【大紀元日本9月23日】ある晩20代の女性が母親と北京の自宅でテレビのニュースを見ていた。内容は、中国共産党衛生部のスポークスマンが有害粉ミルクにより女の乳児に性早熟が引き起されたことを否認し、政府の行った実験により粉ミルクの安全性を信用させようとするものだった。
母親はニュースを見た後、「これで本当にほっとしたわね」と話したが、娘は全く逆の態度を示し、「政府が安全だと発言するのは、実はその粉ミルクは危険だという証明なんだよ」と言ったという。
この親子のやりとりは米紙クリスチャン・サイエンス・モニターで報じられたものである。同記事によると、北京天則経済研究所(Unirule Institute of Economics)の最新調査を引用し、25歳以下の中国人は政府への懐疑を示しており、不信感は上の年齢層よりも高いことが明らかとなった。
一方、過去10年間に学者が行った調査によると、少なくとも7割の人が中共政府を信用していたという。学者たちはこれらの現象が、中国人が権力に服従する歴史に帰結する、もしくは、一党専制政治の宣伝による結果と考えている。
ところが、現在その信頼を獲得することはますます難しくなっており、若者や最富裕層、都市住民や教育レベルの高い人々の間で不信感が深く浸透しているという。シンガポール国立大学の東アジア研究所アナリストのシャン・ウェイ(単偉)氏は、これらは将来、社会の主流になる人々で、彼らの不信感によって、今後ますます中共政府が困難な挑戦に直面するようになるだろうと指摘している。
不信感の浸透を生み出した要因として、インターネットの普及が挙げられると専門家は分析する。そして、「インターネットの使用が少ない人ほど、政府への監督が必要だという事実を認識していない」と天則経済研究所のソン・ホウザ(宋厚澤)研究員は指摘する。
先月、北朝鮮の戦闘機のパイロットが北朝鮮から逃避し、中国の遼寧省瀋陽市付近に墜落し、数時間後には機体の残骸の写真がネット上に流れた。尾翼部分の北朝鮮軍マークがはっきりと映っているにもかかわらず、中国政府メディアは2日後、この航空機を出所不明と伝えている。
ネット世代はインターネットから多くの情報を得ることで、政府に対する不信感が高まっていると、同記事は分析している。
中国政府が公表したデータによると、中国のインターネット使用者数はすでに5年前の1.03億人から現在の4.2億人に急増し、30歳以下の人が占める割合が60%になっている。彼らの大部分が中国経済の繁栄は当然のことだと受け止めているのに対し、彼らの親の世代は政府のおかげだと感謝しているという。
英ノッティンガム大学中国政策研究所の研究員であるワン・ジェンシュウ(王正緒)氏は、05年に行った中国の「批判的な公民」に関する研究の中で、「一旦、社会経済が一定の高さにまで発展すると、往々にして公民の政治権利と自由を求める声が急速に高まるものだ」と指摘している。
また、この傾向は人々の価値観の変化を引き起こし、これにより政府に対する不信感を生じさせる。現在この兆候が、中国で日増しに現れてきていると同氏は述べた。
大部分の中国人の中共に対する信任は、政府が経済方面においてあげた成績に基づいているようなものである。しかし、中国がこの先10年、年10%の経済成長のスピードを維持できるかどうかといえば、ほぼ不可能であると言えるだろう。
人々の期待が増すにつれ、一連の問題が引き起こされる。北京経済体制改革研究所(Economic System Reform Institute)の研究によると、08年は収入に対する不満がかつてないほど高まった。このような状況が前回現れたのは1989年5月、まさに天安門事件の前夜である。
米アイダホ州立大学政治学のタン・ウェイファン(唐偉方)教授は、問題は地方で発生しており、各地の地方政府に対する民衆の抗議は非常に突出していると指摘している。
以前、唐教授が『アジアの政治と政策(Asian Politics and Policy)』誌に掲載した文章の中で、中共政府が伝統的価値観と宣伝に頼って大衆の信任を得ることは可能だと述べている。だが一方で、信任を維持する最も有効な方法は、功績を改善し続けることだと同教授は提案する。
教授はまた、政府が職責を軽んじたり、経済発展が緩慢になると、中国社会の雰囲気がたちまち「高度な緊迫状態」に陥り、怒り・衝突・不安が充満すると指摘した。いかなるミスも問題を悪化させ、大衆の北京当局に対する対抗を引き起こすと唐教授は警告している。