【大紀元日本11月24日】中国で汚染からまぬがれていた唯一の大河だといわれている漢江(かんこう)が枯渇の危機に瀕している。
長江、黄河という2大水系を繋ぐ漢江は、長江の最大支流で全長1,532キロにのぼる。中国内陸を走り、流域では秦隴、巴蜀、中原、荊楚といった多元文化が形成された長江最大の支流である。
2002年、中国政府は南方地域の水を北方地域に送り華北の水不足を解消するための南水北調プロジェクトを決定した。南水北調プロジェクトの推進計画では、今年漢江から95億立法メートルの水が1000キロ余り離れた北京、天津、河北、河南の121県市に供給される。そのほか、いわゆる「引漢済渭(漢江から水を引き渭河を助ける)」プロジェクトは、本年末から着工される予定だ。
「渇き」の深刻な華北地区では、地下水の過剰採取が手に負えない状態に陥っている。また、秦嶺以北の関中平原や陝北地区における水不足による危機状況は、華北平原とほとんど変わりなく、両地の唯一の頼みの綱の渭河も、近年、幾度もの断流だけでなく汚染も深刻。西安市でも大量の地下水を過剰採取している状態だ。これを解消するために漢江の水資源を大量に北に調達する。
「南水北調」と「引漢済渭」― この2大水利プロジェクトのために、漢江の丹江口より上域が、他地域に「輸血」する量は、2030年までにおよそ150億立方メートルにのぼると推定される。これは漢江の上流水資源総量の40%近くに相当する。また、上流や支流ではダムや水力発電所の開発が密集しているため、強健だった漢江は寸断され枯渇の危機に瀕している。
*漢江北上の背後にある巨大な代償
湖北省襄樊市に委託されている華中科技大学環境工程学院の専門家が行った調査によると、漢江にある丹江口ダムが水利プロジェクトが開始されると、襄樊市の水利企業と施設の半数以上が取水困難、あるいは使用不能となることが予測される。70万畝(およそ467万ヘクタール)の土地が破損し、現地の魚類も3分の1に減少する。この他にも上流からの流水減少、ダムからの水流の緩やかな放水のため河川の自己清浄能力低下を招き、漢江の水質はレベルが1つ下がる可能性もあるという。
漢江上流にある陝西省漢中市のある職員によると、陝南は全国でも有数の鉱物資源が豊富に集まる地区で、川沿いには1000社以上の鉱物企業が立ち並んでいる。しかし南水北調中線プロジェクトが始動したことにより、環境基準が高くなり、多くの企業が閉鎖に追い込まれた。中線の水源地では数十社の製紙工場が強制的に閉鎖され、数百万ヘクタールの原料となる龍須草が畑で腐り、農民は栽培構造を変えざるを得なくなった。
さらに、南水北調の中線プロジェクトにより発生する移民も大きな問題のひとつ。1958年から1967年の間、丹江口ダム区の各県市では合わせて48万人を転居させた。2005年、南水北調の実施のために丹江口ダムの高さを上げるため、さらに33万人が転居を強いられた。このうち23万人は外省へ移動。多大な苦しみと犠牲を払っている。
また、十堰市の南水北調プロジェクト指導グループは、中線の水源を保護するため、同市の117社の汚染企業を閉鎖し、20以上もの投資プロジェクトを拒絶したと伝えている。
*寸断された河川
漢江の河川としての自然属性はほぼ消耗し切れている。陝西西南部から発し、漢口市から長江へ流れ込む漢江は、ダムや水力発電所にその流れを寸断され、人造湖のような姿に変わってしまった。漢江流域県市の水利プロジェクトの初歩統計をみると、各支流を含む漢江流域に建設されたダムが数千か所に及ぶことがわかる。
将来の漢江は、上流の黄金峡から中流の興隆までの1000キロの区間が人工的に仕切られ、15の大型ダムに変わる。これらのダムの間隔は100キロもなく、襄樊市内だけでも4か所、ダム同士の距離は50キロもない。
900カ所以上の小型水力発電所、漢江支流の溝渠化、湖泊化、その環境容量の脆弱化により、多くの生態問題がもたらされる。支流の問題は最終的に漢江主流に流れ込む、とある専門家は警告している。
*南水北調は毛沢東の「借」の字から始まった
漢江に「無償の献血」をさせる南水北調プロジェクトは、実は毛沢東の「借」という字から始まっている。1952年10月、当時の黄河水利委員会トップの業務報告を聞いただけで、毛沢東は「南方は水が多く、北方は水が少ない」と断言し、「可能なら水を借りてきてもよい」と指示した。
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