【大紀元日本8月4日】人民元の国際化を図る一環として、香港での人民元建て業務の拡大をねらい、中国人民銀行の胡暁煉・副総裁は7月19日、中国銀行(香港)と新たな「人民元業務の決済協定」に署名。さらに、香港金融管理局(NKMA、中央銀行)と人民元建て貿易決済の拡大に関する「補充協力覚書」を締結した。国営通信社が報じた。
「人民元業務の決済協定」によると、個人顧客および指定法人顧客の人民元業務に関して、同一銀行内の違う口座間での人民元建て資金の移転、または違う銀行間での人民元建て資金の移転が可能となった。また、あらゆる企業あるいは他の非個人顧客の人民元建て口座の開設が自由となり、両替に関しては上限の枠がはずされた。これまでは、人民元建て口座の開設は個人に限られ、企業は貿易決済用以外の口座開設は許されていなかった。
香港金融管理局の陳徳霖・総裁は、「人民元業務の決済協定」の締結によって、他の金融機関が香港の銀行で人民元口座の開設および各人民元関連金融サービスの提供に対する制限がなくなり、今年下半期から預金や債券以外の人民元運用金融商品が増えるだろうと述べた。
香港メディアの報道によると、同「協定」の締結を受けて、各銀行が相次ぎ人民元関連金融商品の企画を打ち出している。スタンダードチャータード銀行は個人および法人顧客を対象に、利息または分配金が人民元で支払われる株価指数や外貨運用などの金融商品を導入した。中国銀行(香港)傘下の中銀人寿や中国人寿などの保険会社はすでに人民元建ての貯蓄型保険商品の販売を開始しているという。
7月21日付「北京青年報」によると、香港の恒生銀行が発表したレポートでは、現在香港の64の銀行が人民元関連業務を展開しており、人民元の総貯蓄金額は850億元に達し、香港で発行されている人民元建て債券総額も380億元に達したと示されている。また、中国人民銀行によると、今年上半期のクロスボーダー人民元貿易決済(Cross-border yuan trade settlement)総額は2009年下半期の20倍の706億元で、香港での人民元貿易決済総額は全体の75%の530億元だという。恒生銀行は、今年の年末までに香港での人民元貿易決済累計総額は1000億元を突破する可能性があり、また新「協定」の締結で香港では本土以外で、世界でははじめての人民元インターバンク市場及び人民元現物市場が現れるだろうとの見通しを示した。
中国人民銀行の周小川・総裁は、昨年3月に発表した論文で、2008年リーマンショックを受けて米ドルを基軸通貨とする国際通貨体制を批判し、国際通貨基金(IMF)に対して、特別引き出し権SDRを準備通貨にすべきだと提案した。この提案により、人民元国際化の加速への道が開かれた。金融危機以降、また昨年欧州主権債務危機発生後、米ドルやユーロなど主要通貨が急落したことで、為替レートが急変動し、中国の貿易、とりわけ輸出企業に大きなダメージを与えた。人民元建て貿易決済では、こういった為替リスクを減軽するのが中国政府の狙いの一つだ。
昨年7月6日に、中国の上海、広州など南部地方の主要5都市を試行エリアとして、人民元建て貿易決済が実施された。今年の6月22日になると、試行エリアが北京、天津、四川、チベットなど20省および直轄市へと拡大した。また、香港やマカオ、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国との間の人民元建て貿易決済が可能になった。
一方共同通信によると、日本では現在千葉銀行や百五銀行などの地方銀行7行が、三菱東京UFJ銀行の中国現地法人を通じて中国に進出している日本企業に人民元建ての貿易決済業務の取り扱いを開始した。
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