バンガード社が株主のESG提案への支持を削減 ブラックロック社に追随か

2023/09/10
更新: 2023/09/09

インデックス・ファンド大手のバンガードは、株主総会において提出された、環境、社会、ガバナンス(ESG)関連の決議案への支持を減らし、2023年の全米の株主総会でそのような議案を支持するのはわずか2%にとどまると発表した。

直近の投票履歴に関するレポートで、7.2兆ドル(約980兆円)の資産運用会社が、今年、記録的な数のESG提案が投票に持ち込まれたと述べた。

バンガードによると、米国の株主は今年、環境および社会的トピックに関して合計359もの提案をしたが、これは、前年の290と比較してほぼ25%増加した。

「2023年の株主総会においてファンドが支持した議案はわずか2%で、2022年の12%から減少した」とペンシルベニアに本拠を置くバンガードは語った。

「これらのESG提案の多くは、開示の要求を超えて、会社の戦略や運用の変更を含んでおり、企業に特定の行動を求めるものだった」とバンガードは説明し、そのような提案を検討して反対票を投じたことを強調した。

バンガードは、「150の株主提案は環境問題に関連しており、その中で最も多いテーマが温室効果ガス排出量目標の設定であった」と述べた。報告書によると、その他のトピックとして、気候ロビー活動と化石燃料資金調達に焦点が当てられていた。

「人種的平等、生殖の権利、賃金格差などの社会的トピックに関する提案が274件もあり、組合化と労働者の安全に関するセクターで、いくつかの注目すべき提案があった」と投資会社は付け加えた。

株主のESGアジェンダに対する支持が低下しているにもかかわらず、バンガードは、「提案を評価するためのアプローチは終始一貫している」と主張した。

「我々は、企業が抱えている財務上の重要リスクを解決する提案を特定し、(企業の戦略や業務に干渉しない範囲で)企業の現在の慣行とのギャップを埋めることができる提案を支持する。実施に当たっては、企業に十分な自由裁量を与えることに変わりはない」と述べた。

ブラックロックがESG支持票を抑制する

バンガードが、ESG提案に対する支持を低下させたのは、他の大手競合社、特に世界最大のマネーマネージャーであるブラックロックが同様の発表をしたからだった。

先週発表されたレポートには、6月までの過去1年間の企業会議で、ブラックロックが、ESG提案の約7%を支持したことが述べられていた。この数字は昨年の22%、半数近くが賛成票を投じた2021年からは大幅に減少した数字だった。

ブラックロックの議決権行使は、進歩的な民主党議員から反感を買い、同社は、反ESGの共和党議員による圧力に抵抗できなかったと非難された。

テキサス州からウェストバージニア州まで、共和党が主導する州では、財務当局がESGに取りつかれた投資戦略に不信感を抱き、公的年金基金数十億ドルをブラックロックから引き揚げている。

ニューヨーク市の会計監査官ブラッド・ランダー氏は、ESG投資の有力な支持者であるが、「ブラックロックは、特別利益団体の意向によりESGに対する誤った情報に晒され、近視眼的な戦争に屈している」とフィナンシャル・タイムズ紙に語った。

「ブラックロックには、気候変動と人材に係るリスク管理の必要性について明確かつ一貫したメッセージを発信するために、議決権を行使する責任がある」とランダー氏は述べ、ビッグアップルの2480億ドル(約36兆6500億円)の年金基金の運用にESG指標を組み込むことを誓った。

ブラックロックは、政治的圧力がESG投票に影響を与えたという主張を否定し、声明の中で、「その決定は、クライアントの経済的利益を促進するためだけに」行われたと述べた。

「委任状による議決権行使で、より積極的な役割を果たしたいという顧客のために、私たちは業界に先駆けて、議決権行使選択イニシアチブを通じ、その選択肢を提供している」と付け加えた。

6月、ブラックロックの最高経営責任者(CEO)であるラリー・フィンク氏は、極左と極右によって武器化された「ESG」という用語を今後使用しないと述べた。

「ESGという言葉は完全に武器化されているため、もう使用しない」と、いわゆる社会的責任のある「利害関係者資本主義」の提唱者であるフィンク氏は、コロラド州のアスペン・アイデアズ・フェスティバルでのインタビューで語った。

「私は、すべての利害関係者に焦点を当てる必要があると強く信じている」と彼は語る。「しかし、ESGという言葉は誤用されているので、使用するつもりはない」

バンガードが気候協定から離脱

2021年、バンガードは、資産運用会社のアライアンスであるネット・ゼロ・アセット・マネージャー(NZAM)に参加した。

NZAMは、業界に対して、2050年までに温室効果ガス排出量を正味ゼロの推進を約束した。2022年11月の時点で、NZAMには約66兆ドル(約9753兆8100億円)相当の運用資産を代表する署名者291人がいる。

2022年12月7日、バンガードはNZAMからの離脱を発表し、同社の顧客が好む分散インデックス・ファンドへのネットゼロアプローチの適用性について混乱があったと述べた。

「かなりの時間をかけて、我々はNZAMから離脱することを決めた。インデックス・ファンドの役割や気候変動などの重要なリスクに対して、当社がどのように考えているのかを、投資家の皆様が望まれる明確さで提供するため、また、投資家の皆様にとっての重要な事柄について、バンガードが独自に発言していることを明確にするためだ」とバンガードは述べている。

この環境保護協定からの離脱は、2022年11月に環境規制に慎重な立場を取る共和党が主導する13州の検事総長が、連邦エネルギー規制委員会(FERC)に送った書簡に端を発しているとみられている。その書簡には、バンガードが環境保護活動を行ってきたことを理由に、上場電力会社の株式をバンガードが購入することを阻止するよう求めていた。

バンガードが参加したグループは、(バンガードが委員会に対して具体的な約束をしていたにもかかわらず)「天然ガスと石炭による世界の電力生産を約67%から約0%にシフトさせることを目的としている」と州検事総長たちは書いている。

「これは間違いなくエネルギー供給のコストと信頼性に影響を与えるだろう」

州検事総長は、アラバマ州、アーカンソー州、インディアナ州、ケンタッキー州、ルイジアナ州、ミシシッピ州、モンタナ州、ネブラスカ州、オハイオ州、サウスカロライナ州、サウスダコタ州、テキサス州、ユタ州を代表していた。

「バンガード自身の公約やその他の声明は、少なくとも、バンガードが環境活動に従事し、その財政的影響力を利用してポートフォリオ内の公益事業会社の活動を操作していたため、委員会への約束に違反したように見える」と彼らは付け加えた

5月、FERCは、米国の電力会社の大きな株式を購入し続けるというバンガードの要求を認めたと述べたが、共和党の州検事総長たちが提起した懸念には言及しなかった。

Bill Pan
エポックタイムズ記者