中国の地方債務 不動産危機より深刻か 経済学者が警鐘

2026/09/25
更新: 2026/09/25

9月19日に開かれた2026清華五道口チーフエコノミスト・フォーラムで、中国の複数の経済学者が、地方政府の債務問題は不動産問題よりも深刻だという認識を示した。

地方債務の問題は金融システムにも影響を及ぼしている。不良債権の処理や債務整理を担う資産管理会社でも、経営の悪化や破綻手続きに入るケースが相次いでいる。

中国の経済誌「財経」などによると、中国社会科学院の余永定・学部委員は、フォーラムで当局に対し、より積極的な財政・金融政策を早急に実施するよう求めた。その上で、地方政府の債務問題への対応は、不動産問題への対応より優先度が高いと述べた。

余氏は、地方政府の財政について「ひどく混乱している」と指摘し、状況を抜本的に改める必要があると訴えた。

「マクロ政策とグローバル・リバランシング(市場の変動によって資産比率が目標からずれた際に元の比率に戻す作業)」をテーマにした討論には、北京大学新構造経済学研究院院長の林毅夫氏、上海財経大学滴水湖高級金融学院院長の姚洋氏、中泰国際のチーフエコノミスト、李迅雷氏、清華大学五道口金融学院の鞠建東・講席教授らが参加した。

地方債務に起因する企業間の連鎖債務は約30兆元

清華大学の発表によると、討論では中央と地方の財政構造や、地方債務の整理も主な論点となった。

李氏は、地方債務への対応は一刻の猶予もないと述べた。「地方の債務負担は極めて重く、未払い代金の問題も深刻だ」と指摘した。

姚氏は、中国経済が直面する最大の問題は地方政府の債務で、不動産問題よりも深刻だとの見方を示した。

多くの債務問題は地方政府に起因しているとし、地方債務をきっかけに企業間で連鎖する債務、いわゆる「三角債」は約30兆元に上ると述べた。

さらに、この数字は一定規模以上の企業を対象にした統計にすぎないとして、「経済全体が回らなくなっている」と危機感を示した。フォーラムでは、複数の登壇者が、地方債務を不動産問題よりも緊急性の高いリスクと位置付けた。

林氏も、地方政府の債務を処理するには、2000年ごろに銀行の不良債権問題を処理した時と同程度の決意と手法が必要だと述べた。

「現在の地方債務の多くは、中央政府の積極財政政策に対応する形で生じたものだ。借入先は銀行であり、地方政府が返済できなければ、銀行の不良債権になる」と語った。

地方債務が銀行の不良債権に転化するリスク

2000年前後、中国の銀行業界では不良債権が急増した。当時の国有四大銀行では、不良債権比率が一時40%を超えた。国際金融業界からは、事実上の債務超過、あるいは「技術的破綻」の瀬戸際にあるとみられていた。

当時、中国財政部は特別国債を発行して資金を調達し、国有四大銀行の資本を増強した。同時に、中国信達、中国華融、中国長城、中国東方の4大資産管理会社、資産管理会社を設立し、4行の不良債権を引き受けて処理した。

近年は中国各地で地方資産管理会社も相次いで設立され、その数は60社に達している。

資産管理会社にも経営悪化と破綻懸念

データによると、中国の政府、企業、家計を合わせた債務残高は458兆6千億元(約9644兆3580億円)を超え、GDPに対する債務の割合を示すマクロレバレッジ比率は約319%まで上昇している。年間GDPの3倍を超える水準である。

中国の政府債務残高は2026年5月末、初めて100兆元を超え、5年間でおよそ2倍に増えた。

地方政府の隠れ債務を表面化させる政策や不動産市場の低迷は、金融システムへの圧力を高めている。不良債権の処理を担う資産管理会社にも、リスクが広がっている。

9月18日夜、上海証券取引所に上場する観光・ロープウェー運営会社、三特索道は、「当代系」とその創業者、艾路明氏に関する公告を公表した。

艾氏には1100万元の罰金が科され、証券市場への永久参入禁止処分も決まった。

「当代系」の中核企業である湖北天乾資産管理有限公司には、累計35億500万元の延滞債務があるとされる。債権者には、武漢農村商業銀行、西部信託、湖北省慈善総会などが含まれる。

また、別の資産管理会社である国厚資産管理股份有限公司については、安徽省蕪湖市中級人民法院が以前、同社の破産再建手続きを始める決定をした。

不良債権を見えにくくする取引への指摘

英誌「エコノミスト」は8月13日付の記事で、中国の資産管理会社が銀行による不良債権の隠蔽に関わっている可能性を指摘した。

こうした取引によって、中国の不良債権の少なくとも半分、あるいはそれ以上が、実態より見えにくくなっている。

国厚資産は、銀行との間で、いわゆる「サイドレター(契約書本体に記載されていない事項を補足したり、契約内容を個別に修正するために作成される文書)」や非公開の合意を結んでいたとされる。銀行が不良債権を正式に処理・報告する前に、資産管理会社が買い取り、その後、銀行に売り戻して手数料を得る仕組み。

同記事は、不動産危機が長引き、不動産価格がさらに下がれば、今後はより多くの不良債権が表面化し、経営が苦しくなる資産管理会社も増える可能性があると指摘した。企業の借り手の多くが、不動産を融資の担保にしているためである。

小規模な地方資産管理会社についても、国厚資産と同様に破産再建に向かうおそれがある。一部の地方資産管理会社はすでに中国国内の格付け会社から格下げを受けており、経営破綻の危機に直面している。

任義