【大紀元日本5月7日】世界がその行方を注目する、中国の盲目弁護士・陳光誠氏。米中政府は4日、陳氏が家族とともに米国に留学することを受け入れた。彼が米国大使館に駆け込んでから、事態は急展開を見せ、まさに波乱万丈の一週間。渡米で決着がついたが、米政府を含めてこの出来事で勝利を収めたのは誰なのか、大紀元のコラムニスト周暁輝氏は、陳氏への迫害を主導してきた周永康中央政法委トップだと指摘した。
まず、オバマ政権にとって、陳光誠氏への支援を通して、立国の原則である人権擁護を全世界にアピールすることができた。しかし、中国側の脅迫があったにもかかわらず、陳光誠氏を米国大使館から出したことは、中国の人権活動家の不満を招き、「無責任な行為」だと批判された。その後、陳氏は身の危険を感じ、一転して渡米の意向を示した。米国の主流メディアがそろって「中国政府を甘く見ている」と政府の対応を批判し、オバマ大統領のイメージダウンは避けられない。
陳光誠氏の本意は米政府の支持のもとで、中央政法委のトップとして様々な人権弾圧を行っている周永康氏の責任を追究することだ。米国は、陳光誠氏の意に添うよう、中国の人権問題を根底から改善するという歴史的使命を果たすことができず、一人の人権活動家を援助することに留まったことは極めて残念である。
しかし、米国との交渉を担った胡錦濤国家主席と温家宝総理、習近平国家副主席が率いる中国指導部にとっては、陳光誠氏の渡米は、最大の負けである。これには三つの理由が挙げられる。
一.米中双方が達成した口頭の合意内容は、中国側が陳光誠氏一家を別の都市に移住させ、身の安全を保証することだ。これは指導部が米国に交わした約束で、陳光誠氏への約束でもある。確実に執行すれば、指導部は米国の信頼を得られるほか、中国の多くの有識者たちにも評価されるはず。しかし、陳光誠氏は、米国大使館を出た直後、妻から、二日間椅子に縛られており「(陳氏に)米大使館から出てもらわないと、命がない」と、脅迫されていたことを知った。家族の安全を懸念する陳光誠氏は、渡米したいと方向転換した。事態が二転三転することで、胡・温・習三氏の政治手腕が懸念され、国際社会が彼らの言動の信頼性を疑い始めている。
二.陳光誠氏の渡米を望んでいるのは周永康氏。出国すれば、陳氏が国内では知名度がないという事実や、迫害を主導してきたという責任が追究される心配もなくなる。もし、指導部が周永康氏の責任を追究し、政法委にメスを入れれば、陳氏の当初の「国内にとどまりたい」という意向に沿うことができ、米との約束も守ることになり、すべてを円満に解決できる。
外部からみると、三氏は脆弱な中共政権を維持するため、周永康氏と協議して渡米を許可したことになる。少なくとも周永康サイドの陳光誠氏への脅迫行為は黙認したと思われる。
三.陳光誠氏を出国させることは、胡・温・習三氏にとって、一見目前の「大騒動」を収めたようだが、自身の政治生命には禍根を残した可能性が高い。王立軍と薄熙来事件で窮地に立たされ、陳氏の脱出で絶体絶命になったはずの周永康氏らの巻き返しが成功すれば、三氏にとって非常に不利だ。
陳光誠氏を脅迫し、渡米に追い込んだ周永康氏にとって、現時点では思うとおりの結果を手にした。胡・温・習の三氏の中共政権を延命させようという思いが周氏に見抜かれたことの結果でもある。周氏はこれを機に政局への影響力を再び手にした。こういう意味で、周氏は今回の勝者と言ってよいだろう。
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