【大紀元日本6月23日】5月中旬に始まったホンダ中国部品工場のストライキが、中国各地に燃え広がり、外資系企業で賃上げを要求するストライキが相次いでいる。中国人労働者の賃金が引き上げられることによって、製造コストが高くなり、Tシャツ、スニーカーなどの生活用品からパソコン周辺製品、スマートフォンなどハイテク製品までの価格が上昇し、世界的なデフレが終焉するのではないかとの考えがエコノミストの間で広まっている。
この20年間、中国で製造するによって世界各国の企業がコスト削減及び低価格の設定を実現できたが、「これからは、この(デフレ)時代が徐々に終わる」と、クレディ・スイスの経済アナリスト・陶冬氏が、ニューヨークタイムズ6月7日の報道で考えを示している。
自殺者が相次いだ台湾系大手電子機器メーカーの富士康集団の深セン工場は2段階で、従業員の賃金を当初の月額900元(約1万2150円)から2000元(約2万7千円)に大幅に引き上げた。また、自動車大手のホンダ佛山工場も従業員の賃上げストに対応して、賃金を34%引き上げた。
各地の政府も、ストライキの発生を見込んで、最低賃金基準を引き上げる動きに積極的に乗り出している。6月11日、北京市政府は、7月1日から、市内の最低賃金基準である月額800元(約1万800円)から960元(約1万2960円)に引き上げると発表した。広東省深セン市も6月9日、同市の最低賃金基準を月額1100元(約1万4850円)までに引き上げると決定した。今後、その他の都市でも最低賃金基準が次々に引き上げられるものと思われる。
経済学者の見解では、中国政府が外資系工場での賃上げストを黙認し、主要都市部の最低賃金基準を引き上げる目的は、労働者の購買力を上げ、国内民間消費を拡大させることにある。同時に、低付加価値製品の輸出への依存を低下させ、輸出企業が高付加価値製品を開発・生産するよう促し、貧富の格差を縮小させるという一石四鳥を狙っているという。
米国ペンシルバニア大学ウォートンスクールのマーシャル・マイヤー経営社会学教授は、中国の人口構成の変動で労働市場に供給できる若い労働者の減少が、賃金上昇の一因であると指摘する。
3月16日付の国内「華夏経緯網」電子版によると、台湾系企業が労働者不足問題に悩まされている。広東省東莞市台湾商人協会の葉春栄・会長は、同協会の調査によれば、東莞及び深セン地区において約300万人の労働者が不足しており、珠江デルタ全体では約1千万人の労働者が不足していると述べた。
人件コストの増加で、アパレルのような低付加価値製品の加工・生産がベトナムなどのより賃金の安い国に移される可能性が高いが、パソコン部品やスマートフォンなどのような比較的に粗利益率の高い下請け電子部品メーカーが工場を移転する可能性は低いだろうと、ジョージタウン大学マクドナウビジネススクールのリボリ・ピエトラ教授は見ている。
しかし、現在中国で拡大する賃上げストは主に外資系企業を対象にするもので、中国企業では外資系企業よりも賃金が安いにもかかわらず賃上げストは許されていないのが現状だ。
5月末、河南省平頂山市の平綿紡績集団の約5千人以上の従業員が、同社が国有企業から民営企業に変わったことで、賃金が月額800元に下がったことに不満を示し、賃上げストを行った。当局は700名以上の警察を出動させ、4人の従業員を逮捕した。また、同社の管理層幹部が暴力団とみられる人を雇い、ストに参加した従業員を殴打し、少なくとも10人以上の人にけがをさせたが、警察側は加害者を取り調べなかったという。
中国企業まで賃上げストが拡大することで社会不安が広がり、その結果政権が脅かされるのを中国当局は恐れている。6月9日に起きたホンダ中国系列の3件目のストライキに対して、当局は報道規制の姿勢に一変した。現在、ストライキに関する報道は、中国の新聞やネット上から姿を消している。中国での賃上げ風潮はまだ一部に限られている状況といえる。
世界銀行の先週の発表では、中国労働力マーケットの柔軟性と製造業全体がコスト増加を抑える経験から、賃上げはあっても物価の大幅な上昇を引き起こすことはないという。
スタンダードチャータード中国は、先週発表した報告で、中国の賃上げは、GDP上昇プラスインフレ水準の合計を超えない限り、インフレには繋がらないと述べられている。
世界的デフレの終焉までの道のりはまだ遠いように見える。
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