孫子曰く、「上兵は謀をうつ、その次は交をうつ、その下は城を攻む」。つまり、最も高等な戦争の方法は「敵の陰謀を陰謀のうちに破ること」、その次に上等なのは「敵と同盟国との外交を破る分断」、その次は「敵軍を破ること」。攻撃的な姿勢を持つ中国共産党に対して、日本は2つの対抗手段がある。その一つは「交をうつ」、外交から中国を孤立させることだ。拙稿では、日本は中国に対する「交をうつ」策を論じていきたい。
日本は「日米同盟」を強化している
世界情勢が大きく変化し、ある意味では「日米同盟」が日本の国家としての基盤となっている。 安倍前首相はそれを理解しており、トランプ氏が米大統領に正式に就任する前、ニューヨークでトランプ氏と面会した。二人は良好な個人的関係を築き、安倍氏はトランプ氏に中国共産党との戦いを促した(筆者の「安倍首相、トランプ氏に中国共産党の包囲網を促す」という記事をご参照)。そして、バイデン大統領がホワイトハウスで会う最初の外国首脳は菅首相。 日本がアメリカとの関係において、努力を惜しまないことは明らかなので、ここでは詳しく語らない。
日本、日米豪印4カ国同盟を提唱 2国間関係の発展に注力
世界で覇権を広める中国から、インド太平洋地域の国々は、いち早く圧力を感じた。例えば、オーストラリアは2017年以降の中国政策を大幅に調整した(詳細は筆者の記事「中国共産党を叩くオーストラリアの覚醒」をご参照)。日米豪印4カ国の「安全保障メカニズム」(クアッド)の確立に向けて、確固たる基礎が築かれていた。しかし、さまざまな理由により、クアッドが「インド太平洋版NATO」に発展するには、まだ長い道のりがある。したがって、日本にとっては、インド太平洋戦略の枠組みの中で、アメリカ、インド、オーストラリアと2国間協力を発展させることに注力することが大きな戦略となった。
まず、日豪両国間について、2020年11月、オーストラリアのモリソン首相が訪日し、両国は「円滑化協定(RAA)」の締結に基本的に合意したと発表した。 締結されれば、日豪両国は、準軍事的な同盟になる。 日本が外国と防衛協定を結んだのは、1960年の「在日米軍地位協定」以来であり、日本政府が米国以外の外国軍の駐留を認めたのは60年ぶりとなる。 また、米国以外のアジア太平洋諸国間では防衛協定を結ぶのは初めてであるため、意味が非常に大きく、一部のメディアは「画期的な防衛協定」と評している。
日本とオーストラリアは2007年、すでに外務大臣と防衛大臣が協議する「2+2」メカニズムを確立した。同年には合同軍事演習、正式な軍事交流、日本の自衛隊がオーストラリア国内でテロ対策訓練を行う可能性を認める軍事協力協定を締結した。 2014年には、日豪間の防衛技術協力を促進する「防衛・科学技術協力協定」が締結され、日豪関係は「特別戦略的パートナーシップ」に格上げされた。 日本が武器・装備品の輸出規制を緩和した後、日豪の軍事協力は軍需品の共有にまで拡大した。 日豪両国間の軍事関係が進歩していることは明らかだ。
そして、日印両国間について、日本とインドは2005年から首脳会談を行っており、2006年にインドのシン元首相が来日した際に、「戦略的グローバルパートナーシップ」を構築すると述べた。 翌年、安倍首相はインドを訪問し、「日印のグローバルな戦略的パートナーシップを重視する」と「自由と繁栄の弧」(インド太平洋戦略の原型)を提唱し、同年、米印合同軍事演習「マラバール」(マラバール2007)に自衛隊が初めて参加し、その後、2009年および2014年以降も毎年参加した。 2008年、日本とインドは軍事交流を強化するために「安全保障に関する共同宣言」に署名し、インドはアメリカとオーストラリア以外の3番目の国として日本と安全保障協定を結んだ。
