中国政府、サイやトラなど絶滅危惧種の漢方使用を許可 動物保護団体は非難

2018/11/01
更新: 2018/11/01

中国国務院は10月30日、漢方薬の原料になるトラの骨やサイの角を使用することを許可すると発表した。国際的な動物擁護者たちは、絶滅危惧種への保護意識が低く「希少動物への死刑に値する」として強く非難している。

国務院の声明によると「サイの角やトラの骨は、重病および難病の医学研究や臨床治療に需要がある。動物園での繁殖を除く人工繁殖したサイやトラは、適正な病院で資格のある医師により処理される」という。

中国政府は1993年にトラの骨とサイの角を流通・取引することを禁止しているが、このたびの声明は法令を覆した。

サイの角とトラの骨は、中国漢方で薬用効果があるとされている。また、富裕層には長らく装飾品として好まれてきた。

国務院は声明で、サイとトラの製品の違法取引は「厳しい処罰を受け、違法な製品は没収される」と警告している。

この決定の1年前、中国政府は公式に象牙の取引を禁止した。環境保護専門家は中国の絶滅危惧動物保護が前進していると考えていたが、この度の決定に大きく失望させられた模様。

アフリカ野生動物保護財団(AWF)の科学研究代表フィリップ・ムルティ博士は、この中国の新しい規則は、違法製品が法的に販売され、消費者の需要が増加する恐れがあると懸念を示した。

AWFによると、サイの角の密猟により毎年1000頭以上が死亡している。さらに、トラの骨の代替としてライオンの骨の需要が高まっており、ライオンの生態も脅かされているという。

「法的な取引を認めれば、絶滅が危惧されるサイをさらなる危険にさらすことになる。犯罪グループは違法取引を隠ぺいするため、合法製品と違法製品との区別は不可能になる」とムルティ博士は指摘する。

世界自然保護基金(WWF)は声明で、絶滅危惧種を保護するために取引禁止令を維持することが重要だとして、中国政府に対して直ちに禁止措置を再開するよう要請した。

WWF財団の野生動物代表マーガレット・キナード氏は声明で「中国はトラの骨やサイの角の25年間の取引禁止を解除した。これにより、世界規模の(希少動物分野の)取引で壊滅的な結果をもたらすと予想され、ひどく懸念している」と書いた。

国際人道協会(HSI)の野生動物プログラムと政策上級担当・何燕青氏は声明で、今回の取引禁止解除は「野生のサイとトラに対する死刑に値する」と強く非難した。

「残酷な搾取と絶滅から動物たちを守るための継続的な努力に、壊滅的な打撃を与えることになる。中国政府に再考を強く求める」と何燕青氏は主張する。

(編集・佐渡道世)