評論:尖閣諸島での接触事件 うやむやのうちに終了か

2010/09/14
更新: 2010/09/14

【大紀元日本9月14日】9月7日、日中両国がお互いに領有権を主張している尖閣諸島(中国名・釣魚島)海域で、日本の海上保安庁の巡視船と中国の漁船との接触事件が起きた。中国の報道によれば、中国漁船が中国の領海で操業している際に日本側から不法に拘留されたというが、日本では、中国の漁船が日本の領海に侵入して操業し、海保巡視船からの警告に従わなかったばかりでなく、2隻の巡視船に衝突したため、関連の法律に則って船長を逮捕したとされている。

事件当日、中国外務省報道官・姜瑜氏は記者会見で「深刻な懸念を抱いている」との中国政府の立場を示し、尖閣諸島の領有権をふたたび強調した。その後、中国の反応が次第にエスカレートしていった。日本は「荒唐無稽」「不法」などといった外交辞令を述べつつ、4回も駐北京日本大使を呼んで厳重抗議し、逮捕された船長を無条件に釈放するよう要求した。

一方、日本側は、反応や表現は穏やかながら、強い態度を見せている。日本外務省アジア太平洋局審議官・北野充氏も、事件当日、駐日本中国公使を呼んで、尖閣諸島の領有権を強調した。不法に日本の領海に侵入して漁を行った中国漁船を取り調べるのは、日本の法律に則って行ったことであるとし、本事件の発生について遺憾の意を伝えたという。菅首相も、尖閣諸島は日本の領土であるため、日本がこの事件に対処するのは基本的な原則だとしている。そして仙谷内閣官房長官は国内に冷静を保つよう呼びかけながら、日本の法律に従って厳正に事件に対応すると強調している。

日中両国の政局からすれば、双方とも事態の悪化を望まないはずである。しかし中国側は強い姿勢を示さなければならない。なぜなら、国内からの政治的圧力に応えなければならないからである。市場経済の衝撃を受けて、共産主義イデオロギーが国民から切り捨てられてからは、中共は体制維持のために政治的合法性を必要不可欠としている。時には民族主義などによって、西側からの普遍的価値観の影響を防御しなければならない。

隣国との領土問題は、中共にとって迂回する余地がないのである。もし領土問題で体制が弱まれば、政治的合法性を飾り立てるわずかなものさえ失われることになる。そうなれば、国民の不満が噴出するばかりでなく、党内闘争の導火線にもなりかねない。

とはいえ、中共にとって目下、軍事行動を通じて尖閣諸島の制御権を手にする実力はまだない。したがって中国側が提出した実質的な要求は、拘留された船員と漁船を釈放してほしいというレベルに留まった。この意味では、強腰の中共にしてはかなり控えめな要求だったと言っていい。

日本側の対応は、中国に比べわりに穏やかであるものの、それには相応の理由があるようだ。まず中国は、日本の輸出国として最大の市場であるため、領土問題によって市場を失うのは無論望ましくない。現在、中国と台湾が尖閣諸島の領有権を主張しているが、日本は尖閣諸島の制御権を持っている。日本の政治・軍事の最重要同盟国である米国も、日本が尖閣諸島を領有することに沈黙し、支持している。したがって、日本にとっては、領土の占有者であるという姿勢でもって、起きたトラブルに落ち着いて対応するのが、低コストながら最大の利益を得ることができるベストの選択なのである。

過去の事例を見れば、当該海域に侵入した外国の漁船に対し、日本はいずれも先ず拘留し、その後に釈放するという方式をとっている。これに基づいて推測すれば、今回も所要の法的なプロセスを済ませたのち中国の船長を釈放するだろう。そうすれば、中共を刺激し過ぎることなく、尖閣諸島への制御権を維持することもできるからである。

(翻訳編集・小林)