【大紀元日本3月18日】去年9月、指導教官が私に博士論文の中の一章を縮写して国際通信年会(IEEE International Conference on Communication)へ投稿し、発表するよう提案してきた。ネットで会議の概況を調べたが、今度の会議が2008年の北京で開催されることがわかって興冷めした。 この投稿はここ数年の学術研究の重要成果の一つであり、発表の可能性はとても大きいが、私は北京に行くことができず、いたずらに郷愁にかられるだけである。それでも最後は指導教官の要求に従って投稿し、今年1月に主催者から祝賀の手紙を受け取り、講演の時間は今年5月22日であった。学術会議のウェブサイトの上で特にオリンピックの主催都市であることが強調されている。
しかし、中共当局からして、私のような法輪功学習者をオリンピックから排除するべきに違いない。実は、排除されるのは私のようないつも公に中国共産党を暴く人だけではない。中共の各国の大使館及び領事館は、ずっと以前から一つの特別グループを作って、世界各地で人権人士のブラック・リストを集め、彼らを監視し、国内に入れないようにしている。40冊の情報関係の書籍を出したフランス作家のロジャー・ファリガット(Roger Faligot)氏は、『中国の秘密機関:毛(マオ)から五輪まで』(The Chinese Secret Services from Mao to the Olympic Games)という新著の中では、その特別グループに関する紹介がある。
国外の情況はそのような状況だが、中国国内はどうだろうか。
1990年中共がアジア競技大会を催した時、ちょうど「6・4」大虐殺の翌年、中共当局も疑心暗鬼になってびくびくする危機感があった。当時北京では人口管制が実行されていて、特殊な理由がなければまったく乗車または船での北京入りは許可されなかった。アジア競技大会の開幕日はちょうど学校が始まる日であったので、私は学生証でもってやっと列車の切符を入手した。上海から北京まで、大きい車両の中で大体数人しかいなかった。それから18年経ったが、中共の「盗賊を防ぐより人民を防ぐ」という構想はこれまでとは少しも変わらない。先月、北京市公安局は流入人口の暫住証を検査し始めた。陳情者、地方の出稼ぎ農民等をオリンピックまでにすべて北京から追い出すためである。見たところ、たとえ身が中国国内にいても、北京に行ってオリンピックを見るのは容易な事ではない。
近日AP通信のあるニュースをみてはじめてわかったが、地元以外の人がオリンピックの試合を観賞できないどころか、北京周辺部の人は甚だしきに至っては飲用水困難な状況さえ発生した。例えば北京から1百数キロメートル離れた赤城県の農民は毎日結氷する井戸の中から2杯の水しか取ることできず、現地ダムの貯水を使うことができないという。 それによって節約できたこれらの灌漑用水または生活用水は、北京の人あるいは外人観光客の飲用のためではなく、「汚染されて臭くなった河の水、運河と湖をそうした水で洗い流すことによって、中心の地区をきれいにして環境保護が良くできているというイメージをオリンピックの観光客に示すため」という。この一項目だけで約3億立方メートルの水源を浪費しなければならない。
もし中共が生態環境を破壊した後の下水溝は中南海の水で洗い流すなら、オリンピックのために少し犠牲にしたと言えるが、どうしてかえって喉がからからになった農民、ひび割れて乾燥している土地から水を奪うのか。この政策を制定した者の人間性はどこにあるか。
もう一つのニュースはいっそうため息をつかせられるものである。北京工業大学実験学院学生王彤氏は亜急性肝臓衰弱を突然起こし、急遽血液の交換が必要となった。特殊な血液型のため、大学は同血液型の人に血液の提供を呼びかけた。実際、病院と血液センターは決してこのような血液を備蓄していないのではなく、王彤氏に提供しないだけである。理由は「上級部門の指示では、これらの備蓄された血液は08年オリンピックのために用意したもので、その時にしか使用できない」という。
農民はまだ少し苦しみをなめるだけですむが、中共はこの若い学生にオリンピックに命を捧げさせたのである。
法輪功学習者に至っては、彼らの立場は更に危険である。中国語明慧ネットはこのように報じている。「07年12月、北京で数十人の法輪功学習者が連行された。08年1月にも数人が連行された。1月の23~25日だけで20数人が捕まえられ、甚だしきに至っては一部の法輪功学習者の家族或いは同僚が巻き添えを受けて捕まえられた人もいた。事情を知っている人の話では、自分の知り合いが多数捕まえられた…。多くの人は理由もなく、直接家からつれていかれ、そして不法な労動教養(強制労働)を8ヶ月科される(ちょうどオリンピック終了時満了)。労動教養所がすでにいっぱいになったため、今北京の数個の労動教養所は拘禁された法輪功学習者を外地に移している。消息筋により、これは中共のいわゆるオリンピック前の「徹底的な取り締まり」という」 。
オリンピックをめぐって起こったこの一切をよく考えてみれば、こうしたことがはっきりしてくる。即ち、オリンピックは中国の人権に関心を持つ海外の人たちのオリンピックではない、地元以外の人のオリンピックでもない、北京の普通市民のオリンピックでもない、更に信仰を堅持する法輪功学習者のオリンピックでもない。それはただ中共の血まみれの弾圧を隠避し、外国元首を惑わすためのものであり、その陰に無数な民衆の苦痛、悲しみ、涙と生命が犠牲となっている。
中国人民が本当に人権、自由、開放、公正な前提の下でオリンピックを催すことができるなら、私も喜んでその成功を祈る。しかし、中共による北京オリンピックの主催は血生臭いことしか関連づけられないなら、それは中国の恥辱なだけではなく、国際オリンピック委員会の恥辱でもある。オリンピックの前までに中共を解体できないなら、この血生臭いオリンピックは、むしろやらないほうがいいと思う。