妊婦が妊娠中にCOVID-19に感染すると、生まれてくる子どもの神経発達障害のリスクがやや高くなるという新しい研究結果が出た。
マサチューセッツ総合病院グループ(Mass General Brigham)の研究チームが発表した論文によると、妊娠中に母親がCOVID-19に感染した場合、子どもが3歳になるまでに自閉スペクトラム症などの神経発達障害と診断される割合は約6人に1人(16%)。一方、妊娠中に感染しなかった母親の子どもでは約10人に1人(9.7%)だった。
この研究の責任著者であるアンドレア・エドロー医師は「COVID-19は、妊娠中の他の感染症と同様に、母親だけでなく胎児の脳の発達にもリスクをもたらす可能性がある」と指摘している。
研究は2020年3月1日から2021年5月31日までに同病院グループで出産した18,124人のデータを分析したもの。この時期は分娩時に全員がCOVID-19検査を受けていたため、正確な比較ができた。妊娠中に陽性となった母親は861人。この時期はワクチンがまだ広く行き渡っていなかったため、ほとんどの母親は未接種だった。
子どもたちの診断は電子カルテで追跡され、3歳の誕生日までの神経発達障害の診断率を比較した。結果、母親が妊娠中に感染していたグループでは16%、感染していなかったグループでは9.7%が診断を受けていた。
統計的に調整した後、妊娠中のCOVID-19感染は子どもの神経発達障害のリスクを約29%高めることがわかった。特に妊娠後期(第三トリメスター)の感染でリスクがより高くなっていた。
ただし、別の著者であるロイ・パーリス医師は「感染した母親の子どもでも、神経発達に悪影響が出る全体のリスクは低いままだ」とコメントしている。絶対リスクは小さいという点が重要だ。
研究の限界として、子どもが同病院グループ外の医療機関で診断を受けた場合は把握できていないこと、また無症状の感染を見逃している可能性があることが挙げられている。
この研究は米国国立衛生研究所(NIH)などの助成を受け、2025年10月30日に査読付き雑誌『Obstetrics & Gynecology』に掲載された。
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