中国の電力不足は北部にも広がっている。多くの地域で「電力不足」の通知が出され、一部の地域では「電力供給停止・制限」の措置に踏み切った。
今年5月以降、東莞、仏山、恵州、中山、潮州など広東省の多くの都市で電力制限の措置が講じられた。広西チワン族自治区、雲南省、貴州省、海南省など南部5省でも同様の事態が発生している。現在、供給逼迫の状況は、浙江省、江蘇省、山東省、安徽省、湖南省、湖北省、江西省まで拡大している。
中国国家発展改革委員会(NDRC)は電力不足の原因として、産業、気候、石炭などを挙げたが、昨年からの豪州産石炭の輸入禁止や5Gの電力消費に言及しなかった。
中国の多くの省で電力供給不足
広東省では5月、電力不足が発生し、地元供電局は省内各地の製造企業に対し、週1~3回の生産停止を要請する事態に陥った。製造企業は厳しい経営環境に置かれている。
東莞市の靴メーカーの経営者はこの突然の電力制限に対応するため、一時的にディーゼル発電機を借りることを余儀なくされた。それにより電気代が倍以上かかる上、発電機の騒音防止のために臨時の防音室を作る必要もあるという。
電力不足は北部の山東省にも起きた。同省エネルギー局が5月に発表した電力消費計画では、今年の夏のピーク時に、200万キロワット(KW)の電力不足が推定されるとした。石炭供給の逼迫、省外からの流入電力の減少、異常気象など条件が重なれば、さらに電力不足は悪化するという。
安徽省や江蘇省でも同様の電力不足が予想されている。
当局が避けた2つの重要問題
各地の電力不足の問題に関し、NDRCの孟瑋報道官は17日、「(ウイルス流行から)生産の急速な回復や、高温の天候による電力消費量の増加、水不足による水力発電の不足」など原因として挙げた。
しかし、2020年12月中下旬、中共ウイルス(新型コロナウイルス)の流行期間中にも、中国では大規模な電力制限が行われていた。当時、広東省、北京市、上海市、浙江省、湖南省、江西省など多くの省や市で電力供給が逼迫し、企業の生産活動や市民生活に直接影響を及ぼした。
孟報道官が挙げたもう一つの電力不足の原因は、「雲南省での石炭調達の困難」だった。
雲南省は中国でも有数の石炭資源を有する省である。中国メディア「財新網」の5月下旬の報道によると、雲南全省の石炭備蓄量はわずか50万トンで、一部の火力発電所では1~2日で消費してしまう量だという。
雲南省が5月10日に出した「ピークシフトに関する通達」では、各地の企業にピークシフトへの協力を要請し、電力使用制限は10~30%とした。
ピークシフトとは、工場などの操業時間を電力需要のピーク時間からシフトさせ、電力供給網の負担軽減を図る政策である。
しかし孟報道官が言及しなかったのは、2020年12月、中国当局が中国企業にオーストラリアからの石炭輸入を正式に禁止したことだ。中共ウイルスの発生源について独立調査を求める豪州に対して報復措置を講じた。
もう一つ避けた問題は、中国の5Gである。 中国メディア「ITタイムズ(IT時報)」のデータによると、5G屋外基地局の1テナントの平均電力消費量は約3.8KWで、4G基地局の3倍以上だという。2026年までに5G基地局の電力消費量は社会全体の消費量の2.1%にまで上昇すると言われている。
2020年の大規模な電力制限の前、北京当局は「5Gネットワークやデータセンターなど新型インフラ建築を加速させる」と公表した。
2020年末時点で、中国には71万8000を超える5G基地局が設置され、地区クラスの全都市(地級市)をカバーしているという。
中国国家電力網・国家電網信通産業グループは昨年8月、天津市、山東省、上海市、安徽省、湖北省、江西省、陝西省、四川省、重慶市を含む12の地方電力網の負荷は過去最高を30回も記録したという。全国電力調達量が10億7500万KWに達し、昨年のピーク時より2400万KW多かったという。電力消費量の増加について、「5G基地局の建設計画、ブロックチェーン技術と産業開発の適用、データセンター計画と開発」が原因だとした。
(翻訳編集・李凌)