ハマス支持、反イスラエル、反ユダヤの学生運動の背景に何があるのか 

2024/05/01
更新: 2024/05/02

北米全土の大学生の間で、ハマスへの支持とパレスチナ人の幸福への懸念が急激に高まっている。ほとんどの学生にとって、それは地球の裏側にいる人々と密接なつながりがあるからではない。

もちろん、北米には、民族的・宗教的信条に基づいて過激化したパレスチナ人、アラブ人、イスラム教徒の学生が少なからず存在している。しかし、抗議している学生の大半は、そのような個人的なつながりは持っていない。学業をなげうってまで過激主義に傾倒するのはなぜだろうか。

今回の騒動は、学生たちが中東の歴史や政治、イスラム教やユダヤ教の歴史、国際関係などを積極的に探求した結果ではない。これらの科目を専攻または副専攻している学生はほとんどいない。 多くの学生が「川から海まで、パレスチナは(ユダヤ人を除いて)自由になる」と唱えているが、多くの学生が地図上でイスラエルやガザを識別できなかったり、「川」や「海」の名前をあげられなかったりすることも知っている。

ハマス支持の背景に、この地域とのつながりや知識がないならば、何が存在するのだろうか。それは、「パレスチナの正義を求める学生の会」(Students for Justice in Palestine)を始めとする、パレスチナやイスラムを擁護するグループのスポンサーである組織的で資金力のあるムスリムロビーである。

これらの団体は全国の大学に支部を持つ。彼らの党派的な偏見と執拗(しつよう)なロビー活動は、間違いなく学生の意見にある程度の影響を及ぼしている。

しかし、大半の学生は自身をパレスチナ人やイスラム教徒とは認識していないため、この様な分野にはそれほど関与していない。他にも要因が存在することは間違いない。

これまで大学は、極左的な「社会正義」という思想が支配的であった。これは学生が考案したものではなく、米国のバイデン政権やカナダのトルドー政権といった最高レベルから推奨された政策である。大学は政府から、この極左思想の推奨とその実行を命じられたのである。なぜなら、ほとんどの大学の教職員や事務職員は、自らをマルクス主義者と見なすか、マルクス主義的な分析や政策を受け入れているのである。

「社会正義」は、マルクス主義の階級対立分析に基づいている。この思考法によれば、社会は個人や集団が空間と時間の中で競争したり協力したりするものではなく、状況に応じて関係が変化するものだ。

代わりに、社会で重要な唯一の関係は階級対立に基づいており、一方の階級は抑圧者であり搾取者であり、他方の階級は搾取され抑圧された被害者だ。古典的なマルクス主義は、階級対立を経済的な階級の観点から組み立てていたが、この定式化は北米では定着しなかった。

新たに変化した北米のマルクス主義は、「文化的マルクス主義」と呼ぶことができる。なぜなら、ジェンダー、人種、性的指向、能力、民族性、宗教に基づいて階級を特定するからだ。抑圧者の階級と被害者の階級を識別することは極めて重要だ。

この文化的マルクス主義の考え方では、男性は搾取する階級である「家父長制」を構成し、女性は搾取される被搾取階級とみなされる。

同様に、黒人、褐色人種、先住民(BIPOC)は抑圧され搾取される人種であり、アジア人やユダヤ人を含む「白人」は、搾取する階級を構成すると考えられる。

同様に、身体的性別と自認している性別が一致する「シスジェンダー」の異性愛者はLGBTから見ると抑圧者とみなされる。搾取する階級は、被搾取階級に対する組織的な偏見と差別で非難される。 このようなプログラムでは、いわゆる 「階級 」に属する人々の個人的な違いはすべて無視される。

この計画を裏付ける証拠は驚くほど少ない。偏見や差別を支持する法律が撤廃されただけでなく、偏見や差別を禁止する新しい法律が可決・施行され、今ではとっくに施行されている。

活動家たちが決定的な証拠として提出するのは、教育、収入、役職における格差である。あるカテゴリーの一般人口に対する割合がある水準に達していなければ、それが偏見と差別の証拠とされる。

統計的な格差の原因として考えられる他の多くの要素、嗜好(しこう)や選択の違い、意欲や達成感の違い、能力の違いは、これらの要因の影響に関する圧倒的な証拠があるにもかかわらず、無視するか否定する。地域、地方、民族文化の影響はまったく無視している。

「社会正義」は「多様性、公平性、包括性」というラベルの下で実践しているが、これらのラベルは見かけの意味とは異なる。例えば、「多様性」は抑圧された階層のメンバーだけを意味している。男性や白人、シスジェンダーの異性愛者は「包括される」のではなく排除している

今日、大学の求人広告には、BIPOC、LGBT、障害者のみを明記しており、障害のない異性愛者の白人男性は考慮の対象から除外している。例えば、女性は大学を支配し、学生、教員、管理者の大半を占めている。アイビーリーグの学校では、学生の反乱により女性の学長が就任したことが話題になっているが、それに気づいているだろうか?