2014年にモディ氏がインド首相に就任して以来、日印は急速に接近した。2019年には「特別な戦略的・グローバルなパートナーシップ」を確立し(インドがこのような関係を持つのは2カ国だけで、もう1カ国はロシア)、今年は日本とインドの外務大臣と防衛大臣の会談を行う「2+2」メカニズムを構築し、インドはRCEPからの離脱を表明した直後に、日本とは相互軍事支援協定(MMA)で合意し、既に締結済みの軍事情報保護協定(MIPA)と防衛装備・技術移転協定(DETA)を強化した。2020年9月9日、日本とインドはこの協定に署名し、「両国の軍事力の戦略的範囲を実質的に拡大する。日本はアンダマン・ニコバル諸島にあるインドの施設にアクセスでき、インドはジブチにある日本の海軍施設にアクセスできるようになる」とコメントした。 インドは、アメリカ、イギリス、フランス、カナダ、オーストラリアに続き、日本の6番目の(準)軍事同盟国となる。
日本とインドの軍事協力は、両国にとって大きな価値がある。 例えば、日本が軍備の研究開発に強い力を持っており、インドが武器や装備の主要な輸入国であり、「国産化」を求めているため、両国の協力は軍備や兵器の開発において双方に新たな可能性をもたらしている。
日本はNATOの主要国とも積極的に軍事関係を築く
ここではいくつかの例を紹介する。日英間について、 今年2月3日、日英のオンライン外交防衛「2+2」会合を行い、(英国防相が「英海軍の過去一世代で最も重要な配備」と述べた)英国がインド太平洋地域へ空母を派遣するこれを機に、日本の自衛隊と共同訓練を実施することに合意した。報道によると、 両国は東シナ海と南シナ海の情勢を協議し、いわゆる一方的な現状変更に反対することで合意した。 また、台湾問題やミャンマー問題についても話し合った。 中国共産党が念頭にあるのは明らかだ。
元駐英大使の林景一氏は、現在の日英関係を「新しいタイプの同盟」と称している。 2013年7月に、軍事装備の共同開発を促進するための協定に署名し、2014年には、ミサイル技術の共同研究が開始され、日本が米国以外の国とミサイル共同研究は初めてだ。また、両首脳は、外交官と防衛大臣による「2+2」会談を開催することで合意した。2016年10~11月にかけて、イギリス空軍が来日し、合同演習を行った。日本の航空自衛隊が、日本で米国以外の国と合同演習を行うのは初めてだ。 2017年、両国は相互軍事支援協定を締結し、「2+2」会談では3年間の防衛協力プログラムの実施に合意し、来年、陸海空軍が初の共同訓練を行うことを確認した。
中国共産党の世界拡張と攻撃的な外交により、イギリスは中国共産党との戦いで先頭に立っている。 中国共産党の脅威が増す中、日本とイギリスが同盟関係に向かうことも不可能ではない。 2月の「日経アジアンレビュー」では、日英関係は「日米同盟」を補完する新たな「準同盟」の様相を呈してきており、中国共産党の海洋進出に対抗するために、英国も米・日・印・豪の「4カ国安全保障対話」に参加する可能性があると書かれている。
また、日仏2国間について、中国共産党の勢力拡張により、特に南シナ海での人工島建設とその島の軍事化利用は、国際的な緊張を高めている。フランスはインド太平洋で軍事的存在感を高め、2018年にインド太平洋戦略文書を発表した。 日本は、フランスのインド太平洋戦略の重要な軸となっている。
2013年、オランド元仏大統領の訪日時に、両国は「相互信頼の特別なパートナーシップ」および「2013~2018年までの日仏協力のロードマップ」を協議し、外務大臣と防衛大臣による「2+2」の協議メカニズムの構築を決定した(日本はフランスとこのようなメカニズムを構築したアジアで唯一の国だ)。 2018年には、日本の自衛隊とフランス陸軍が物資やサービスを相互に提供するための「物品役務の相互提供協定(ACSA)」を締結した。
今年の4月5~7日までの間、フランスが主導した海軍演習「ラ・ペルーズ」はベンガル湾で行われ、日米豪印4カ国が参加した。 また、共同通信4月1日の報道によると、日本は5月に米仏との合同軍事演習を南西部の霧島軍事基地で実施する予定であり、マルチアーム統合作戦による戦略的抑止力を行使し、フランス軍が初めて日本での軍事演習に参加する予定だ。 フランス海軍参謀総長は、今回の演習を「中国へのメッセージ」であると述べた。朝日新聞は、中国共産党を牽制するために3カ国が協力関係を強化したいという情報筋の話を引用した。 日本とフランスの軍事協力がより緊密になることは間違いない。
