中国当局は人工知能(AI)搭載の「自律型殺人兵器」の研究開発に力を入れている。しかし、その担い手として期待されたのは中国国内で集められた優秀な高校生。香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが7日伝えた。
報道によると、北京理工大学(BIT)が5000人の応募者から18歳未満の高校生31人を選出した。当局は、今後4年間の「インテリジェント兵器システム実験計画」プログラムを通じて、学生らを「世界で最も若いAI兵器科学者」に育て上げるという。
中国国防科学技術工業委員会に直属するBITは、国防技術と兵器の開発機構でもある。
BITの教授は同紙に対して、選抜の条件として学業優秀のほか、「愛国心が必須だ」と述べた。
31人の学生のうち、男子が27人、女子が4人。学生1人に教官2人がついて指導する。一人の教官はアカデミックな兵器科学者、もう一人の教官は国防・軍事分野に詳しい専門家だ。学生らはAIのほかに、機械工学や電気工学などの研究も行うという。
サウスチャイナ・モーニング・ポストは、中国当局は、自己学習能力を備える原子力潜水艦から、人間の血管に入り込むことができるマイクロ・ロボットまで、AI技術の応用に力を入れていると指摘した。
人間が全く介入せず強力な殺傷能力を持つAI兵器は、キラーロボット(殺人ロボット)とも呼ばれる。この開発に関して、倫理的観点や人道上の問題から、そのリスクを懸念する声が少なくない。
今年4月と8月、スイスで開催された非人道的な兵器の使用を禁止する国連の「特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)」では、各国政府関係者が自律型殺人兵器に関する規制の導入を議論した。
中国共産党機関紙・人民日報傘下の環球時報電子版が9月に掲載した評論記事で、「自律型殺人兵器の使用を禁止すべき」と主張した。
そのいっぽうで、中国当局が優秀な人材を自律型殺人兵器の開発に利用している。これに対して、国際社会は中国当局の真の狙いに懸念を抱いている。 同紙によると、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のマックス・テグマーク(Max Tegmark)教授は、中国当局は国連の会議で自律型殺人兵器の規制導入を強調した最初の国であると述べた。教授は、BITが高校生を利用してLAWS(自律型致死兵器システム)を開発しているなら、「恥にほかならない」と批判した。
テグマーク教授が代表を務める非営利組織「Future of Life Institute、FLI)」は今年7月、「AIによる自律的殺人兵器を開発しない」誓約書を発表した。米実業家のイーロン・マスク氏、Google傘下のAI研究開発企業「ディープマインド(Deepmind)」創業者のデミス・ハサビス氏やシェーン・レッグ氏など、世界AI関連企業160社の関係者やAI研究者2400人以上が、同誓約書に署名した。
また、国連大学政策研究センターのサイバー・テクノロジー研究者、エレオノーレ・パウエルズ(Eleonore Pauwels)氏は、教育機関である中国のBITがAIを活用した兵器の開発に注力することを危惧した。
パウエルズ氏は、中国の学生らが開発した新しいAI兵器技術が、既存のバイオテクノロジー、量子コンピューティング、ナノテクノロジー、ロボット工学と併用すれば、「安全性と軍事的覇権争いに重大な影響を与える」と警告した。
(翻訳編集・張哲)