米フルブライト大学教授でブルームバーグ評論員のナイブ・バルディング氏は12月12日、自身のSNSアカウントで、中国滞在中に持ち掛けられた当局側のプロパガンダ協力要請や、美女の接近など、海外の専門家を取り込む手法を暴露した。
米教授が実体験を明かす
中国政府の対外プロパガンダ工作について、バルディング氏はこの度、自身の体験を明かした。中国滞在中、同氏は何度も中国当局者から収賄を持ち掛けられたという。「中国について声高に積極的に良い話を広げれば広げるほどお金が入る、名声も得られる」と聞かされていた。
バルディング氏は、共産党党紀や習近平主席を礼賛するようにとの要請を拒否したという。
中国側は、同氏の米大学教授という西側の知識層という点を強調して工作に協力するよう誘われていた。「国営メディアに出ることで、米国ワシントンから来た専門家が党を称える言論を広げれば、あなたは共産党や宣伝部から信を得るだろう」
「私は、シンクタンクや名門大学の博士たちが、中国官製メディアに出演したり執筆活動に忙しくしている背景に、何が起こっているのか知っている」バルディング氏は書いている。
また、中国当局は言論操作のために、「頻繁に不透明な形で」多くの資金をふるまっている。バルディング氏は一度、政府系の会議に参加したことで謝礼金を受け取ることになった。同氏は電子送金を想定していた。しかし、思わぬ送金手段にあぜんとしたという。
「美女が現金の入った封筒を持ってホテルの私の部屋を訪れて、必要なものがあれば言ってほしい、と申し出た」。接待の誘惑を察したバルディング氏は「事態を把握して、彼女に礼を言って扉を閉めた」
さらに、バルディング氏が中国から離れるための飛行機に搭乗する直前まで、何らかの形で数人の美女が同氏に接近した。同様に外国から中国で仕事をする関係者のうわさでは、より高待遇を受けた例を聞いたという。
バルディング氏は、海外からの専門家が中国国営メディアで中国を礼賛する論調を書いている場合、関心を寄せて欲しいと書いた。「もし中国共産党にひもづく資金を得て、党を擁護する言論を広めているならば、批判されるべき偽善者だ」と不正な収賄を批判した。
中国共産党政府は、世界中の新聞社に多額な資金支援を通じて「中国について良い話を伝える」メディア工作を行っている。英ガーディアンが12月、調査報道で明かした。
同報道によると、共産党は当初、中国国内のみ厳格な言論統制を行っていた。世界的に中国の影響力を拡大させるために、海外メディアが中国共産党の政策や非人道犯罪を追及するのを封じ込める必要性が高まった。このため、高額を支払い広告記事を海外新聞社に掲載し、間接的に言論を封鎖し「中国について良い話を伝える」プロパガンダ工作を講じている。同記事によれば、日本では毎日新聞が中国共産党のプロパガンダ紙660万部を受け入れている。
実際の記事のように織り込まれた宣伝記事について、トランプ大統領も米地方紙の例を挙げて、SNSで問題を告発している。
中国宣伝部が管理する新華社通信、中国中央テレビ(CCTV)と英語放送局CGTNについて、米国司法省は9月、中国政府の宣伝工作機関と認定し「外国代理人」に登録した。
中国共産党政府は、海外に設置した中国官製メディアの宣伝工作が制御されるなか、海外メディアの広告主になることで間接操作し、中国式の社会主義の宣伝を広めている。
(文・佐渡道世)
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