さらに、日独両国間について、読売新聞4月5日付は、日本とドイツが4月中旬に初の「2+2」会談を行う予定と発表した。この対話では、防衛や「自由で開かれたインド太平洋地域」の構築、「自己主張を強める」中国共産党への対応などを話し合う見込みだ。 これに先立ち、ドイツはアジアに駆逐艦を派遣し、今年8月に日本を訪問して自衛隊と共同訓練を行うほか、南シナ海に出航して航行の自由作戦に参加する予定とも発表した。
3月23日には、日独両国間で「情報保護協定」を締結した。 この協定により、日独両国間の軍事機密や対テロ情報の交換がより便利になり、日本が欧州諸国に防衛装備品を輸出する際の大きな障害が取り除かれることになる。 それ以前にも、日本はアメリカ、イギリス、オーストラリア、北大西洋条約機構(NATO)と同様の協定を結んでいた。
ドイツが中国に対して常に友好であり、アンゲラ・メルケル首相は西側諸国の中で最も有名な親(中国)共産主義者だが、国際情勢の変化はドイツの対中政策の変更を促している。ドイツは昨年9月に「インド太平洋政策指針」を閣議決定し、日本やオーストラリアなどの民主主義国との関係強化や、インド洋や南シナ海の自由航行を確保するための軍艦の派遣などを含め、初めてインド太平洋地域をドイツ外交の優先事項とすることが明らかになった。
実際、安倍首相は2期目の首相就任当初から、日独の軍事協力関係を積極的に展開してきた。 ボイス・オブ・アメリカの2017年7月28日の報道によると、日本とドイツは、ベルリンで、両国の防衛技術協力を深めることを目的とした「秘密の」防衛装備・技術移転協定(2015年から交渉中)に署名した。 また、武器輸出を禁止する「武器輸出三原則」に代わり、2014年に「防衛装備移転三原則」が策定されてから、日本はアメリカ、オーストラリア、インド、フィリピン、イギリス、フランス、イタリアと類似な協定を締結し、ドイツと日本の軍事交流はすでに展開している。
中国の国際問題専門家は、日本が日独、そしてヨーロッパと日本の軍事協力を積極的に働きかけてきたと考えている。安倍前首相は、対外的な軍事協力や武器輸出を推進し、軍事面でも意欲的に取り組んできた。 ロシアのメディアによると、過去の経験から、日本が他国のパートナーになる一つの重要なサインは、技術協力から始まるという。 日本が軍事技術協力を通じて他国と軍事的パートナーシップをさらに発展させていくと思われる。
結語
日本が外交の面から中国に対抗してきた努力は、上で述べてきた事実に止まらない。例えば、日本はロシアやインドネシアと閣僚級の「2+2」会談や、効果的な日本の経済外交の展開、アメリカがTPPから離脱した後、日本が率先してCPTPPの完成を促したことなどは、日本の国際的な影響力を示している。
実際、日本の「外交から中国を孤立させる」策はかなり効果的であり、中国共産党が非常に危惧している。しかし、中国共産党が気づいていないのは、日本の「外交努力」を成功させたのは、共産党自身の蛮行にほかならない。もちろん、日本の柔軟な姿勢および外交策も成功の大きな理由の一つだ。
日本は国家目標を設定するのに時間がかかるが、いったん目標が定まると、着実かつ長期的に全力で推し進め、必ずやり遂げるという特徴を持ち合わせている。
日本がいったん中国共産党の本質を認識することができれば、中国共産党の脅威に対処することは、困難ではあるが、不可能ではない。「外交から中国を孤立させる」策以外に、日本は中国共産党に対抗できるもう一つの有効な手段がある。これについては別の記事で紹介させていただきたい。
(大紀元日本ウェブ編集部)
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