「国有銀行の金融独占を打破せよ」 温首相、銀行改革訴える 

2012/04/06
更新: 2012/04/06

【大紀元日本4月6日】中国の温家宝首相は4日、国営ラジオに出演し、国有銀行の金融市場の独占地位を突破し、民間企業の参入を促すべきと、銀行改革を訴えた。また、最高指導部ではこの改革への意見が一致しているとも述べた。

中国では、中国工商銀行、中国建設銀行、中国農業銀行、中国銀行の4大国有銀行が融資業務を独占している。そして中小企業はなかなか融資できないのが実情だ。そのため、これらの企業は民間の高金利の貸金業者に金を工面するしかない。世界的金融危機の中、一部の民間企業は経営難に陥り、高金利の借金を返済できず、経営者の夜逃げ事件が続発し、社会問題化している。

このような状況を改善するため、中国政府は、民間金融機関を発展させる試みとして、浙江省温州地区でにて私営銀行および温州市民に限り、海外の直接投資を認めた。

温首相は2日、福州市を視察した。「温州市で成功したやり方はこれから全国で普及させていく、一部はすでに実行できる」「(国有銀行による金融市場独占の突破は)最高指導部と意見が一致している。温州でまず試してみる」と語った。

温州には約40万社の民間企業があり、中国私有企業の発祥地ともいわれている。しかし、現地の大手国有銀行は国営企業には融資するが、競争リスクの高い民間の中小企業には融資したがらない。

温首相は2日、「率直に、市場を独占する国有銀行は稼ぎすぎである。民間投資をもっと受け入れるべきだ」と述べた。

専門家は、国有銀行による融資業の独占は2つの結果をもたらしていると指摘する。一つは国有銀行に巨額の利益がもたらされることと、一つは中小企業への貸し渋りだという。

中国紙「新京報」は、米国と中国の銀行業に関するデータを比較して伝えている。米国では銀行業に属する機関は8500社以上。中国では300社あまりしかない。さらに、中小企業に融資業務を行う農村部の銀行は十数社しかない。

一方、闇金融が盛んに発展している。ロイター通信によると、中国の闇金融業者の利息は100%に達し、2010年3月末、その市場規模は2.4兆元(約31兆円)と試算された。融資総額の5.6%を占めている。

今年に入り、中国の政治と経済には新たな情勢をみせている。今秋で政権から退く温首相はここ数カ月間、政治と経済改革の重要性を強調している。そして、共産党政権の体制内部の既得利益集団が、自らの権力だけを固守しようとし、首相の改革の努力を潰そうとしていることも示唆した。

ニューヨーク・タイムズ紙は、中国の金融改革を推し進めるには、温首相が十分な政治的影響力を持っているかはまだ判断できないとし、共産党政権は、首相の政策実行力を制限していると伝えた。

首相の銀行改革論は、最高指導部の権力闘争が熾烈化する時期に出されたため、一層関心を集めている。

多くの中国問題の専門家は次のような見方を持っている。「温首相は在任中の最後のこの数ケ月間で、最大の努力を費やして改革を推進し、主要な問題に関しては、対立する相手に宣戦布告するだろう」

 (翻訳編集・叶子)