数十年にわたって続いている中国北部の干ばつは、悪化の一途をたどっている。北京市、天津市などを含む華北地方では、水再生を上回る量の生活用水が消費されている。人口2000万人の北京も、極度の水不足に悩まされ、断水がしばしば発生する。伝えられるところによると、北部地域では数百万人は水の不便を理由 に他地区へ移り住んでいったという。
国際環境団体グリーンピースは今月22日に発表した、世界の環境に関する最新報告書のなかで、水資源の乏しい中国北部では石炭採掘と火力発電の拡大による水資源の枯渇をあらためて警告した。
報告書によると、世界全体で見ても、石炭エネルギーの生産と同時に、水資源が大量に消耗され、多くの地域では水不足問題が深刻になった。とくに中国の北部はもともと水資源が乏しい地域で、増え続ける火力発電所により、水不足の問題が一層深刻であると指摘した。
問題山積にもかかわらず、増える火力発電所
石炭の採鉱・加工・消費には大量の水が使われる。そのため、石炭や火力発電所の多いところでは、水不足が起きている。
報告によると、2013年末までに中国は全世界の45%の火力発電所を占めており、総電容量は358ギガワットに達する。これは多くの水資源を必要とする。そのうち半分は水不足の地域に発電所があり、毎年34億立方メートルの水を使用している。これは、1億8600万人に必要な水量に相当する。全中国の火力発電所では、毎年74億立方メートルの水が使用されており、これは4億600万人に必要な水量に相当する。
グリーンピースの石炭専門家によると、中国は豊富な石炭埋蔵と水資源不足、脆弱な生態システムが重なり合い、多くの問題を引き起こしている。「それにもかかわらず、中国は継続して火力発電所を増やしているので、一刻も早く止めなければならない。」
「ニューヨークタイムズ」の報道によると、過去数カ月の間、グリーンピースは中国政府に対して全ての火力発電所を停止するよう催促していた。北京に位置するグリーンピース東アジア支部の発表によると、中国当局は去年、1000億ドルかけて新たに210基の火力発電所を建設する計画に、環境保護許可書を発行したという。
石炭の燃焼は空気汚染と炭素排出の一番の原因とされている。中国の石炭使用量は全世界の50%を占め、炭素排出量も世界一だ。
中国のエネルギーは豊富な石炭資源をたよっていて、石炭火力依存率は64%におよぶ。米国イェール大学の環境専門家・黄厳忠氏はラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対し「中国の石炭埋蔵量は豊かだが、他の資源は不足しているため、当面は石炭燃料依存が考えられる。政府はいくつか水不足問題の対策をうっているが、複雑な問題を解決しなくてはならない」と述べた。
(翻訳編集・山本アキ/佐渡道世)