【大紀元日本5月24日】5月11日、国務院弁公庁は国務院七部委による“住宅価格の安定化を達成するための意見に係る通知”を発した。この通知は、住宅価格の抑制に対して強制的な措置を取るものである。例えば、6月1日より、個人が購入した住宅で、2年を経ないで転売したものについては、その販売価格につき5%の営業税を徴収することとしている。なお、これは、利潤の5%に課税する現行のものとは別立てである。この文書が公布されると、上海の住宅価格は直ちに暴落した。一部の中古物件は一夜にして30万元、数十パーセントの下げ幅で暴落した。17人で組成されたある温州投機団は、1日で、200万元の中古物件250を売りに出した。
これ以前に、温家宝総理は4月27日に国務院常務会議を開いた際、不動産の発展ぶりが早すぎるため、8項目の調整措置を実施し、不動産の過熱現象を抑えることを希望すると述べた。また、この少し前の3月末、国務院は第一回目の“八条”、すなわち“適切な住宅価格の安定化に関する通知”を下達した。その中で最も重要な部分は、“住宅価格の安定を政治のレベルに引き上げる”ことで、かつ“政府が責任をとる”ことが要求された。しかし、この文書が省・市に下達された時に全文が公開されなかった。これに類似した政府の議論が数多くあり、それらは空砲か、さもなくば上有政策、下有対策(上に政策あれば、庶民に対策あり)といったものであったため、一部の者は意に介していなかった。しかし、有利な地位にある者は、今回の措置は本気であることを知っており、4月中旬に住宅価格が下落し始めた。あるサイトの報道によると、上海の中心にある10大マンションは、価格が40%暴落したが、それでも引き取り手が現れなかった。この他、太陽都市花園、世茂浜江花園など単価が2万元以上の物件についても、売りに出された物件数が数倍~数十倍に増えた。
中国住宅市場のバブル化に対する警告は以前から発せられていた。2003年1月、当時の朱鎔基総理は、国務院上層部の内部会議において、不動産バブルについては高度に警戒すべきであると指摘したが、彼が指摘したのは主として住宅の高価格についてであった。7月、モルガンスタンレーアジア地区代表の謝国忠は、上海の不動産市場価格は不断に上昇を続けており、過度の投資と投機の兆候を孕んでおり、上海の不動産市場に弊害をもたらしていると指摘した。11月、国家統計局投資司司長 汲鳳翔は、一部の地区における不動産の発展について、過熱の兆しが見られると述べた。2003年の10月末までの期間において、全国の不動産投資は投資全体の24%を占めたが、東部地区においては29%、北京・上海等の地においては40%以上の高さにまで達していた。価格にもまた過熱状況が現れた。2004年の第2四半期より全国でマクロ調整が実施されたが、住宅価格は下落しないばかりか、むしろハイペースで上昇した。6月の伸び率は、前年同期比で12.6%で、1996年以来最高の伸び率を記録した。開発区の取り消し(撤銷)、融資の引締が実施される一方で、反対の論調が一部で唱えられたが、彼らの認識では住宅市場は全く過熱していないということであった。国務院発展研究センター金融研究所副所長 巴曙松は、10月に取材を受けた際、住宅価格はあと20年間上昇するとの認識を示した。
今年の3月末から4月初頭にかけての1週間で、上海の住宅価格は更に10%上昇した。中国人民銀行副行長 呉暁霊は、不動産業の過度の伸びを抑制するためには貨幣政策だけでは不可能で、土地、税制、融資金融に係る政策も必要であると憤慨して述べた。確かに、住宅価格が上昇する原動力として、現地の投機グループの他にも、外資や人民元の切り上げを待つべく流入したホットマネーが含まれていた。しかし、相当に重要な要素は、政府、とりわけ地方政府の放任であった。例えば、江沢民ファミリーと親しい上海の不動産事業者 周正毅は、上海市党委書記 陳良宇の弟である陳良軍と組んで静安区の開発を行っているが、こうした中で、上海市政府はどうして住宅市場の冷却に取り組むことができるのだろうか?融資の引締といっても、中古物件に係る部分だけを引き締めてディベロッパーや新築物件を引き締めなければ、その効果は限定的なものとなる。今回の住宅価格の暴落で大きな損失を被ったのは中古物件の投機者であり、ディベロッパーは安泰であった。
住宅市場が過熱する時、手抜き工事や資材のごまかし、法を守らず規則を乱す行為の発生は避け難い。海外で名声があり、大きな広告を出している上海世茂浜花園は、上海トップクラスのマンションで、一平方メートルあたりの価格が25000元にもなる。しかし、昨年12月21日に上海法学会出版が発行した“民主と法制”の冒頭のタイトルは、“信じ難い‘中国豪華住宅’のクオリティー-上海世茂浜花園が数事業主数十名に訴えられる”で、次のような内容が盛り込まれていた:しばらく前に使用禁止となった有毒の防水塗料が使用されていた;水漏れで、バス・トイレの壁にキノコが生えていた;更に、ある事業主は、200日をかけて必死に修理した・・等々。私自身も、“新外灘花苑事業主委員会”が昨年5月に発出した訴状を受け取ったことがある。これは、虹口区にあるクローズドの高級住宅小地区であったが、ディベロッパーが企業、警察、政府の関係部門や暇でぶらぶらしている人間と手を結び、事業主の人身、財産権を酷く侵害した。事業主らは、“上海に投資?それは熟慮の末に決定すべきである!”と呼びかけていた。
上述の問題のほぼ全てが上海において発生しているが、上海は一つの代表にすぎない。上海市政府のスポークスマン焦揚は、上海は市委書記から市長以下各級の代表幹部まで、ともに中央の精神に従い、努力して住宅価格を冷却するための措置を取ると述べた。上海は、既にマクロ調整の成否を図る指標となっていることは明らかである。昨年にマクロ調整が開始された時、陳良宇は、政治局の会議上、公然と温家宝に楯突き、マクロ調整は既に長江デルタに深刻な損害を与え、将来の数年間にわたって中国経済の発展を妨げることになると述べ、温家宝及び国務院が施策を改めなければ、やがて“政治責任”を負わなければならなくなると警告した。このように、権力闘争の要素がマクロ調整に介入しており、状況は更に複雑になっている。中央と地方との間に矛盾が生じているのは、中央が住宅市場のバブルが金融崩壊を引き起こすことを懸念しているからである。しかし、不動産の開発においては、各級政府及び官僚が民衆から掠奪を行っているのである。
現在、上海と杭州の住宅市場が暴落するとともに、広州、南京、南昌等その他の都市へと拡散している。北京にはあまり影響が及んでいないが、それは、主として中央が上海閥に対処しているにすぎないと考えられているからであろう。住宅価格が一旦全面的に暴落すれば、銀行の資金チェーンが断絶して新たな不良債権が発生することになるが、その際に問題となるのは、既に深刻な危機に見舞われている中国の銀行業にどんな影響が及ぶか、政府が政策を再変更するか否かということである。