中国の支配進む南沙諸島、サンゴ礁を「永暑島」に名称変更 武力占拠の過去も

2019/01/30
更新: 2019/01/30

中国官製メディアは今年に入り、中国当局が軍事拠点化した南シナ海スプラトリー(南沙)諸島の人工島の映像や写真を報じた。

香港のアジア・タイムズ1月3日付によると、中国中央テレビ(CCTV)は年末特集番組のなかで、巡航ミサイル搭載型のH-6K(戦神)戦略爆撃機が離着陸できる3000メートル以上の滑走路など島内の様子を映した。番組は人工島と化したファイアリー・クロス礁の名称を「永暑礁」から「永暑島」に変えた。

この人工島には、大型船舶が停泊できる港湾施設や病院、居住・労働設備もあるという。さらに、早期警戒レーダー、近接防御火器システムなど軍事施設を備えている。

2017年5月、中国軍の公式メディア解放軍報はSNS微信で、この人工島にロケットランチャーを設置したと伝えた。ベトナム軍の潜水部隊による攻撃を回避するためだという。2018年5月、米CNBCは専門家の話として、対艦巡航ミサイルと地対空ミサイルが人工島に配備されたと報じた。

また、解放軍報は2019年1月、微信公式アカウント・軍報記者で、鮮明な「永暑島」の写真を掲載し「必要な設備はすべてそろった」と報じた。

CCTVの報道によると、駐留する兵士は200人以上。通信設備はチャイナモバイル(中国移動)とチャイナユニコム(中国聯通)がそれぞれ電波基地局を構えており、4.5Gの高速通信を提供している。

2016年には南方航空と海南航空による民間機の着陸も行なわれ、同年5月には駐留する数百人の兵士と建設作業員のために、人気歌手のコンサートが開かれた。

「永暑島」は、常に海面上にある部分の面積が2・8平方キロ・メートルあるという。

30年前、高射砲でベトナム水兵70人以上を殺害

中国共産党政権は2009年7月の米中戦略経済対話において、南シナ海の領有権を核心的利益に位置付けて、実効支配の野心をあらわにした。しかし、中国軍によるスプラトリー諸島支配の関与は30年前に始まる。

中国新聞網によると1987年2月、第14回ユネスコ政府間海洋委員会年次総会の委託を受け、中国は南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島・パラセル(西沙)諸島にそれぞれ1カ所「海面水位の共同測量所」の設置に着手した。

中国当局は「建設の成功」のために、海上警備隊の駐留や中国軍艦の派遣を行った。

スプラトリー諸島ジョンソン南礁の領有権を主張するベトナムは、武力を伴う他国の同礁の占拠に反対した。1988年3月14日、ベトナム輸送船の船員30人あまりがサンゴ礁の上にあがって測量し、領土の主張を誇示するため国旗を立てた。

サンゴ礁上のベトナム兵は軽装だったが、巡回する中国海軍フリゲート艦は武力を行使した。高射砲をベトナム兵に向けて放ち、殺害した。ほか数十人の水兵が乗るベトナム軍輸送船2隻を沈没させ、船員を死亡させた。ベトナム側の犠牲者は64人とされる。

この事件発生を両国ともに確認しており、海南省地方志編纂委員会1993年11月22日に記録がある。また中国軍は、武装準備から発砲まで当時の映像を一時公開しており、大手動画サイトで出回っている。ベトナムでは、ニャチャン市の南沙諸島博物館に、この犠牲についての記録展示がある。

武力による占拠を経て、中国共産党政権は1988年7月までに、ファイアリー・クロス礁には4トンの貨物船、ヘリポート、そして海洋観測基地を保つ300メートルの桟橋を建設した。

2016年7月、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は、南シナ海における中国の主張である「歴史的権利」は、「国際法上の法的根拠がなく、国際法に違反する」とする判断を下した。

(編集・佐渡道世)