【大紀元日本12月14日】中国社会科学院が12日に発表した2012年度『産業青書・産業競争力報告』によると、2011年、中国はすでに「上位中所得国」入りしたという。しかし、専門家らは貧富の格差や社会紛争など、これまでの経済成長で蓄積された歪みが噴出し、「中所得国の罠」が中国を待ち受けているとの懸念を示した。
世界銀行の基準では、上位中所得国とは1人当たりの国民総所得(GNI)が2千976ドルから9千205ドル以下の国と地域を指す。中国は2010年の1人当たりのGNIが4千260ドルに達したことから、上位中所得国に仲間入りを果たした。
「購買力平価で換算すると、1人当たりのGNIはとっくに5千ドルを超えている」と著名な経済学者の茅于軾氏は指摘している。
大躍進を遂げた中国の経済だが、「中所得国の罠」が待ち受けていると社会科学院工業経済研究所の張其仔研究員は懸念を示した。
張研究員は中国の産業競争力が徐々に下がっており、構造的に問題があることを指摘し、「中所得国の罠」に脅かされているという危機感を抱いている。そのうえ今年に入ってから、業界の競争力はますます弱まっているという。
「中所得国の罠」とは、1人当たりの国民所得が3千~8千ドル(約24万~64万円)の水準に達すると経済成長が止まり、所得格差が拡大して、社会的紛争が噴出するというものである。世界銀行が2007年にまとめた報告「東アジアのルネサンス」で提唱され、注目された概念だ。
中国は今、まさにこの罠に嵌ろうとしている。これまで安価な労働力や輸出主導で高度成長を成し遂げてきたが、近年の賃金上昇に加え、欧米市場などの重要輸出市場の疲弊で、製造業の生産活動は縮小される一方である。
成長モデルの転換が迫られ、経済のハードランディングに関する憶測が飛び交う中、物価の高騰で市民の不満が高まっている。さらに利権階級の腐敗の横行で「1%の家庭が国富の4割を占有する」と都市部の中でも貧富の差が広がっている。現在、物価の高騰や賃金の引き上げを求めるなど、中国全土で大規模な抗議活動が多発している。
経済学者の茅氏は「中所得国の罠はすべての国が通る道とは限らない」としながらも、「中国の現状から罠に嵌る可能性は大きい」と見解を示した。
同氏によると、中国の大都市は中所得にとどまらず、すでに高所得国の水準に達しているという。中所得国になったが、貧富の差がますます拡大し、対応を誤ると政治不安を引き起こす恐れがあり、「今の中国では、金持ちがますます金持ちになり、貧しい人はますます貧しくなっていく」と茅氏は拡大する一方の格差問題を憂慮している。
中国政府はこのほど、貧困ラインを引き上げ、貧困人口は総人口の10%を占める1億2800万人に増加した。
青書は「中国経済は『中所得国の罠』に陥っており、危機脱出の鍵は経済発展戦略の転換を実現させることである」と指摘した。
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