北京市昌平区崔村鎮にある高級住宅街「香堂文化新村」は最近、当局による住宅の取り壊しに遭い、住民はハンガーストライキなどを通じて抗議活動を行っている。
香港メディアの有線電視(Cable TV)によると、12月10日朝、1000人近くの警官、10数台のクレーンやトレーラーが村域に入った。昌平区人民法院(地方裁判所)が、600戸を9日までに撤去するよう命じたためだ。路線バスの運営会社は地域のバス運行を停止した。
中国のSNSには、香堂文化新村のなかで住居を守ろうと奮闘し、「法を犯して、国民に迷惑をかけた」「財産を無駄にした」などと叫び、地元の役人を非難する住民たちを映した映像や文章が多数流通している。
出稼ぎ労働者向けの住宅街だった「香堂文化新村」は、約10年前から、中間層らによる別荘や伝統建築様式・四合院などが建ち始め、風情のある一角となっていた。村は、北京市当局から2007年に「北京で最も美しい村」と称され、翌年には「オリンピック文化村」や観光地として宣伝された。
しかし、この新しい住宅開発地は、国有化された土地ではなく村有地など集団所有の土地を開発した「違法」な住宅だ。中国ではすべての土地は国が保有している。正規の住宅は国が発行する財産権証書、房権証(不動産所有権証、大産権)を取得できる。これに対して、鎮や村政府が発行する財産権証書は、「小産権房」と呼ばれ、法的に認められていないという。小産権房は、上昇する都市部の不動産価格と比べて安価に販売されている。
2013年11月、中国政府は「小産権房」の建設、販売を取りやめるとの通知を発表した。
北京最大の小産権房である香堂文化新村は、3800世帯以上が暮らし、数万人が居住する。多くはエリート層の出身者であり、広範な社会活動と影響力を持つ。
2018年に北京市や裁判所は、香堂文化新村の600戸あまりを違法建築に指定し、住民に自主撤去を命じたが、住民は反発した。2020年6月には強制取り壊しの警告文書が各住宅に貼られ、立ち入った武装警察と住民の小競り合いが起きた。
この村の一戸を所有する中国政法大学の楊玉聖教授は12月10日、地元政府は販売した土地を10年後に違法建築として土地収用するのは契約違反だと主張し、政府を相手取って裁判を起こすことを考えているという。
有線電視の取材に応じた楊教授は、「住民は村を出入りすることが禁止されている。今日は国際人権デーだが、中国当局は公然と人権を侵害しており、国際的な反中勢力への材料を作っているようだ」と述べた。
楊教授によると、当局は家屋の水道と電気を強制的に断ち切ったという。凍てつくような寒さのなか、村の住民は、14日にハンガーストライキを決行した。
村民が撮影したある動画には、杖をついた山西省の80代のベテランの共産党員の男性が、村を囲う警備員に向かって、「老後の生活のために政府が売った家を買った。一生懸命働いてきたのに、今度は家が取り壊されようとしている」と叫ぶ様子が映っている。
楊教授によると、政府は当時、高級住宅地開発として一戸を約100万元(1500万円)で販売した。
また、同教授は法政大学あての公開書簡で、「(村政府と)結んだ『住宅購入契約』には、村党委員会の判子が押されているだけでなく、崔村鎮人民政府の判子も押されている。昌平区国土局が発行した『集体土地建設用地使用証書』を受け取った。だから、われわれは法に守られているはずだ」とした。
村のある住民は、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に「これは政府による契約詐欺だ」と批判した。
小産権房の取り壊しは、中国全土で頻発している。北京市だけでもこの一年間で、昌平区などで「生態環境を守る」との名目で、補償金のない収用や取り壊しが行われた。
中国の土地収用や別荘の取り壊しについて調べる、元・北京天則経済研究所の元所長、盛洪氏はVOAの取材に対して、強制取り壊しは人類の文明に反すると語った。「生計を立て、家を建てるには何十年もかかるが、財産が取り壊されるのは一瞬だ」「政府は不合理な解体協定を強要し、住宅を解体している。これは反人類的で反文明的だ」と主張した。
中国官製メディア・法務日報の報道によると、中国の全都市住宅の面積は298億平方メートルで、そのうち73億平方メートルが「小産権房」であり、全体の24%を占めるという。
(翻訳編集・佐渡道世)
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