同様に、大学における「多様性」が意見や思想の多様性を意味しないと考えることも重要である。実際、「社会正義」やDEI以外の考えは禁止している。このような考えを表明すれば、処罰や退学処分を受ける可能性がある。ほとんどの大学には、指導や処罰を通じてイデオロギー的な異論を封じ込む政治的コミッサーの役割を果たす多数のDEI担当官やオフィスをあらゆるレベルに設置している。

「公平性」は、一見とは全く異なる概念である。それは、全ての人々が同一の結果を得ることを指す。それは極端なマルクス主義の理想で、絶対的な平等性を意味する。したがって、結果に差があるような状況は全て不法だとみなされる。全ての違いは偏見と差別の産物として扱われるからである。

その結果として、学問や西洋の公式の「生活」における伝統的な基準である業績や功績は、人種差別的、性差別的、同性愛差別的、トランスフォビア的、イスラム嫌悪的なものなどと見做されなければならない。

この考え方が、アジア系やユダヤ系の人々が最初に「白人」に分類された奇妙な理由を説明している。アジア系やユダヤ系の人々は白人よりも優れた業績を残しているから、「社会正義」の視点から見れば、人種差別や性差別がなければこれはあり得ないとしている。

この政策により、数学や科学の高度なコースなど、達成度を高めるために作り出したプログラムは廃止するべきだとし人種差別であると見なされ、廃止しなければならないとする。

これがイスラエルと何の関係があるかと問われれば、もしユダヤ人が白人の抑圧者とするのであれば、イスラエルもそれと同様の扱いを受けねばならない。

イスラエルとパレスチナの紛争に対する「社会正義」の視点では、イスラエル人(一部のイスラエル系アラブ人やキリスト教徒は該当しないであろう)は白人の抑圧者とし、パレスチナ系アラブ人はBIPOCとする。

イスラエルを訪れ、その双方の住民と交流したことのある人間が、このような発言をするだろうか? イスラエル人の半数は、何世紀にもわたってアラブ圏で生活するところを強制的に追放されたユダヤ人とその子孫であり、両者の間では遺伝子レベルでも共有項目が多い。

アメリカ特有の人種問題をイスラエル・パレスチナ紛争に適用するのは馬鹿げている。これは、アフリカにおけるアラブによる奴隷獲得行為や、それに伴う黒人奴隷への蔑視を無視しているかのようである。

もうひとつのマルクス主義の主張(今回はレーニン主義的なもの)は、イスラエルのユダヤ人はパレスチナの先住民アラブ人を植民地化した帝国主義者だというものだ。

カナダの教授たちは、この先住民に対する植民地的抑圧とされる主張に拍手を送っている。 私のマギル大学の同僚は、カナダを建国した邪悪なヨーロッパからの侵略者たちに対して、カナダの先住民「ファースト・ネーションズ」を支持したことで、学生たちから慕われていた。 

私の同僚はまた、「土着」パレスチナ人の偉大な支持者である。私がユダヤ人が土着の人々であると提唱した際に、彼は「土着」とは西洋人が来たときに、そこにいた人々を言うと反論した。

私は、ローマ人を「西洋人」と見なすのか問いかけた。ローマ人が紀元前数十年に聖地へ侵入した時、そこにはユダヤ人のみがいたからだ。ローマ人はユダヤ人と戦い、最終的に1世紀半後に彼らを打ち負かし、多くを追放し、ユダやサマリアのようなユダヤ人の名前を忘れさせるために、国名をシリア・パレスチナへと変えた。

「いいや、ユダヤ人は単に交易の機会を求めて旅立っただけだ」と同僚は言う。(もちろん、ユダヤ人は金目当てだ)

しかしながら、「土着の」アラブ人が初めて聖地を訪れたのは西暦7世紀であり、彼らはアラビアからのイスラム教徒の侵略者であったという事実が存在している。イスラム教の神学と政策は常にイスラム至上主義であり、非イスラム教徒は従属者や奴隷、あるいはそれ以下の存在として扱われてきた。

大学キャンパスの騒動は、歴史的事実など気にしていない。 彼らにとって、誰が善人で誰が悪人かは明らかであり、道徳とは善人を支持し、悪人を攻撃することを意味する。

「我々はハマスだ」、「川から海まで、パレスチナは自由になる」、「ガザ大虐殺」、「イスラエルなんかクソくらえ」、「唯一の解決策はパレスチナを自由にすることだ。 イスラエルなんかクソくらえ」、「唯一の解決策はインティファーダ革命」、「10月7日に1万人増員」

騒動参加者にとって、イスラエルは罪のないガザの人々とパレスチナ人を弾圧する邪悪な人種差別主義者である。 

ユダヤ人も同様で、BIPOC、LGBT、女性、障害者、イスラム教徒に対する邪悪な抑圧者である。 イスラエルは国家の中のユダヤ人であり、ユダヤ人はイスラエルの個々の表現である。 だからこそ、私たちは「シオニストの豚め」、「ポーランドに帰れ」という言葉も耳にするのだ。

多くの評論者は、デモを行った学生が授業に出席していなかったり、他の学生が出席することを許さなかったりしたことを嘆いた。しかし、これは解決策ではなく、彼らこそが問題なのだ。

なぜなら、ほぼすべての大学が文化的マルクス主義を教えており、これが大学の公式方針だからだ。学生たちは学び損ねたのではなく、「社会正義」とDEIの偽りと破壊についてすべて学んだのだ。マルクス主義革命を優先して真理の探求を放棄した堕落した大学で、学生たちが堕落してしまったのだ。

これはイスラエル、パレスチナ、ユダヤ人に限ったことではない。 アメリカ、カナダ、西洋、資本主義、民主主義、個人の自由はすべて、マルクス主義とイスラム至上主義の岐路に立たされている。 今日、赤と緑の同盟が北米の大学を支配している。 学生たちは 「アメリカに死を 」と唱えている。