【大紀元日本6月17日】長年、中国の三峡ダム建設に注目してきた英国の元外交官によると、三峡ダムには亀裂が現れており、ダムと重慶市の間には1万か所近い危険な場所が存在し、新たに30万人の移転が必要だという。中国国内の専門家も三峡ダム建設は利益よりも弊害が多いと指摘している。
1万の危険箇所
三峡ダムにおける地滑りの発生や生態環境の悪化、アオコの大量蓄積などの問題は、中国国内メディアも以前から取り上げて来た。それらの問題に加え、三峡ダムと重慶市の間の道路や建物に、地滑り、微小地震、亀裂が頻繁に発生していると、英国の元外交官ティム・コラード氏が7日付けの英「デイリーテレグラフ」に掲載した文章で指摘した。
それによると、1万近い危険箇所が確認されているが、資金不足のため、付近住民は移転できずにいる。
三峡ダムプロジェクトではすでに140万人が移転させられたが、今また新たに30万人が移転を迫られることになったという。
さらに、三峡ダムは李鵬元首相が特に力を入れたプロジェクトであり、その着手は、経済的効果以上に政治的動機によるもので、工事は十分な論証を重ねないままに強行されたと、同氏は指摘する。
三峡ダムのこれらの問題は、政府系メディアでも公表されている。それは、実質的な危害をもうこれ以上隠せないからだとコラード氏は述べる。大規模なパニックを避けようと、中国当局は慎重に対処しており、これまでは、集団抗議や地方陳情をほぼ阻止できている。
これと同時に、当局は完全に情報を封鎖することを望んではいないようだ。水力エンジニア出身の胡錦涛氏は三峡ダムプロジェクトとは一線を画すように努力しつづけており、李鵬氏のために火中の栗を拾うような冒険を犯すことを望まなかったという。
国内専門家:代償は大きい
長江の専門家で、四川地鉱局区域地質調査隊の範暁氏は米VOA記者の取材に対し、コラード氏の指摘した1万近い危険箇所を確認することはできないが、現在政府サイドで確定している危険箇所は5、6千か所以上と答えている。
「国土部の調査によると、現在確認されているのはおよそ5千から6千か所以上。この数字には、はっきりとした地質災害地域と潜在的な地域が含まれる。政府はすでに地質災害対策に200億元を投資しており、今後も続くだろう。三峡ダムの地質危害は厳しい問題だと言わざるを得ない」
範氏はまた、地質災害以外に三峡ダム工事の生態環境や現地住民に対する影響も甚大であり、少なくとも現時点では三峡ダムは利益よりも弊害が多いと指摘した。
同氏によると、三峡ダム建設が始まる前、長江の流れは比較的速く、一定の自己清浄能力を持っていた。ダム建設後、その流速は遅くなり、多くの汚染物質が水中に蓄積し続けることとなった。水質の悪化によりアオコや緑藻などが大量繁殖し、魚類などの水生生物に大きな影響を与えているという。
さらに、三峡ダム建設がもたらした移民問題によって、多くの人の生活が貧困化し、注目すべき社会問題となっていると範氏は話す。
「移転前の貯水池地区は盆地で、土地は豊穣だったが、ダム建設によって耕地に適さない山の斜面に移転させられることが多い。その生存条件の悪化で三峡移民の貧困化が引き起こされている。地質災害、生態環境、社会移民などを含め、これらの社会的代償は計り知れない」と範氏は分析する。
三峡ダムの弊害と利益についての論争は途切れることがない。「中国水利界の良心」と称された清華大学水利学部教授の故黄万里氏は、かつて黄河三門峡ダム建設の弊害を主張したことで、22年間右派とされてきた。黄氏の警告の通り、三門峡は後に水害工事となった。
三峡ダム建設に関しても、黄教授は6度にわたり国家指導者に、建設反対の意見書を出している。90歳の黄氏は2001年に亡くなる直前の昏迷中にも、「三峡ダムは絶対に作ってはならない」と叫んだという。
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