差の拡大によって官民対立が激化、共産独裁に不満を持つ人々は、共産党から離脱する運動を水面下で劇的に広めている。20年前の東ヨーロッパの前共産国と似た状況にある中国で、ベルリンの壁崩壊を記念する逆風の刺激を受け、自由への切望の火が再び炎上することを北京当局が恐れているのは間違いない。

中国の大手ポータルサイトで主要編集者を務めていた北風(ペンネーム)氏は、RFA放送局の取材に、「世界の大きな事件として、元々、(中国の)各主要ニュースサイトは、この話題の特集報道を組んでいた。しかし今日になって、北京の関連部門が緊急通達を出し、この話題の特集を速やかに取り下げ、記念式典の報道も禁止すると、各ニュースサイトに知らせた」と洩らした。

しかし、ベルリンの壁崩壊の象徴的な意味は、中国のネットユーザーにとっては無視できない。ベルリンの壁崩壊を記念するために設立されたドイツのTwitterサイト「berlintwitterwall.com」に、大量の中国人ネットユーザーが訪問し、「万里の壁」(Greatwall)と名づけられた中共の言論封鎖ソフトを倒そうといった内容の書き込みを残している。

「ベルリンの壁を倒したのは普通の民衆だ。私たちも彼らを見習おう。人民には罪がない。我々と一緒になって長城ファイアウォール(ネット封鎖ソフト)に反対すれば、天地を覆す結果になるだろう」と、「肖小秋」と名乗るユーザーがこのTwitterサイトに書き込んだ。

また、あるユーザーは、レーガン前米大統領がゴルバチョフ元ソ連大統領に共産体制を解体するよう呼びかけた名言を真似た書き込みを残した。「胡錦濤よ、この壁を崩壊させよう」

同サイトの責任者Carsten Heinsは、先週金曜日、メディアの取材に対して、4007個の書き込みのうち、2200は中国語のものと話した。

11月2日、同サイトが公表されてから13日後、中国からのアクセスができなくなった。

ベルリン壁崩壊のシンボル的な意味に気付いたのは、ネットユーザーだけではない。戦うメディアと言われている中国の「南方都市報」は先週、「壁のない世界を期待する」と題する社説を発表した。ベルリンの壁崩壊に伴う東ヨーロッパの激変と前ソ連の解体は、冷戦の終結を宣告し、新しいグローバル化時代をもたらしたと賛美、すべてのあってはならない壁を自分の手で押し倒そうと呼び掛けている。

「南方都市報」では、中国で共産独裁を終結させようと明言してはいないが、その隠されたメッセージは読者のだれにも分かる。中国にある「あってはならない壁」を「自分の手で押し倒そう」と熱望する民衆が多くいる。海外中国語ラジオ放送「希望の声」のベルリンの壁崩壊に関する番組で、視聴者の妙さんはこう話した。

「中共の独裁政権は今きわめて虚弱になっており、それはちょうど、腐敗しきった清王朝末期と同じ。中国のベルリンの壁を崩壊させるためには、私たち中国人自身の力に頼らなければならない。中国のベルリンの壁を押し倒すためには、まずわれわれ自身が恐怖心に打ち勝たなければならない。劉暁波氏、郭泉氏、陳光誠氏たちがすでに松明(たいまつ)を高く掲げ、中国の暗黒面が照らし出されている。彼らの先導に、民衆たちは必ずついていく」

河北省の何さんは、中国の現状に憤慨を隠せない。「私はまわりの人が次々と逮捕されるのをよく見かける。はなはだ憤りを感じている。この政権に対し、私はもうあきらめてしまった。現在中国では、中共を唾棄する人が日増しに増えているし、言論の自由や思想の自由、そしてマスコミの報道の自由を求める人もますます多くなっている。しかし、現状では、ちょっとした言論でも罪を問われてしまう。郭泉氏はその典型的な例だ。したがって、中国のネットユーザーたちが情報・言論の自由を求めるということは、評価すべき非常に素晴らしいことだ」

(日本語大紀元報道チーム)