人民元円の直接取引を「過大評価するな」

2012/06/12
更新: 2012/06/12

2012年6月1日、人民元と円の直接為替取引が上海と東京で同時に開始した。(ネット写真)

【大紀元日本6月12日】今月1日から、中国の人民元と日本の円を直接交換する為替取引が、東京と上海の外国為替取引市場で同時に開始した。これまで、元と円は米ドルを介して間接交換されてきたため、中国と日本の企業は多額な両替コストを負担しなければならなかった。直接取引によって、年間約30億ドルの両替手数料を省くことができ、日本と中国の貿易関連会社間での決済時に生じる為替レート変動リスクも減軽することができる。

しかし、東京市場では元と円が自由に取引でき、為替レートの値動きに制限されないことに対して、上海市場では毎日、中国人民銀行が発表する基準値から上下3%幅に制限される。

中国国内金融評論家で民間金融シンクタンク「中国金融智庫」研究員の楊国英氏はこのほど、多くの関係者が元円の直接取引によって、中国と日本の企業が多額な為替コストを節約することが可能となることや元の国際化への加速に期待感が急速に強まっていることについて、「元円の直接取引を過大評価しないで」と警告している。6月8日付「中国証券報」が報じた。

元円の直接取引で企業負担が減軽され、中日間貿易拡大が期待できるわけではない

楊氏は近年中国と日本の2国間貿易総額の伸び率が中国の輸出入総額伸び率より低くなっているため、中国輸出入総額に占める中日の2国間貿易総額の割合が年々低下し続けていると指摘し、「元円の直接取引によって、企業が、多額のコスト節約ができると高く評価するのは客観的ではない」との認識示した。

中国社会科学院日本研究所と社会科学文献出版社と全国日本経済学会が5月に共同でまとめた日本経済青書『日本経済および中日経済貿易関係発展報告(2012)』によると、2001年から2011年の11年間において、中国と日本の2国間貿易総額の伸び率は同時期の中国輸出入総額の伸び率より低く、中国とEU、中国と米国、中国と韓国の2国間貿易総額の伸び率と比べると大きな差が付いている。中国輸出入総額に占める中国と日本の2国間貿易総額の割合は1996年の21%から2001年には17.2%、2010年には10.02%、さらに2011年には10%台を割り込んで9.4%に急落した。日本は現在、欧州、米国、東南アジア諸国連合(ASEAN)に続いて、中国の第4貿易相手国となった。同青書は、中国と日本の貿易は現在疲労期、あるいは停滞期に入っていると示し、中国と日本との間で自由貿易協定(FTA)が締結すれば、2国間の貿易拡大がより期待できるとした。しかし、現状では今年、中国、日本、韓国の3国間のFTA交渉開始を目指している日本は遅れをとり、中国と韓国は5月2日、2国間のFTA交渉開始で合意した。

また、三菱自動車中国法人・三菱汽車銷售有限公司の関係者は「南方都市報」(6月4日付)の取材に対し、「元円の直接取引で、以前米ドルを介して元に両替していた時の手数料コストを節約でき、またドルに両替してからさらに元に両替するという手続きを行う時間も短縮できる。しかし、現在元円の取引規模は小さいため、節約できる手数料コスト規模もそれほど大きくない。手数料コストよりも、日本の自動車企業にとって最も重要なのは元円為替レートが今後どのように動くかという事だ。現在自動車企業が最も圧力を感じているのは円高問題だ」と話した。

元円の直接取引で元の国際化を加速させることはできない

楊国英氏はまた、一部の専門家が元円の直接取引は元の国際化を加速させることができるとの観点には無理があると指摘した。「中国経済成長が減速している現在、元の国際化自体はわが国の経済状況を悪化させる可能性がある」と示した。一国の通貨を国際通貨にするには、まず為替レートの自由化、金利の自由化、資本取引の自由化の前提を実現しなければならない。しかし、中国の現状からみると、これらの前提条件を実現させるのは非常に難しい。

楊氏は「いかなる国も自国通貨を国際通貨にする時、巨額な資本の流入または流出に直面しなければならない。しかし、経済成長が失速し、産業構造も歪んでおり、また金融の配分機能が弱まっている現状は、我が国には現在、人民元国際化を加速させる客観的な条件がそろっていないことを示している」との見方を示した。さらに、楊氏は無理に人民元の国際化を加速させると、元の実質為替レートと名目為替レートとの差、また実質金利名目金利との差を狙う巨大国際投機資本が中国に入り、中国の実体経済に大きな悪影響を与えるだろうと警告した。

(翻訳編集・張哲)