【大紀元日本7月22日】「世界の工場」となって久しい中国だが、「プラダ」「グッチ」などの世界一流のブランド製品の9割近くの生産を担っていることはあまり知られていない。そもそもこの事実は中国人自身が認知していないことでもある。国内でも「悪質」のレッテルが貼られている「メイドインチャイナ」が、ブランド物のタグに表示されている事に、中国人消費者が驚かされることは多々ある。
一方、中国国内のカバンメーカーは、「なぜ中国国内の一流ブランドがないのか」といぶかしがっている。そんな中で、北京の経済紙・経済観察報は、プラダに対抗する世界ブランドを作ろうと試みる国内メーカーの動きを伝えている。
「この商品は、メイドイン『どこ』ですか?」。中国人向けの高級ブランド商品のネット通販サイトを運営する孫亜菲さんは、しばしば客から寄せられるこの質問に戸惑わせられている。
孫さんが取り扱う商品の中には、オーストリアを代表するクリスタル装飾のブランド「スワロフスキー」があるが、現在、同国で製造されるているものは極めて希少で、99%は中国を含むアジア圏で作られている。「スワロフスキーが『中国産』だなんて」と、顧客からクレームが付き、返品されることも少なくない。
高級ブランドの出身国と生産国との違いは、消費者にとって、特に中国人にとっては、評判が悪く、問題視されている。
1980年代中期には、多くの国際的に著名なブランドが中国沿岸地域に生産拠点を置き始めた。現在では、整った生産ラインが、浙江や江蘇、広東などの経済特区に置かれている。イタリアのトップブランド「プラダ」も例外ではなく工場を設置している。
中国人にとって憧れのブランドである「プラダ」のメインデザイナー、ミウッチャ・プラダ氏は、同社製品がメイドインチャイナであることを特に弁解していない。「非常に厳しい製品基準を要求するプラダでさえ『中国産』の技術を認めているのに、なぜ中国にはプラダのような一流ブランドがないのだろうか」と、孫さんは疑問を抱いていた。
「メイドインチャイナ」を中国人が作り直す
孫さんは、国際的供給力、製造工程、設備、配達力、価格力などの条件を満たす国内の工場環境を訪れて回った。メイドインチャイナで高い質を誇れるブランドを、自分自身の手で作るためだ。
福建省厦門市の工場では、工員100人ほどの従業員がおり、アルマーニを含む20種以上の有名ブランド製品を製造していた。この工場では、ちり対策として全員がマスクと手袋をつけていた。パターン起こし、裁断、金具の鋳造にいたる最終段階までがその工場で行われており、操作管理室で全工程をチェックできる設備が整っていた。
他のいくつかの工場では、工員自身が製品をデザインしていた。「メイドインイタリア」の技術を研究するため、イタリアへ足を運んだ孫さん曰く、「中国国内の工場の技術レベルは十分、自身の力で国際競争できる基準にある」という。
実際に何度かイタリアの皮製品の工房を訪ねた際、孫さんが最も感銘を受けたのは、一つの製品が完成するまでに係わる技術者の少なさだ。「グッチ」のようなトップブランドでさえ、たいていの工房は3~5人で運営されていた。次に、多くの工房の製品は、手ではなく機械で縫製されていたことだ。均一で美しい縫い目を作るのために機械を使う、と工房のスタッフは答えたと言う。
中国国内工場の技術力の高さ
広東靴革製品産業協会の楊叶林副会長も、広東省沿岸部は良質なハンドメイド製品の製造が可能な環境が揃っていると自負している。
アメリカの高級ブランド「コーチ」の85%は、中国で製造されている。同社の国際リテール部門長ビクター・ルイス氏によると、ハンドバッグは他の商品と異なり、一部の製作工程に必ずハンドメイドが要求される。それは中国でだけでなくイタリア、フランスで作る際も同じだという。コーチのどの製品にも、「このバッグは、最高の職人により中国で作られました」と書かれたタグが付いている。
