高市早苗首相は7月30日、首相官邸で、飲食料品にかかる消費税率の引き下げと給付付き税額控除について記者会見を行った。首相は8月上旬をめどに、政府・与党としての方針を決定する考えを示している。
前日の29日に示された社会保障国民会議の中間とりまとめは、中低所得の現役勤労者を対象とする「所得に連動したきめ細かな給付」を令和11年度に本格導入する方針を打ち出した。その経過措置として、令和9年4月1日から2年間、軽減税率の対象となっている飲食料品の消費税率を1%とする議長案を記載した。
同時に、1%相当分の範囲内で「所得に連動したきめ細かな給付」を令和9年度に先行導入し、減税と給付を組み合わせることで「全体として飲食料品に係る消費税の実質ゼロ化を実現する」としている。
ただ、消費税減税を議論する実務者会議では意見がまとまらなかった。中間とりまとめによると、意見は、時限的な減税ではなく給付で対応すべきだとする立場、恒久財源を確保したうえで恒久的に減税すべきだとする立場、本格的な給付制度の導入までのつなぎとしてできるだけ早く税率を引き下げるべきだとする立場の三つに分かれた。とりまとめには「具体案について意見の一致には至らなかった」と明記された。
引き下げを支持する側は、半年で実施できる税率1%への引き下げと、1%相当分の給付を組み合わせれば、実質的に税率0%を達成できると主張した。給付を組み合わせることにより、「消費税減税は高所得者優遇になるという批判にも対応できる」との意見も示された。
また、消費税減税は「消費すればするほど恩恵が受けられ、消費促進効果も見込まれるので、給付よりも優れている」との見方も併記された。
実務者会議に提出された資料では、食料品に課される税率は主要国と比較して日本が高い水準にあるとされた。総務省の2025年家計調査に基づく年間収入五分位別の食料品の消費税負担率は、酒類を除き、所得の低い第Ⅰ分位が1.5%、所得の高い第Ⅴ分位が0.8%となっており、所得が低い層ほど負担率が高い逆進性が示された。
内閣府のモデルでは、消費税率を1%引き下げた場合、1年目に民間消費デフレーターが0.5%下落し、実質国内総生産(GDP)が0.2%上昇するとの試算も示された。
一方、減税ではなく給付で対応すべきだとする側は、2年間の措置が終了した際に負担増となる人が多く、「1%への引下げは反動が大きい」と指摘した。財源が明確になっていないことや、2年間の引き下げのために事業者がシステム改修などを行う負担、第一次産業や外食産業への対応が明確でないことも問題点として挙げた。
高所得者ほど減税額が大きくなることや、減税した分だけ販売価格が下がらない可能性、事業者の事務負担も、本格制度までのつなぎとして適当ではないとする理由に挙げられた。
関係団体や専門家へのヒアリングでは、消費税収の約4割が地方財源となっているため、減収が自治体の財政運営や社会保障施策に影響を与えかねないとの指摘が出た。
債券市場をめぐっては、年間5兆円の財源が特例公債以外の方法ですでに確保されているとの期待が織り込まれており、具体的な財源が示されなければ金利が上昇するおそれがあるとの見方が示された。
価格への影響については、諸外国で一時的な減税を行った際、価格の下落幅が限定的だった一方、税率を元に戻した際の価格上昇幅の方が大きくなる傾向が見られたという。
事業者側からは、システム改修や棚札の更新などに、1社当たり数百万円から約1億円の費用がかかるとの回答が寄せられた。税率を0%とする場合、販売時点情報管理(POS)システムの改修には9カ月から11.5カ月を要する一方、1%であれば3カ月から5~6カ月で対応できるとされた。
農業や水産業では、消費税の還付が通常は年1回であるため、資金繰りが悪化する可能性が指摘された。
中間とりまとめは、農業従事者らへの対応を検討するとともに、外食産業を含む影響を見極めたうえで、資金繰り支援などの予算措置を検討するとした。
財源については特例公債に頼らず、補助金や租税特別措置の見直し、追加的な税外収入の確保など、歳出・歳入全般の見直しを通じて確保する方針である。具体策は令和9年度予算の編成過程で結論を得るとしている。
日本経済新聞によると、自民党が7月30日に開いた税制調査会の会合では、「税制について首相が指示するのは特殊だ」との声が上がった。閣僚経験者の小渕優子、河野太郎両氏が反対を明言するなど、党内には2年間の措置後に税率を8%へ戻すことの難しさを理由とする慎重論がある。
国民民主党と参政党は飲食業への打撃を理由に反対論を唱えていた。
国民民主党の玉木雄一郎代表は自身のXアカウントで「離農促進減税、飲食店倒産促進減税になりかねない」と指摘。参政党の安藤裕幹事長も自身のXアカウントで、食料品の仕入れが軽減されても提供する料理は10%のまま据え置かれるため、仕入れ時に控除していた税額が消え、飲食店の納税額がかえって増える構造を説明し反対している。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。