【大紀元日本6月21日】6月19日、中国人民銀行(中央銀行)が同行のオフィシャル・ウェブサイトで「人民元の為替制度改革を更に一歩進め、相場変動の弾力性を高める」との声明を発表し、05年7月21日から08年のリーマン・ショック発生までに行われた緩やかな元高誘導を再開するとの意向を示唆した。しかし、具体的な切り上げ幅や再開時期については言及しなかった。
中国の発表に、専門家は、大幅な切り上げがない見解を示している。G20を前に人民元に対する西側の急速な批判を封じるための中国の回避対策とも見られている。
中国金融当局はリーマン・ショック以降、輸出産業を保護する目的で、人民元の対ドルで1ドル=6.82元前後とほぼ固定相場制度を実施してきた。そのため、米国やユーロ圏は中国に対して人民元切り上げに関する強い圧力をかけてきた。米議会などは今月末にカナダ・トロントで行われるG20金融サミット後に人民元を切り上げしなければ、不当に安く輸入される中国製品に対して、国会に制裁法案を提出すると16日に警告した。オバマ政権も18日、金融サミット後に人民元改革が実行されなければ、中国を「為替操作国」と認定すると示唆した。
中国が突然出した元高誘導を再開する理由について、中国興業銀行チーフエコノミストの魯政委氏は中新社の取材に対して、3つあると示した。
1つ目として、ユーロの大幅下落で中国の対ユーロ圏輸出が打撃を受けているが、5月の貿易黒字が195億ドルと急速に拡大したこともあって、ドルペッグ制度を見直す必要があったという。
2つ目に、中国の国際資本流入が最近大幅に減少しているのに対して資本流出が加速しているため、人民元を切り上げれば、政策金利の引き上げ圧力を緩和し、国際資本流動の激しい変動を改善することができるという。
そのほか、今月末にカナダ・トロントで開催されるG20金融サミットにおいて、欧米諸国からの人民元切り上げ圧力を回避できることも理由として考えられるという。
しかし、魯氏は人民元の大幅な切り上げはなく、年内は切り上げ幅が2%に維持されるだろうとの考えを示した。
理由は主に3つある。▼現在中国国内で外資系企業を中心に賃上げストが多発し、今後労働コストの急上昇が見込まれる。そんな中、元を切り上げれば、全体的な生産コストがさらに高くなることで、多くの企業が経営困難に陥ると予想される▼人民元切り上げの圧力を緩和する一つの手段として、産業を「靴下」や「アパレル」などの低付加価値製品の生産から、「電子チップ」や「半導体」など高付加価値製品の生産に変えることにする。しかし、これは直ちにできることではなく、数世代にわたってはじめてできることである▼国内の投資過熱化、資本の過剰流動性や外貨準備高の急速な増長などの問題は国内の生産要素価格が低すぎることが原因だと政府当局が認識しており、今現在生産要素価格改革を推進しており、仮に大幅な人民元切り上げをすれば、双方から重い圧力を受ける中国経済は破たんする恐れがあるという。
魯氏は人民元切り上げ問題に関して、中国政府は依然として、「緩やか、長期的、漸進」との戦略を採っていくだろうとの考えを示した。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。