行き詰まるワクチン外交、迫る報告期限…「ウイルス研究所流出説」再浮上で追い込まれる中国共産党

2021/08/22
更新: 2021/08/22

新型コロナウイルスの発生源を巡って、中国武漢ウイルス研究所(WIV)から流出したとの説が再び注目を集めている。調査に携わったWHOの専門家がテレビ番組で内情を暴露した。米国下院の共和党議員が8月に公開した報告書でも研究所流出説にまつわる証拠が多数あることが示され、研究所流出説を後押しする形となった。バイデン米大統領は今年5月、ウイルスの発生源に関する調査を90日以内に報告するよう求めており、その期限が差し迫っている。

中国は発展途上国を中心にワクチンを提供する「ワクチン外交」を行っているが、その本心はウイルス漏洩に対する「責任逃れ」ではないかとの指摘もある。中国製ワクチンは信頼性に乏しく、供給網を拡大していく欧米製ワクチンに匹敵するものではない。

ウイルスは研究所から流出、証拠もある=米下院報告書

米下院外交委員会の共和党議員マイケル・マコール氏は8月2日、新型コロナウイルスは中国の武漢ウイルス研究所から流出したものであり、証拠も大量にあるとの報告書を公開した。

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報告書は、「COVID-19のパンデミックの原因を調査し続けるなかで、生鮮市場を発生源として完全に却下するときが来たと考えている」とし、数多くの証拠は武漢ウイルス研究所が発生源であると指し示している、と記した。

米下院共和党による新型コロナウイルス起源調査報告書のハイライト(潤水)

さらに、武漢ウイルス研究所は新型コロナウイルス感染症が発生する数カ月前、危険廃棄物処理システムやセントラル空調などの改修工事に関する入札を公募していたことも明らかにされた。当時、同研究所は運用開始からまだ2年も経っていなかった。この件について報告書は、「同施設が稼働を開始した直後に、このような大規模な改修は珍しい」と指摘している。

再浮上する「研究室流出説」

近日、新型コロナウイルスの発生源調査に携わったWHOの専門家が、報告書の作成にまつわる内情をテレビで暴露した。これにより、「研究所流出説」の可能性を「極めて低い」と断じた報告書の結論には、中国側の影響があったことが明らかになった。

武漢ウイルス研究所を調査するピーター・ダザック氏(右)(Photo by HECTOR RETAMAL/AFP via Getty Images)

世界保健機関(WHO)共同調査団のメンバーとして新型コロナウイルスの起源調査に携わったピーター・ベン・エンバレク博士は、8月にデンマークの地上波テレビ局で放送されたドキュメンタリー番組「ウイルスミステリー」に出演した。エンバレク博士は番組のなかで、「中国の研究チームが新型コロナウイルスの起源と武漢ウイルス研究所を関連づける内容を盛り込むことに反対していた」と語った。

さらに、同じくWHO共同調査団のメンバーとして発生源調査を行い、「研究室流出説」を何度も否定してきた動物学者のピーター・ダザック博士が、6月21日に国際医学誌「ランセット」の「COVID-19委員会」メンバーから解任された。

武漢ウイルス研究所と長年にわたり研究協力を続けてきたダザック氏は、実験室流出説を「陰謀論」と一蹴し、武漢研究所にはコウモリがいなかったと主張してきた。

今年6月、オーストラリアのスカイニュースは武漢ウイルス研究所でコウモリが飼育されている映像を独自入手した。スカイニュース側は「今回公開された映像は、ダザック博士とWHOが、武漢ウイルス研究所の実験室にコウモリがいたのか、そしてウイルスのデータベースがどこにあるのかをきちんと調べていないことを示している」と主張した。

中国のワクチン外交は「責任逃れ」

新型コロナウイルスの発生源は武漢の研究所であるとの説が広まるなか、中国の「ワクチン外交」はウイルス漏洩に対する「責任逃れ」の外交戦略ではないかとの指摘もなされている。

中国の外交部(外務省に相当)によると、習近平国家主席は5日、今年中に20億回分の「新型コロナウイルス感染症ワクチン」を輸出すると発表した。そして、ワクチンの公平な分配を目指す国際的な枠組み「COVAXファシリティ」には1億ドル(約110億円)を寄付すると明らかにした。

中国製ワクチンは有効性に疑問が持たれている (Photo by STR/AFP via Getty Images)

米戦略国際問題研究所(CSIS)のスティーブン・モリソン先任研究員は、米政府系メディア「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」のインタビューに対し、中国のワクチン外交は「初期の対処方法に対する国際的な非難の声を意識したものとみられる」と分析。

中国がWHOの第2次発生源調査を拒否したことについては、「(中国が)何か隠しているという推測と疑念を自ら招いている」と話した。

中国は自国製ワクチンを積極的に輸出してきた。その対象は主に発展途上国に集中している。中国のシノファーム、シノバック製ワクチンは米国や英国、欧州連合(EU)では承認されなかったが、今年7月にWHOが緊急使用を承認した。

モリソン氏は、中国のワクチン外交が米国の新型コロナウイルス発生源調査の動きと時期的にかみ合っている点に注目した。米共和党が8月に発表した前出の報告書は、新型コロナウイルスが武漢の研究所から流出した証拠が大量にあると主張している。

米国政府の調査報告の期限が差し迫っていることも忘れてはならない。バイデン大統領は5月、情報当局に対し新型コロナウイルスの発生源を90日以内に調査し報告するよう命じた。モリソン氏は、米国が結果を出すのに備え、中国はあらゆる手段を尽くして国際社会の好感度を「買収」しようと試みていると述べた。

信頼性の低さゆえに行き詰る中国のワクチン外交

中国が大々的に推進しているワクチン外交は行き詰まりを見せている。東南アジア、南米諸国など一部の国では、中国製ワクチンを使用した後、かえって感染者数が急増する事例が相次ぎ、問題となった。中国製ワクチンはその効能が安定していないため、タイ、マレーシアは急遽、中国製ワクチンで接種を完了した医療従事者に追加接種を要求し、欧米製ワクチンとの混合接種を実施している。

欧米を中心とする先進国の供給拡大も中国のワクチン外交を揺さぶっている。主要7カ国(G7)は今年6月、イギリスで開催された会合で、国際社会に少なくとも8億回分以上のワクチンを供給することを決定した。米国は約60カ国に1億1千万回分のワクチンを支援し、来年まで5億回分を低所得国家に提供することに同意した。

バイデン米大統領はワクチン支援について「米国が提供したワクチンは無料で、補償の必要はなく、付加的な要求事項は全くない」と強調した。

(翻訳編集・潤水)