米フーヴァー研究所の最新報告、「大紀元が真の独立した中国語メディア」(上)

2018/12/26
更新: 2018/12/26

アメリカの公共政策シンクタンク・フーヴァー研究所(Hoover Institution)は11月29日に発表した報告書で、中国共産党がアメリカの世論を全面的に操作していることに警鐘を鳴らした。「中国の影響と米国の利益:建設的な警戒の促進」(Chinese Influence & American Interests: Promoting Constructive Vigilance)と題するこの報告書は32人の著名な中国問題学者によって共同執筆された。

報告書によると、中国共産党はアメリカで中国国有メディア英語版の存在感を高めるだけでなく、現地の中国語メディアを排除・買収している。一方、法輪功学習者が創設したメディアは中国共産党の影響を受けないため、報告書は「アメリカにおける真の独立した中国語メディア」だと評価した。

フーヴァー研究所の報告書では中国共産党のメディア戦略を三種類に分類している。一つ目は国有メディアの規模拡大、二つ目は株式の買収による現地メディアの支配、三つ目は現地メディアの中国における商業的利益を用いて独立性を揺るがすことだ。

海外中国語メディアを支配

「過去20年間、中国当局は独立系の中国語メディアを次々と支配した」

フーヴァー研究所は報告書において、中国当局による米国の中国語メディアへの浸透工作を紹介した。

そのなかで、1938年、香港で創立された中国語メディア、星島報業集団(星島新聞グループ)に言及。同グループは、香港を含めて米国、カナダ、オーストラリアで華僑向けの地方版を発行してきた。1990年代半ば、同グループは親中派の実業家に売却された。この実業家が1998年に中国の全国人民政治協商会議のメンバーに選ばれた後、同グループの報道は中国政府系メディアの報道スタンスに一致するようになった。2001年5月、星島新聞グループと国営新華社通信は、合弁会社である「新華在線」を設立した。

北米で発行されている中国語紙「世界日報」も、近年、南シナ海における中国当局の軍事拠点化や、台湾・香港と中国本土の関係など、華僑の関心事について親中的な論調をするようになった。世界日報の母体は台湾新聞大手の「聯合報」だ。

世界日報の関係者によると、同紙オーナーは中国進出を計画している。フーヴァー研究所の報告書は、これが原因で近年、世界日報の編集スタンスが変わったと指摘した。また、報告書は、世界日報のライバルである在米中国語紙「僑報」の游江・会長が2015年に執筆した評論記事を引用し、世界日報と星島日報が中国大陸に関する報道を強化していると示した。両紙は、紙面を増やすと同時に、中国当局に対する批判的な報道を封印したという。

フーヴァー研究所は、香港紙「明報」も中国当局の支配下にあるとの見方を示した。中国系移民の多くは明報米国版を愛読してきた。マレーシアの中国系実業家の張暁卿氏は1995年明報の経営権を取得した。2007年、明報は張氏が所有する新聞社2社、星洲日報と南洋商報と統合した。

中国国営通信社の中国新聞社(CNS、以下は中新社)の郭招金・社長は過去中国国内メディアの取材に対して、明報が今後中国語メディアの世界最大手に発展する見通しだと話した。明報はすでに、北米、東南アジアなどで5つの新聞(日刊総数100万部以上)と29種の雑誌を発行している。

郭社長によると、米国の「愛国華僑」である熊徳龍氏が中国語紙「国際日報」を創刊したほか、フランスで発行されている中国語紙・欧州日報は国内上海の地元紙・新民晩報と提携し、フランスで新たに中国語紙の「欧州聯合週報」を発行した。欧州聯合週報はオーストリア、ドイツ、ギリシャ、ポルトガルでも発行しているという。

郭社長が親中国共産党の海外中国語メディアのなかで一番最初に「明報」に触れたことは、明報と中国当局の近い関係を反映したとみられる。

ネットメディアへの浸透

フーヴァー研究所は、北米に拠点を持つ中国語ネットメディアを名指し、中国当局の海外中国語ネットメディアへの支配に言及した。

「文学城(Wenxuecity.com)」は、米国ミシガン大学の中国人留学生が1997年に創設した中国語ネットメディアだ。フーヴァー研究所によると、2000年米国籍台湾人が同サイトの新オーナーになり、03年以降同サイトは中国進出の方針を打ち出した。

