ドナルド・トランプ大統領は11月21日、ホワイトハウスでニューヨーク市長に当選したゾーラン・マムダニ氏と会談し、「非常に実りのある会談だった」と述べた。両者はニューヨーク市の支援、特に物価の引き下げ、住宅問題、犯罪対策で共通の認識を持てたという。
執務室で記者団に対し、トランプ大統領は次のように語った。
「本当に素晴らしい、非常に生産的な会談だった。私たちは一つだけ確実に共通していることがある。それは大好きなニューヨーク市を何としても良くしたいという思いだ。まず市長当選、おめでとう」。
マムダニ氏もこれに同意し、大統領に感謝の意を表した。
「家賃のこと、食料品のこと、光熱費のこと、そして市民が市から追い出されつつある現実について話し合った。率直な対話に感謝している。今後も一緒にやっていきたい」
トランプ大統領は「今日の会談は正直、予想外だった」と明かし、こう続けた。「マムダニ政権下なら、私も安心してニューヨークに住める。特に今日の話し合いの後ならなおさらだ」、「彼の考えの中には、私が持っているのと本当に同じアイデアがいくつかあった。特に物価を下げるという点では完全に一致している」。
マムダニ氏は自らを「民主的社会主義者」と呼ぶ政治家で、2026年1月1日からアメリカ最大の人口を抱えるニューヨーク市を率いることになる。これまでトランプ大統領とは公の場で激しくやり合ってきた間柄だ。大統領はマムダニ氏の進歩的な政策を批判し、「共産主義者」と呼び、連邦資金をカットする可能性すら示唆していた。
実際、会談が決まった19日の時点でも、トランプ大統領は自身のSNS「Truth Social」でこう書いていた。
「ニューヨーク市の共産主義市長、ゾーラン・“クワメ”・マムダニが会談を求めてきた。金曜日(11月21日)、執務室で会うことで合意した」
しかし会談後の雰囲気は一変した。記者から「なぜ共産主義者と呼んだのか」と聞かれた大統領は穏やかな口調で答えた。「これから何がうまくいくか見てみよう。彼も変わるかもしれない。私たちはみんな変わるものだ。私だって大統領に就任した当初とはかなり変わった」
両者はともにクイーンズ出身で、マムダニ氏が民主党予備選でアンドリュー・クオモ元ニューヨーク州知事を破ってから数か月間、互いに批判を繰り返してきた。トランプ大統領はマムダニ氏の民主的社会主義を理由に「共産主義者」と呼び、一部の公約を実行すれば連邦資金を止めると脅していた。一方、マムダニ氏はトランプ政権の不法移民強制送還政策を厳しく批判し、当選後は市のリソースを使って送還対象の外国人に法的支援を提供すると公言していた。
それでも今回の会談では、対立点よりも共通点を重視したようだ。トランプ大統領は「彼は保守派の人たちを驚かせることになると思う」と期待を口にし、マムダニ氏は「今日は違いではなく、共通の目標に集中した。生活費の高騰は深刻で、4人に1人のニューヨーカー市民が貧困ライン以下で暮らしている」と強調した。
犯罪、住宅、生活費――この3つがニューヨーク市の最大の課題であることは両者一致している。ただ、解決の方法は違うだろうとも認めている。会談では移民関税執行局(ICE:U.S. Immigration and Customs Enforcement)による強制送還の話も出たが、カメラの前では議論を避けた。トランプ大統領は「ICEのことより犯罪の話を主にした。彼も犯罪は嫌いだし、私も嫌いだ」と語った。
記者団がマムダニ氏に「これまでトランプ大統領を“独裁者”や“ファシスト”と呼んでいたが?」と追及すると、大統領本人が割って入った。「俺は独裁者どころか、もっとひどい呼び方をされてきた。これはむしろ褒め言葉に近い(笑)。一緒に仕事を始めたら、彼も考えを変えるさ」
34歳のマムダニ氏の当選(11月4日)は、近年における民主党左派の最大級の勝利と言える。アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員やバーニー・サンダース上院議員ら左派の有力者が支持を表明した。一方、チャック・シューマー上院院内総務は支持せず、ハキーム・ジェフリーズ下院院内総務は選挙終盤になってようやく応援に回った。
対立していたはずの二人が、わずか1時間の会談で「協力していこう」と握手を交わした事実は、ニューヨーク市民にとって朗報だろう。果たしてこの「意外な共通点」が実のある成果につながるのか、今後の動向に注目が集まる。
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