イタリアのある有名バッグブランドは1950年代から、中国浙江省に生産工場を建て、低賃金の中国人労働者に製品を作らせていた。あるいはイタリア国内にある工場で、低賃金の中国人を雇っていた。他にも多くのイタリアのメーカーや工房が、中国の工場へ生産を委託していた。
この事実に気づいた孫さんは、「メイドインイタリア」でなく、正しくは「中国人の手によるメイドインイタリア」と付け加えるべきだと苦笑いする。
欧州ブランドに対抗できる実力
国際的な西欧ブランドと中国ブランドの違いは、主に東西文化および歴史的響きの違いにある、と楊叶林副会長は考えている。欧州の有名ブランドはしばしば100年以上の歴史があり、文化的価値が高いのに対して、中国のブランドは非常に若い。「欧州ブランドの文化・歴史というソフトパワーはさておき、中国の技術・品質レベルは国際的基準と少しの差もない」と楊氏は話す。
中国の中堅カバンメーカー「新秀皮具有限公司」の施紀鴻社長は、世界の有名ブランドバッグの少なくとも95%は現在、中国で生産されていると推測する。同社の研究開発部門の従業員は全体の約1割に達しており、以前は想像できなかったことだという。
2001年、新秀とアメリカのカバンメーカー「サムソナイト」との業務提携の際、新秀の施紀鴻社長は30台のミシンで一流企業の求める供給量に対応しなければならなかった。しかし、国際的なブランドとの提携体験は、新秀の成長を助けることになった。かつてサムソナイトのOEM(製造委託)契約上の企業であった新秀は、同社のライバルになることを目標に掲げる企業へと成長した。
楊叶林副会長は、「世界の工場」としての地位を確立させながらも、その供給を賄う市場と購買力が中国にはある、と豪語する。
迫られる悪評の払拭
にもかかわらず、中国はあまりにも外国市場に依存し過ぎている、と施紀鴻社長は感じている。「国際市場がくしゃみをすれば、私たちも風邪を引く。どこの国の市場が『腹を空かしている』のか、常に気にしていなければならない」という。また、輸出指向のビジネスは3~5%と利益率が低いと指摘する。
浙江省嘉興市平湖カバン協会会長も務める施社長は、すべての中国国内の上流下流セクターの企業を集積して、「中国カバン産業」全体で販売促進できないか、という理想を描いている。そして、最終目標はプラダに対抗する「メイドインチャイナ」ブランドを完成させること。遠くない将来、中国のバッグ市場で、世界トップクラスの中国高級ブランドが誕生すると、施社長は確信をもって述べる。
しかし、中国ブランドは他の国際的ライバルが持たない問題をまず解決しなければならない。それは中国自身が「メイドインチャイナ」の悪評イメージを払拭することだ。
実は、中国人の心に根強く残る「西洋文化、先進国への憧憬」が、メイドインチャイナを蔑視させている。
上海に進出した世界的有名ブランド「アルマーニ」の第一号店オープンの初日、ある男性が2つのTシャツを握り締め、どっちが本物だと怒鳴りながら店員に聞いてきた。一つは、この店に置かれていた高価な「メイドインチャイナ」のTシャツ、もう一つは、この男性がどこかで買った安価な「メイドインイタリー」のTシャツだった。本物は言うまでもなく、アルマーニの店に置かれていたメイドインチャイナのTシャツだ。
中国国内では、メイドインチャイナ(中国製)が事実であるにも係わらず、そのタグをつけることに中国人でさえ劣等感を抱いている。中国問題専門家・何清漣氏の分析によると、2007年度の中国品質監督検験検疫局のデータでは、3割の中国製製品は安全性に問題があり、品質不合格になっていたという。
日本でカメラを購入した中国人留学生は、「せっかく日本でカメラを買ったのに、よく見たらメイドインチャイナだった」と落胆した様子を自身のブログに綴っている。
「プラダに対抗する『メイドインチャイナ』ブランドの完成」の前に、「国内イメージの払拭」という課題を克服しなければならない。言うは易し行うは難し。
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