中国経済の失速が数百万もの出稼ぎ農民工を直撃している。昨年、中国で発生したストライキや抗議活動の発生数は過去最高に達した。
CNNが報じたところによると、中国国家統計局の最新報告書から、昨年賃金未払いの被害にあった出稼ぎ農民工の人数は270万人以上に達し、この数は全体の約1%に相当することが明らかになった。香港メディア、中国労工通訊によると、同時期にストライキや抗議活動が頻発しており、前年度の約2倍となる2700件以上が発生した。
今年の1月から4月末までに発生したストライキと抗議活動はすでに1000件を超えており、今後さらに増加すると見られている。中国政府は石炭と鉄鋼業界における180万人の雇用計画を削減することを発表している。中国経済の失速に伴い、個人事業主もリストラを行っている。
英語版『中国のストライキ:労働者抵抗の哀史』の編集者、イーライ・フリードマン氏は、ここ数カ月で基本的な流れが明らかになったとしたうえで「経済構造改革の推進に伴い、さらに多くの抗議活動が起こることに疑問の余地はない」と今後を予測している。
同氏はさらに、中国には2億7700万人もの出稼ぎ農民工が存在するにもかかわらず、彼らのことはしばしばなおざりにされていると述べている。「高い教育を受けた都市市民の多くは、出稼ぎ農民工に対する理解が欠如している」
2012年に出版された『中国のストライキ』は、当初中国国内で秘密裏に出版されたもの。世界有数の製造業の集積地として知られる珠江デルタの出稼ぎ農民工にインタビューを重ねて編纂された。
本の中に阿菊という広東省の農民が登場する。彼女は17歳の時に不当に解雇されたことをきっかけに、生まれて初めてストライキに参加し、抗議活動とデモ行進を企画組織した。
阿菊は取材に対し、一番大切なことは団結することだと話している。また抗議活動の中で重要な要素の1つは若い労働者だという。未婚者が多く家族を養う責任を負っていないため、年長者と比べ自らの権利を勝ち取るために積極的に行動できると語っている。
小貝という別の労働者には、深センの工場で大規模なストライキを組織して成功させた経験がある。ストを決行した理由は、工場側が労働者の福利厚生費を削減しようとしたからだった。その時のストが近隣の工場の労働者に大きく影響したため、彼らもまた、自らの待遇改善のために次々と立ち上がるようになった。
「もう少し早くストライキを始めていれば、工場側はとっくに賃上げをしてくれたはずだ」小貝は当時を振り返りこう語った。
フリードマン氏は、中国人労働者、中でも出稼ぎ農民工がストライキや抗議行動に出る理由を理解することは、労使関係を理解するために重要なだけでなく、中国の政治情勢を理解する上でも非常に重要であると述べている。
(翻訳編集・桜井信一/単馨)
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