CVD装置の世界的製造会社であるアイクストロン社(本社ドイツ・ヘルゾゲンラス)の中国投資会社「福建宏芯投資基金(以下FGC)」による買収許可が、先月24日取り消され、再審査となることが発表された。9月初旬、この買収をドイツ経済省は許可していたが、安全保障関連の技術を同社が保有していることが問題視されたという。
アイクストロン社は1983年の創業。LED製造向け成膜装置(MO-CVD装置)の製造に独自の技術を持つものの不振にあえいでいた。昨年12月、二大主要取引先のうちの一社、中国・三安光電の大量受注キャンセルにより経営難に陥る。今年3月に身売りを表明、5月には総額6.7億ユーロ(約762億円)でFGCとの買収に合意した。
FGCの主要株主「廈門博灝投資有限公司」と三安光電は互いに資金を融通し合っている。三安光電と廈門博灝投資有限公司の株式を保有している政府系の投資会社の存在が確認されている。
三安光電の大量キャンセルが今回の買収劇の引き金となっているため、「意図的に身売りに追い込まれたのではないか」「FGC・三安光電などによって仕組まれたものではないのか」―――中国側の動きが不透明であると懸念する声がドイツ国内ではささやかれている。
「正常な投資とは思えない」「裏では中国政府筋の資金が動いているのではないか」と、ドイツの経済アナリストの見解を、9月18日、ニューヨーク・タイムズ紙の中国語ニュースサイトは報じている。 翌25日、計画を撤回することはないとFGCは表明、強気な姿勢を崩してはいない。
近年、先端技術を獲得するため自国資本による海外ハイテク企業の買収を中国政府が後押ししている。2016年1~6月の中国企業による海外M&A(合併・買収)の総額は、「1225億ドル(約12兆6000億円)」となり、海外M&A市場に占める比率は2割を超える。
ドイツは海外買収に比較的寛大であったが、今回の一変した対応は、中国資本への警戒感を強めたものとも思われる。6月末、東芝の白物家電事業が中国・美的集団に売却されたことは記憶に新しい。
(翻訳編集・叶子)
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