昨年7月に道路交通法が改正されたことで、ヘルメットの着用が努力義務とされ、16歳以上であれば免許がなくても乗ることができるなど、利用のハードルが下がった電動キックボード。
スマホのアプリで電動アシスト自転車や電動キックボードをレンタルできるシェアリングサービス「LUUP」の設置場所は増加し続ける一方で、トラブルも増えている。
警察庁は9月19日、特定小型原動機付自転車に関する規定の施行後1年間(2023年7月〜2024年6月)の事故発生状況等を公開した。
昨年、電動キックボードなどが改正道路交通法で「特定小型原動機付自転車」に分類され、1年間(昨年7月〜今年6月)で交通違反の検挙件数がおよそ2万5000件に上ったことが分かった。
主な違反としては、車道ではなく歩道を走行するなど通行区分違反が1万3842件(55%)、信号無視が7725件(31%)。また、酒気帯び運転も194件にのぼった。
交通事故の発生状況としては、事故件数が219件で、死者数0人、負傷者数226人。電動キックボードなどの運転手に過失があったケースでは、事故の相手で最も多かったのは歩行者(およそ4割)で、そのほかは自転車や自動車だった。
都道府県別では東京都での発生が7割超で、用途別ではレンタルの車両による事故が9割超、運転者の年齢別では20歳代が5割超だった。
また、警察庁が電動キックボードなどの利用者1000人に対し実施したアンケート調査では、事故を起こしたり、事故を起こしそうな危険を感じたことがあると答えた人は全体の21.7%にのぼった。
ヘルメットを持っていると回答した人はわずか25%にとどまり、持っている人のうち「全く着用していない」と答えたのは68%にのぼった。
昨年7月に施行した改正道路交通法で、最高速度20キロ以下などの基準を満たした電動キックボードなどを「特定小型原動機付自転車」とし、16歳以上は免許がなくても運転が可能となった。
警察庁は、ヘルメットの着用や交通ルールを守るよう注意を呼びかけている。
海外では廃止の動きも
フランスの首都パリでで2023年4月、電動キックボード貸し出しサービスの是非を問う住民投票が実施され、電動キックボードの全面禁止を支持するとした人は、有効投票総数の9割を占めた。このため、8月末で電動ボードのレンタルは終了となった。
2018年からパリ市民の健康意識や環境問題への懸念により、利用率が増加するも、2019年にパリで電動キックボードの走行を原因とする死亡事故がきっかけとなり、電動キックボードを巡る議論がフランス全土で巻き起こった。
地中海のマルタもこれに続き、来年春から全面禁止となる。
ニューヨーク市議会でも、先月14日にサンドラ・ウン議員が電動スクーターを禁止する法案を提出。危険な走行や不適切な駐車を問題視した。
オーストラリアのメルボルン市では、2024年8月13日にレンタルの電動キックボードの全面禁止を決定した。事故や苦情の増加、許容できない安全リスクを理由としている。
ニック・リース市長は、「歩道での走行、ヘルメット未着用、飲酒運転。電動スクーターは歩道、公園、公共スペースに散乱しており、つまずく危険がある」と述べ、禁止する理由を説明した。ビクトリア州政府が2年間の試験運用を経て、ビクトリア州全域で電動スクーターの運行を恒久的に許可すると発表したわずか1か月後のことだった。
ロイヤル・メルボルン病院による最近の調査で、1年間の調査期間中に電動キックボードを要因とする負傷で受診した件数は計256件。調査は2022年1月から2023年1月まで。負傷者のうち、利用者は247人、歩行者は9人だった。負傷者の69%は男性で、年齢の中央値は29.5歳であった。
頭部や上肢への衝撃、擦り傷、骨折などで負傷した人が多く、34パーセントは飲酒運転が要因と考えられ、33パーセントはヘルメットを使用していた。
火災リスクも
クイーンズランド州火災および緊急サービス(QFES)は、リチウム電池の火災が相次いでいることを受けて、中古の電動聞くボードなどの使用の危険性について警告を発した。
互換性のない充電器、低品質の製品、機械的損傷が充電式リチウムイオン電池の故障を引き起こす潜在的な要因であると強調。
2023年、クイーンズランド州南東部の住宅で電動スクーターが火災を起こし、30代の女性と幼い子供2人が煙を吸い込んで治療を受けた。
別の事例では、ブリスベン南部の建物で火災が発生。火災は電動キックボードのバッテリーが原因だった。
世界各国の規制
電動キックボードに関する規制は世界各国で大きく異なる。
欧州では電動キックボードは合法化されているドイツ、フランス、スペインで人気があるが、運転者は速度、使用方法、安全規制に関する規制の対象となっている。
英国では、電動スクーターは現在私有地でのみ合法。
米国の法律は州によって異なる。たとえば、ニューヨーク市では歩道での自転車の走行が禁止されており、シカゴでは駐車エリアと速度制限が指定されており、シアトルでは16歳以上のすべてのライダーにヘルメットの着用が義務付けられている。
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