同サイトの林文・最高経営責任者(CEO)は2009年、中新社のインタビューで「今後中国国内メディアとの提携を希望する」と述べた。2011年、林CEOは中国国内メディアに対して、文学城の時事報道の大半は中新社の報道を採用していると明らかにした。

フーヴァー研究所は、文学城は経営者が変わって以降、新華社通信や中新社との間で業務提携を締結したと指摘した。また、中国共産党中央宣伝部は2000年米国籍台湾人による文学城の経営権購入に、100万ドルを出資したと取り沙汰された。

フーヴァー研究所の報告書は、中国語ネットメディア「多維新聞」にも触れた。報告書によると、2009年「多維新聞」を買収した香港の実業家は中国本土でビジネスを展開しているほか、名門清華大学の米中関係研究センターの創設者に名を連ね、南シナ海をめぐって親中的な評論記事を発表していた。多維新聞の本部は現在中国北京市にある。

多維新聞の創業者は買収後、カナダに拠点を置く中国語メディア「明鏡網」に加入した。

フーヴァー研究所は、「明鏡網」は2017年中国当局からの大規模な投資を受けた後、報道の中心は時事問題から不動産・投資・移民などに変えたとした。「明鏡網の記者は中国当局を非難する中国人富豪を取材したあと、中国国内にいる妻が行方不明になったことが、報道スタンスの変化に関係している」と分析する。

フーヴァー研究所は、米国中国語ネットメディア「倍可親(backchina.com)が2017年、中新社が主催した世界中国語メディアフォーラムに参加して以来、中国当局を称賛する報道が増えた、と指摘した。

VOA中国語版に影響力行使

フーヴァー研究所の報告書によると、2000年から09年までの10年間に、中国の駐米大使館の高官と米メディアのボイス・オブ・アメリカ(VOA)中国語部門の責任者が毎年会議を行い、VOAの報道に介入している。

VOAの職員はフーヴァー研究所の取材に対して、中国当局の干渉により、「VOA中国語版の報道の重点は、中国に直接関係するニュースから、米国の生活や英語教育に変わった」との認識を示した。

VOAは米政府が運営する国営放送で、現在米放送監理委員会(BBG)の管理下に置かれている。BBGは2017年、米グローバル・メディア・エージェンシー(USAGM)に名称変更をした。VOAによると、毎週4000万人の中国人が中国語版を視聴している。

2017年、元VOA中国語版責任者の龔小夏氏は、米国に亡命した中国人富豪・郭文貴氏へのインタビューを生中継すると企画し、ホームページで事前告知した。インタビューの直前、中国当局はVOAの駐北京記者に対して、郭氏への取材が「深刻な結果を招く」と中止を迫った。また、中国の駐米大使館員はVOAに対して、郭氏を取材すれば、報復措置を講じると圧力をかけた。

しかし、龔氏はインタビューを敢行した。これを受けて、VOA上層部はインタビューの途中に生中継を中断させた。龔氏と他の職員数人はその後、停職処分を受けた。

VOAは今年11月29日、龔氏に対して正式に解雇処分を行った。龔氏は現在USAGMに対して、解雇が不当だとして異議申し立てを行っている。VOA上層部は中国当局の圧力を受けて生中継の中断と龔氏への解雇を決めたとのことを否定している。

VOAの職員はフーヴァー研究所の取材に対して、龔氏が解雇されてから、VOA中国語版は、中国共産党への痛烈批判を避け、中国当局についてあいまいな報道スタンスを取っていると話した。反中国共産党の学者や人権活動家のブログは最近、VOA中国語ウェブサイトから消えた。

龔小夏氏が12月16日、ツイッターに投稿した。龔氏によると、VOA中国語版では、伝統気功グループの法輪功などについて報道をしてはいけないというルールがある。

(翻訳編集・文亮/張哲)

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