FB創業者、中国検閲を批判「これが私たちの求めるインターネットか」

2019/10/25
更新: 2019/10/25

世界的ソーシャルサイト大手・フェイスブック(Facebook)の創業者兼最高経営責任者(CEO)マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)氏は最近の演説で、共産党の検閲システムを批判した。同氏はかつて中国参入のために、中国の情報検閲当局の高官を会社に招いたりしていた。

ザッカーバーグ氏は10月17日、ジョージタウン大学で「言論の自由」をテーマに演説した。同氏は、インターネット上の言論の自由の将来は、ソーシャルメディアプラットフォームと、世界各国政府の方針という2つの価値観に左右されるとした。このなかで中国は、表現の自由に対する最大の脅威だと非難した。

中国市場参入を狙っていたザッカーバーグ氏は「媚中派」と呼ばれるほど、ITトップ企業代表のなかでも親中姿勢が際立っていた人物だ。

中国官製メディアは2014年12月、中国のインターネット監督当局である国家インターネット情報弁公室で主任を務めた魯煒氏がフェイスブック本社を訪問したとき、ザッカーバーグ氏は温かく歓迎したと報じた。

報道によると、社内をザッカーバーグ氏自身が案内し、中国語で紹介したという。また、習近平主席が書いた書籍が置かれた机に座るよう同氏を誘った。

ザッカーバーグ氏は当時、フェイスブックの社員に「中国の特色ある社会主義」への理解を促すため、習氏の書籍をプレゼントしている。

この訪米の約1カ月前、魯氏は北京で開かれた記者会見である記者が、フェイスブックが中国に参入する可能性について質問した。「入れるとも、入れないとも言っていない」「中国人は親切だが、誰を客として迎えるかを選択する権利がある」

魯氏は訪米から戻って間もなくして、中国共産党規律委員会により腐敗を問われ、接収罪で14年の禁固刑が下った。

2015年にザッカーバーグ氏は習近平国家主席と面談すると、まもなく誕生する第二子の名付け親になってほしいと頼んだとも噂されている。

2016年、ザッカーバーグ氏が中国を訪問すると、粉塵混じりの厚いスモッグに覆われた北京の街を笑顔でジョギングした。同年、中国政府の認可を得るために検閲ツールを開発していると一部報道された。

2018年7月、フェイスブックは杭州市で子会社を運営する許可が下りたと伝えられた。しかし、中国当局は数時間以内に承認を取り消した。当時のニューヨーク・タイムズの報道によると、情報通の話として、フェイスブックは確かに地方政府の許可を得たが、中央政府サイバースペース管理局は「説明が不十分」として、機嫌を損じたという。

10月17日、ジョージタウン大学で行われたザッカーバーグ氏の中国の検閲に対する批判的な演説は、これまでの言動から同氏にとって意外な発言と捉えられている。

ザッカーバーグ氏は、近年のインターネットプラットフォームは、表現の自由を尊重する米国の技術によって成り立っていたとした。しかし「この価値観が残る保証はない」と危惧を示した。10年前は、同市場のトップ10は欧米企業が独占していたが、現在は中国6社が入っているとした。

ザッカーバーグ氏は、中国は「当局の価値観を世界に輸出している」と表現した。同氏は、英語圏で主流のチャットアプリ・ワッツアップ(WhatsApp)なら、抗議者や体制異見者の情報は、強力な暗号化でプライバシーが保護されるが、中国の動画共有アプリ「ティックトック」(TikTok)は、情報保護が乏しいとし、香港の反政府デモを支持するメッセージを中国当局の指示で排除していると述べた。「これが私たちの欲しいインターネットか」と、聴衆に呼び掛けた。

ティックトック側はSNSで、ザッカーバーグ氏の指摘に返答する形で、中国当局による削除要求はないと否定している。

ザッカーバーグ氏は、自由主義の価値と共に中国参入の成功を思い描き、「膨大な労力を使った」が、結果的には中国で運営するために必要な要件について、合意しなかったという。

このジョージタウン大学での演説後、ザッカーバーグ氏はニューヨーク・タイムズの取材に対して、演説の目的は、表現の自由に関する見解の説明と、自身が経営から離れた後のフェイスブックの将来の道筋を示すことだと述べた。

米国の技術系専門家は、中国で最も人気のあるソーシャルメディアプラットフォームである微信(WeChat)の情報安全上のリスクを警告している。これらは、プライバシー保護の欠如と、自由主義諸国の選挙に影響を与える社会主義国のツールとなっているとも疑われている。

微信の開発社・騰訊(Tencent)は、微信には月11億人以上のアクティブユーザーがいると説明している。中国インターネット当局は、インターネット上の書き込みには実名登録を義務付けている。

中国共産党政権による検閲システムについて、ハーバード大学の研究チームが2011年に調査を行っている。それによると、当時から、微博やブログなどを監視するネット検閲官「五毛党」が大量にいて、ネット世論の誘導や操作を行なっている。2018年の別の研究では、表示規制対象となる画像が投稿されると、独自の検閲アルゴリズムにより、自動的に取り下げられることがわかった。

米国拠点の中国コメンテーター・横河(Heng He)氏は大紀元の取材に対して、海外でプロパガンダを広める中国政府の戦術には2つの目的があり、1つは北京に有利なニュースを拡大すること、もう1つは共産党体制を否定する情報を抑制することだとした。

(翻訳編集・佐渡道世)