【大紀元日本8月27日】アメリカの黒人公民権運動の指導者、故マーチン・ルーサー・キング牧師の像が、米国首都ワシントンの新しい記念碑として立てられた。国立公園内の高さ約9メートルもの巨大なキング牧師の像は22日、一般公開され、すでにその姿が確認できる。しかし、このアメリカの英雄としてたたえられる人物の彫刻像は、中国政府の資金援助を受けた、中国人彫刻家を主任とした「メイドインチャイナ」であることに、米国民は複雑な想いを抱いている。
米紙ワシントン・ポストによると、キング牧師像の姿を見た人々は記念写真を撮るなどし、ある観光客は感涙していたという。またある市民は記念碑の公開を祝って野外パーティを開いた。当時のキング牧師の姿を覚えているというワシントン市民のポーレット・デイビスさんは、「予想以上に美しくて、見事な像です」と感激を隠せない様子だった。
この偉大な米国の英雄像を作成したのは、中国政府公認「国家一級美術師」の称号を持つ中国人彫刻家・雷宜鋅(レイ・イシン)氏である。
2007年、米国議会公認のキング牧師財団から、アメリカ人ではない、中国人が彫刻主任を担当することが発表された。同時に、プロジェクトに中国から多くの資源が提供され、建築現場も中国であることが公にされると、アメリカがもつ中国に対する核心的な問題意識を煽ることになった。
ナショナリズムと人種意識、経済急成長中の中国からの巨額の資金提供は、アメリカ国民に不安を感じさせた。
費用は1億ドルとされるキング牧師像建設プロジェクト。雷氏が係わることにより、中国政府から2500万ドルの寄付が送られることも明らかにされると、キング牧師財団の元アドバイザーは同財団に抗議した。また、雷氏の初期作品には毛沢東像があることも非難の一要因となった。
これまでに7つのキング像を作成してきた、アフリカ系アメリカ人の彫刻家エド・ホワイト氏は、雷氏が作成した模型像を見て、「縮こまってしぼんだ、無力な人物のようだ」と酷評したという。
仕事のない米国人 名誉を持ち帰る中国人
完成したキング牧師像は、高さ9メートル、重さ10トン。設計にはアフリカ系アメリカ人の彫刻専門家と大学などが協力しているが、像は中国産の花崗岩で出来ており、中国での製作作業は主に中国人作業員により行われた。完成後、159のパーツに分解され、米国ワシントンに運ばれた。そして1カ月かけて、中国人作業員により組み立てられた。
アメリカの英雄の像が中国に委託されたことについて、財団側は「このスケールの作品を手がける知識と環境はアメリカにはもうない」と説明した。また雷氏を彫刻主任に起用したことについて、「米バスケットボールで活躍するヤオ・ミン、ハリウッド映画の中のジャッキー・チェンと同じ」とし、プロジェクト参加者はアフリカ系アメリカ人に偏らず、多様性を重んじている、とした。
しかし米政治紙「ポリティコ」の主筆、ロジャー・サイモン氏は、アメリカで適当な主任彫刻家を見つけなかったことなどについて、財団を強く非難した。「アメリカの建設現場の労働者の多くは失業中であるなか、本当にプロジェクトを中国に委託する必要があったのか」とサイモン氏は指摘した。
サイモン氏の調査によると、ワシントンでの組み立て作業のために来た中国人作業員たちの1カ月の食住は、すべて無料で賄われ、作業に専念できる環境が整えられたという。
ワシントンに来た湖南省にある彫刻の関連会社に勤める一人の作業員へのインタビューによると、作業員たちは誰も、キング牧師像のプロジェクトの報酬を知らないという。そして、報酬は中国へ戻った後に作業員へ渡されることになっている。それでもなぜこのプロジェクトに参加したのか、との同紙の問いに、作業員は「中国に栄光を持ち帰ることで、愛国心と中国人としての誇りを感じる」と答えた。
そして、アメリカ人がこの仕事を欲していることを知っており、彼らが仕事を奪った中国人に対して憤りを感じていることも知っているという。
しかしながら、キング牧師の息子であるマーチン・ルーサー・キング三世は、雷氏の彫像を見た感想を、米紙USAトゥディに対して次のように答えた。
「わたしは父の彫像を50ほど見てきたが、うち47は良いと思わなかった。しかしこのアーティストのものは、良くできている」
キング牧師像が一般公開された22日、雷氏は、自身の息子を通訳にして、満足した様子で作品への想いを語った。「これは私の最も重要なプロジェクト」と雷氏は中国語で話した。そしてキング氏の顔が前を向いて腕を組んでいる堂々とした様子に、人々は注目して欲しいと付け加えた。
今月28日、オバマ大統領を招いて、正式なキング牧師像の公開式典が開かれる。その日は、ワシントンにあるリンカーン記念館の階段上で、キング牧師が公民権運動に大きな影響を与えた演説「I Have a Dream」を行った記念日である。
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