中国による日本の土地取得問題について、時事評論家の唐浩氏は大紀元日本に寄稿文を寄せ、中国が国外の土地を取得することで得られる数々のメリットについて分析した。次段落から同氏の論説となる。
国防動員法で「収用」できる
沖縄の無人島を中国人女性が購入したという。女性が中国当局や中国軍とつながりがあるかどうかは不明だ。近年、中国人や中国資本が積極的に外国の土地・不動産を取得する現象は世界各地で相次ぎ、各国は警戒をしている。なかでも、中国共産党を「敵対的国家」と見なす米国は神経を尖らせている。
中国共産党は民間を軍用目的の隠れ蓑にするのを得意とする。中国当局は複雑かつ不明瞭な方法で民営企業を創設したり、あるいは既存の民営企業を投資したりなどして、これらの企業をコントロール下に置く。これらの民間企業に海外で土地や不動産を取得させることで、中国軍のためにより多くの戦略資本や戦略要衝を作ろうとしている。
単純な民間企業や個人による購入に見えても、裏には中国当局の影が潜んでいる可能性もある。
中国の民間企業あるいは個人による投資は、国防動員法の第54条~59条、国家情報法の第14条~17条の規定により、中国当局が必要と判断すれば、国防や国家安全保障の名目で民間企業や個人にその資産を収用できる。また、当局の情報提供の求めに応じることも義務付けられている。
言い換えれば、中国当局は法律を通じて、全国民や中国企業を強制的に「武器化」「スパイ化」しているようなものだ。このような「民間を隠れ蓑にする手口」は世界各国にとっては防ぐに防げない。
中国当局が敵対国家の土地や不動産を積極的に取得したがるのは、「囲碁戦略」をとっているからだ。まず相手陣の配置を把握して、要となる石を狙って包囲するという考え方である。
例えば、中国のアグリ大手「阜豊集団」が昨年春、製粉工場を建設するとして、米ノースダコタ州の米空軍基地から車で20分の場所に300エーカー(約120ヘクタール)の土地を購入した。
日本でも昨年2月に、中国資本と関係の深い事業者が北海道の航空自衛隊レーダー基地から約35キロに位置する土地を取得している。
昨年8月、長崎県にあるテーマパーク「ハウステンボス」が中国の特権階級の家族が支配する香港の投資会社へ売却されることが発表された。このテーマパークは米海軍佐世保基地から15キロしか離れていない。
中国人女性が購入したとして最近話題を呼んでいる屋那覇島も、沖縄の米軍嘉手納基地から62キロの距離だ。
これら中国側に買われた土地は一見軍事拠点から少し離れた場所にあり、土地自体にも短期的な経済的価値がないように見えるものが多い。しかし、中国共産党は損をする投資をするはずがない。つまり、軍事的価値に狙いを定めている可能性がある。
中国側はこれらの土地にレーダー装置や通信傍受装置、電磁波妨害装置を配備したりして、周辺の軍事基地を監視・偵察し、通信を傍受できる。そして必要時にはこれら軍事基地の通信や作戦機能を妨害することもできる。だからこそ、各国政府が中国人や中国資金による土地の買い占めに神経を尖らせている。それらの警戒は至極当然のことであり、合理的だ。
さらに、中国側が購入した外国の土地や不動産が都市開発や公共建設、軍事建設など政策上において必要とされている場合、中国側は有利な条件を手にいれたことになる。中国は、それら切り札を利用して、相手国に中国への妥協を迫ることができる。
中国による日本や米国での土地取得は、「政府は簡単にその取引を阻止できない」という、いわば西側の自由世界の隙に付け入るやり方ともいえる。
例えに日米政府がその土地売買の取引の背後に中国当局の影が潜んでいると知っていても、証拠がなければ安易な介入はできない。中国側はその点をよく知っている。その隙に付け入ったかもしれない。
中国は海外との「制度の違い」を利用して、海外の土地や不動産を買いあさっている。これはいわば一種の「非対称戦争」ともいえる。
(翻訳・李凌)
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