【大紀元日本9月22日】「中国が示す円資産への強い関心に、日本は不安を覚えている」 ー 日本の政府関係者は、日本国債を大量に購入する中国の動機に疑問を呈し、中国側と直接議論する意向を示した。また、米国の為替専門家は、中国による日本国債購入の拡大は、実質上、日本政府に貨幣戦争を仕掛けているなどとの認識を示している。米国VOAが報じた。
今年に入ってから、中国は円資産への関心を急激に高め、数ヶ月連続で日本国債(JGB)を大量に購入した。6月の1カ月間で、中国当局による日本国債の買越額は4564億円に達し、1~6月までの買越総額は1兆7300億円に上った。過去5年の合計に相当する。7月に入ってから、購入の勢いはますます強くなり、9月8日、財務省が発表した国際収支統計によると、中国による日本国債の7月の買越額は5831億円で、1~7月までの累計買越総額は2兆3157億円に跳ね上ったという。
一部では、中国が日本国債を大量購入するのは、外貨準備の多様化を図るためとの見方もある。米国側が公表したデータによれば、中国の円資産の増加に伴い、ドル資産の残高は明らかに減少している。
一部の専門家は、中国が保有する米ドル、あるいは人民元を売って、日本国債を買ったことで、円高を加速させたと見解しているが、米ウェルズ・ファーゴ銀行シニア・アナリストのヴァシリー・セレブリアコフ(Vassili Serebriakov)氏は、今回の円高の最大要因は米国と欧州であると指摘する。「米国経済の不振と欧州の債務危機が、為替市場でのリスク回避の動きを強めているため、リスクの比較的低い日本円に大量の投資資金が流れ、円高をもたらした」と分析し、また、「日本債券市場の規模は非常に大きいため、中国が毎月数十億ドル購入しても、円高への影響は限られている」という見方を示している。
しかし、米国ジョージ・メイスン大学の日本経済専門家ヒルトン・ルート(Hilton Root)教授は、「中国政府の(日本国債購入拡大の)目的は、円高を加速させることだとし、「(円高・元安で)日本はより多くの中国製品を購入するし、日本から米国への輸出も抑制される。また、円高となれば日本製品が高値になり、米国や世界他国の日本製品に対する需要が減るからだ(中略)」という異なる見解を示している。
ルート教授は中国政府のこの手法を重商主義に基く貨幣戦争と称し、中国政府が円高を加速させることは、自己に利益をもたらすと同時に日本に害を加えており、極めて「ずる賢い策」と指摘する。「現時点において、中国が購入する日本国債の絶対量はそれほど多くはないが、これは序幕に過ぎない。中国政府が外貨準備の構造を調整し、ドル資産を減らして円資産を本腰を入れて増やすことになれば、中国による日本国債市場への影響は軽視できない」と述べた。
一方、日本政府は中国による日本国債購入の急増に対して警戒感を示し始めている。野田佳彦財務相は9月9日、中国当局による日本国債購入について「動向を見守っている。本当の意図は分からない」と述べた。また同日の参院財政金融委員会で、野田財務相は、中国政府は日本国債を買えるが、日本の外貨準備では中国国債を買えないのは不自然だと指摘し、中国政府に日本国債の大量購入に関する説明を求める考えを示し、「当局間で改善に向けて話し合う余地がある」とも話した。
円高の進行のため、日本輸出産業の業績が低迷し、企業の国内への投資意欲が後退し、雇用情勢の悪化や産業空洞化への懸念が高まっている。9月15日、日本政府は円高の進行阻止を狙って、東京外国為替市場およびロンドンとニューヨーク市場で、電撃的にドル買い・円売りの単独為替介入を実施。円相場は14日の1ドル=82円台後半から1ドル=85円台にと下落した。この影響で、中国の人民元を含むアジア各国の通貨は上昇した。16日、中国人民銀行(中央銀行)は人民元の基準値について、前日比約0.1%元高の1ドル=6.7181元と発表した。米国会からの圧力もあり、日本が為替介入を実施後、元は2005年7月の切り上げ以来、連日最高値を更新している。21日現在で元の基準値は1ドル=6.6997元となっている。
また、菅直人首相や野田財務相は単独為替介入を実施した後、それぞれ「今後も必要な時に断固たる措置をとる」と、状況に応じて為替介入を継続する姿勢を示した。日本政府による為替介入が長期化すると、中国の元切り上げのプレッシャーが一段と増すことになり、中国の輸出に打撃を与える。このような状況を避けたい中国も何らかの対策を講じると予測されるため、中国と日本の間で勃発したこの「貨幣戦争」がしばらく続きそうだ。
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