【大紀元日本5月28日】広州市の上下九・歩行者天国には工場の在庫などを処理する店舗が多く集まる。最近、入り口のワゴンに「3~9元/枚(約40~110円)」の洋服が山積みされる店舗や、「セール最終日」のうたい文句で連日激安セールを行っている店舗が増えている。その中でもひと際目立つのは「どれでも1枚1元(12.5円)」と書かれた子供服を販売する店舗だ。店のオーナーは、「最近は工場の在庫処理をたくさん頼まれる。売り切れないほどだ」と話す。
広州日報が取材したここ上下九・歩行者天国は、アパレル製造業の「晴雨計」だと言われる。工場の閉鎖が増えると在庫処理を急ぐケースも多くなり、「1元洋服」が市場に出回るようになる。上下九で「1元洋服」が出現したのは、2008年世界金融危機以来のことだという。「10数元以下の洋服はみなコストを下回る値段だ。2008年の時は、輸出先の問題で多くの商品が輸出できず国内販売に回されたが、今回は過剰生産による在庫や工場倒産による在庫の処理がほとんどだ」と広州アパレル業会の黄学明・副会長は語った。
アパレル製造業「注文が来ない」
珠江デルタ東北部に位置する新塘は世界的な「ジーンズの都」として、中国人がはくジーンズの6割以上、60もの海外ブランドを作り出している。しかし最近、新塘では多くの小規模の縫製工場が倒産し、大規模工場の受注も大幅に減っているという。
「迪泰紡績」は新塘に数多くある縫製工場の1つである。広州日報の取材によると、同工場は7つの縫製チームがあるものの、現在操業しているチームは3つに止まり、この3つのチームも今の生産が終われば新規受注がないという状況。多くの従業員は自宅待機しており、工場長の湛家和さんは、「今年は金融危機の時よりも状況が厳しい」と明かしている。
500人以上の従業員を抱える、子ども用ジーンズを生産する別の工場も3月から受注が減り、月22~25万枚の出荷量から今の10万枚弱になっている。この工場が請負う注文の3分の2はヨーロッパからのものだという。
現地の工場関係者は、稼働中の工場は電気が付いており、付いていない所は生産停止だと紹介した。広州日報の記者は「新塘の街に並ぶ多くの縫製工場は、大部分は電気が付いていない」と記した。
生産コストが急上昇
今年3月に開かれた中国国際服装服飾博覧会で、「生産コストの上昇」が参加企業の間で一番の関心事となっている。2010年には綿花価格が50%上昇し、工賃水準も15%上がった。1枚の洋服を生産するコストが1年間で平均2割上昇し、靴の生産コストにいたっては3~4割上がっている。
生産コストの上昇が受注価格の上昇につながり、その結果、国外からの注文は中国を避け、ベトナムなど生産コストの低い東南アジアの国へ流れる傾向が出ている。靴業界では、高級靴を多く生産する広東省では昨年10月から、受注が3割減っており、安価な靴を生産する福建省晋江はさらに状況が深刻で、金融危機の時よりも多くの工場が倒産しているという。
アパレル業界のみならず、中国の製造業の全体的な景気状況を表す購買担当者指数(PMI)が低下している。昨年11月から下がり続けたPMIは3月でいったん回復をみせた後、4月でまた低下に転じ、3月の53.4から52.9に下がった。うち、新規受注、輸入、輸出向け新規受注、購買価格の4つの指標は、下げ幅が1ポイント以上に達し、第2四半期の経済成長の不安要素となっている。特に新規受注について、通常3月、4月は増える時期だが、今年の4月は1カ月前の55.2から53.8と大幅に下がっている。
アメリカが製造業の王者に復活か
ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が最近発表した研究によると、中国の労働力コストの上昇や人民元値上げ、さらに、エネルギー・原材料・不動産価格や輸送コストの上昇で、今まで優勢となっていた低コストの時代が終焉を迎えている。製造業の一部を中国にアウトソースしてきたアメリカは、今後自国に生産現場を回帰させ、5年以内でアメリカが再び製造業の王者の座に復帰する、と分析している。
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