2024年末、西側のあるメディアが3500文字を超える長文記事を発表し、法輪功創始者の李洪志氏について「学習者の忠誠心と安価な労働力を利用し、2億6600万ドル(約418億円)もの財産を蓄積した」と主張した。また、「この富の蓄積のペースは通常の企業においても異例であり、ニューヨーク州オレンジ郡に拠点を置く非営利の舞踊団から得たものとは考えにくい」と述べた。
果たしてこの主張は事実なのか。この2億6600万ドルの資金はどのようにして形成されたのか。
2025年1月3日、「希望の声」の特派記者がニューヨークで法輪功の創始者であり、神韻芸術団の芸術総監督でもある李洪志氏にインタビューを行った。インタビューはニューヨークのハドソンバレーにある飛天芸術学院の教員用オフィスで行われた。今年73歳の李氏は、清潔感のあるシンプルな服装で登場した。以前よりも痩せた印象であり、年齢よりも若々しく、50歳ほどに見える。眼差しは温かく、穏やかでありながら、芯の強さが感じられた。
李氏の言葉に、記者は驚きを禁じ得なかった。
「神韻にそんなに多くの資金があるなんて、その記事が掲載されなかったら、私自身はそれを知りませんでした」と李氏は語った。
なぜこのようなことが起こり得るのか。李氏は「私は神韻では主に芸術面を担当しており、衣装デザインなどに従事しています。行政面や財務には一切関与していません」と答えた。
どうしてこんなことが起こるのか? 李氏は法輪功の創始者ではないのか。1999年に中国共産党が法輪功を弾圧した後、法輪功が世界中に広がり、現在では156か国以上に学習者がいる。法輪功学習者が設立した新聞社、テレビ局、ラジオ局、ウェブサイト、中国のネット検閲を回避するソフト、芸術団体(神韻)や学校など、多岐にわたる活動が展開されている。
記者が「これらのすべては、あなたの指揮の下で起こったことではないですか?」と尋ねると、李氏は次のように答えた。
「法輪功は修煉と自分を高めることを目的とする功法であって、私が教えているのは修煉そのものであり、これらの団体やプロジェクトは学習者たちが社会の一員として自主的に立ち上げたもので、彼ら自身のものです。自分で歩まなければなりません。彼らがどのように自分の道を歩くのか、また直面する課題をどう解決するかは、それぞれの修煉の一環なのです。私が具体的な運営に関与することはなく、財務はなおさらです」
さらに李氏は、多くの学習者から講演や助言を求められることはあるが、それらに応じることは稀であり、仮に応じても修煉に関する話に限定されると述べた。「師父として、私は大まかな方向性を把握し、修煉の指導だけをしています。それ以外のこと、特に財務には一切関与していません」と強調した。
その後、記者は神韻芸術団の財務マネージャーであるジョアン・リュー氏に、神韻の財務管理体制と寄付などについて尋ねた。リュー氏は神韻芸術団には総裁と取締役会があると説明した。「財務はプロセスに基づいて管理されています。特定の問題が発生した場合は総裁に指示を求めます。大規模な購入決定や業績確認は取締役会が行っています」と述べた。李氏は取締役会のメンバーではない。
また、「財務状況について師父(李氏)に報告することはありますか」との質問に対し、リュー氏は「一切ありません。師父は財務には関与していません」と明言した。
記者はさらに、神韻の公式動画配信サイト「神韻作品(ShenYun Creations)」の財務責任者と服装会社「Shen Yun Dancer」の社長にも取材を行ったが、いずれも経営や財務管理は自主的に行われており、「師父に報告することはない」との回答だった。
記者は大紀元の最高財務責任者であるウィリアム・チュン氏とラジオの「希望の声」の最高執行責任者であるフランク・リー氏にもインタビューした。答えは同じだった。
フランク・リー氏は「希望の声は設立から今日まで22年が経ちましたが、これまで一度も師父に財務状況を報告したことはありません。師父は財務報告を求めたこともなければ、財務状況を聞くこともありません。師父は、私たちが修煉の過程で直面する困惑について指導するだけで、しかも多くの質問が投げかけられることを望んでいません。師父が修煉者として成熟するためには多くのことを自分で悟り、自ら判断するべきだとおっしゃっており教えている。そのため、私たちはほぼ自分たちでメディアを運営しています」と語った。
李洪志氏の資金に対する姿勢
では、李洪志氏本人は金銭に対してどのように見ているのか。神韻が得た収益と李洪志氏の関係はどのようなものなのか。
李氏は「私はみなの修煉を導く立場にある者であり、自ら模範を示さなければなりません。歴史を振り返ると、金銭に関わることで多くの失敗が起きています。ですから私は金銭を一切受け取りません」と述べた。
李氏は神韻の芸術総監督を担当し、舞台衣装のデザインなどをしているが、一銭も受け取っておらず、すべてボランティアで行っている。明慧ネット、大紀元、新唐人、希望の声など他のいかなる「法輪功関連プロジェクト」からも報酬を受け取ることは一切ないと語った。李氏の名義で登録されている「神韻作品」プラットフォームを含め、李氏は給与や配当を一銭も受け取っていない。得た収入はすべてプラットフォームの開発と運営に再投資される。
また、メディアからの「神韻を利用して金儲けする」との指摘に対しては、李氏は「神韻で稼いだお金を私的に流用するというのは完全に作り話です」と一蹴した。
「仮に私が金が欲しいのなら、弟子たちから1ドルずつもらうだけで数千万ドルは集まります。もし一人10ドルを要求すれば、彼らはきっと渡してくれるでしょうし、そうすれば数億ドルにもなります。わざわざ大変な労力を費やして芸術団を立ち上げ、世界各地を巡る公演で収益を得る必要があるのでしょうか」
李洪志氏は、自分はお金を必要としていない。生活は非常に質素だと語った。毎朝朝食は摂らず、昼食は龍泉寺(法輪功の祖廷)の食堂で済ませ、夕食は「疙瘩湯(ガーダータン)」(中国北方の伝統的な料理で、小麦粉をこねて作った団子状の麺に野菜や卵、スープを加えたもの)か、一杯のご飯を湯に浸したものに少しの漬物を添えた簡素なものだ。「私がお金を何に使うのでしょうか。この一生、どこに行っても誰かが一口分の食事をくれるでしょう」と、李氏は笑いながら話した。
また、「私にはお金も資産も車もありません。収入源は自著の印税のみです。住まいは龍泉寺の敷地内にある寮で、部屋にはベッドと本棚しかなく、高級な家具は一切ありません」と説明した。
少し間を置いて、李氏は続けた。
「ここで私は、子供(神韻の若い芸術家や飛天芸術学院と飛天大学の学生)たちに、世界で最も優れた学校と環境を提供したいと思っています。彼らの両親にこう伝えました。『私は最良の子供をあなたに返します!』これが私のやるべきことです」
記者が「メディアでは、あなたが弟子たちのお金で高級ブランド品を購入していると報じられていますが、どう答えますか?」と尋ねると、李氏はこう答えた。
「そんなことはありません。私はブランド品を使っていません。私が着ている服とズボンは、すべて私自身がデザインしたものです。以前、弟子たちが台湾で注文した服は袖が短く、アジア人の体型には合っていましたが、アメリカでは使いにくいものでした。それで、私が新しいデザインを作ったのです。私はデザインの知識を持っています。それは私が今着ているものです。後に神韻の服装会社(Shen Yun Dancer)がこれを採用し、法輪大法の制服として販売するようになりました」
神韻の収益と資金の使途
では、あの西側メディアが主張する「2億6600万ドルの巨額資金」はどのように得られたのだろうか。記者は神韻芸術団の総裁である周豫氏に詳細を尋ねた。
周氏によれば、神韻は毎年新たに大規模な公演を行っており、各地の主催会社が公演を依頼し、契約に基づいて神韻に出演料を支払っている。一方、主催会社は公演会場の手配、プロモーション、チケット販売、後方支援などを担当しているという。
神韻の出演料は劇場の規模や地域によって異なり、1公演あたり3~8万ドルで、平均すると約5万ドルになる。この金額は、神韻のように多彩な舞踊劇、生のオーケストラ、デジタル背景幕、さらに毎年一新される衣装や演目を含む大規模な公演としては市場価格より低い。同規模の西洋の舞台公演では1回あたり8~16万ドルが相場とされている。
神韻は創設から18年間で1万回以上の公演を行い、その収益は単純計算で1万回×5万ドル=約5億ドルに達する。
周氏は、5億ドルという金額は多いように感じるかもしれないが、これは1万回という膨大な公演数から得たものだと語った。この回数は、世界で最も人気のある西洋のショーの2倍に相当する。これらの収益は、神韻芸術団と主催団体が懸命に努力した結果だ。それに、芸術団の運営や次世代の育成には多大な費用がかかる。そのため、最終的に残った金額は2億6600万ドルに過ぎない。
ここでかかる費用はどのくらい高額なのだろうか。周豫氏はこう説明した。
「非常に高額です。神韻に関わる多くの人材の育成、スタッフの給与、さらに高価な設備や衣装、材料の購入、それに次世代の人材を育てる教育機関への資金支援――これらすべてが非常に大きな負担となっています。これには多くの資金が必要なのです」
「実際に、この資金は神韻が約20年にわたり、経営の努力と倹約を続けた結果として蓄えられたものです。これほど大規模な団体が20年かけてようやくこれだけの資金を蓄えたのですから、多いどころか、むしろ少なすぎると言えるでしょう」
「私たち法輪功学習者は、実際にはアメリカで難民のような立場にあります。我々には何の基盤もありません。他の芸術団は企業や政府の支援を受けているが、私たちは政府から1セントも受け取ったことがありません。また、アメリカの大企業も中国共産党を恐れているため、私たちを支援することはなく、私たちは自らの力で生存問題を解決してきました」
周氏は「一定の経済基盤がなければ、緊急事態、たとえばパンデミックが発生した場合、これほど多くの人材をどう維持すればよいのでしょう。これだけの人々の生計をどのように支えるのでしょうか。神韻が困難を乗り越えるには、これらをすべて自分たちで解決しなければなりません。しかも、アメリカ政府に迷惑をかけることなく対応しているのです」と指摘した。
西側メディアは一般的な非営利組織であれば、資金は通常投資に回され、大量の現金を保有することはない。現金は通常短期的な用途のために使われるものだが、神韻の資金にはそのような使途が見られないようだと疑問を呈した。
「これについてどう答えますか」と尋ねると、周氏は「資金を株式市場に投資して収益を得る」ということについて「そのようなことはしません。第一に、我々は保守的な資産運用方針を採っています。第二に、修煉者として株式市場の利益を得ることはしません。我々には我々の原則があります」と述べた。
「我々の資金にはもう一つ重要な目的があります。それは、中国で状況が変化した際に中国に戻る準備をすることです。我々は現在、中国での公演に向けた準備を進めており、人材を育成し、資金を蓄えています」
こうして神韻の財務状況についての説明は終わったが、別の疑問が残っている。それは1992年に中国の長春で公の場に登場してからの長い年月、法輪功の創始者である李洪志氏がどのような生活を営んできたのかということだ。
あわせて知りたい方は、次の記事「法輪功創始者の教えと生活の物語」もお読みください。
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