【大紀元日本5月24日】「ニワトリより早く起き、ネコより遅く寝る。ロバより重労働をさせられ、食べ物はブタより粗末」。過酷な生活を強いられている中国の農民工(農村からの出稼ぎ労働者)が、改革開放30年来のGDPの21%を作り出し、農民も合わせて、中国が世界に誇るGDP急成長の6割は彼らの手によって作り出されているということが、中国社会科学院の調査でわかった。世界第2位を争うGDPの栄光の下に隠された立役者、農民工の実態はどうなっているのか。
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巨大な賃金格差
中国の社会科学研究者・劉植栄氏が今年発表した論文『世界の賃金考査』によると、中国の最低賃金額は世界平均の15%にも達しておらず、調査対象の183カ国の中で159位。貧困問題を抱えるアフリカの32カ国よりも低い。さらに、この最低賃金は一人当たりGDPの25%しか占めておらず、世界平均の58%を遥かに下回る。
農民工はまさにこの最低賃金の層を占め、7割以上は月給800元(約1万円)以下とされる(2006年統計)。さらに、ほとんどの農民工は給料の遅延や不払いを経験しており、その不払い額は全国規模で1千億元(約1兆3千億円)にも上ると、中国社会科学院の専門家が分析する。
一方、中国の公務員の給料は国の最低賃金の6倍であり、世界平均の2倍を大きく引き離す。国営企業の高級管理職の給料は最低賃金の98倍で、世界平均の「5倍」はその端数にもならない。中国の業種間賃金差は3000%で、世界平均の70%を遥かに上回る。
さらに、一般労働者の報酬がGDPに占める割合はここ22年間で2割下がっており、6割の労働者は賃金格差が最大の不公平だと不満を示す。「中国はこの十数年間で、世界で最も貧富の差の激しい国に仲間入りした」と劉氏は指摘する。
極端な3Kに命の危険
最廉価の労働力と見なされる出稼ぎ労働者が従事する仕事は、極端な「きつい」「汚い」「危険」の3K業種である。労働時間は12時間~16時間に達し、法定休日もない。建築廃材で建てられた粗悪な仮設住宅に大勢で身を寄せ、「汚い」住環境が伝染病や食中毒を引き起こす。
さらに、農民工が勤める工事現場や重工業の工場、炭鉱などは基本的な安全措置が講じられておらず、劣悪な労働条件のもとで人身事故が多発する。深セン市だけでも、毎日31人の農民工が仕事中の事故で身体に障害を残し、4日半に1人が事故で命を落とす。特に炭鉱で働く農民工の9割以上は塵肺にかかり、全国で100万以上の塵肺症患者がいると言われている。塵肺による死者は、炭鉱事故のそれの3倍に達するという。
4割の農民工は、塵肺に加えて結核、肝炎、骨増殖症などの症状に悩まされている。医療保障もない彼らは病院にも行けず、働けなくなるまで放置することが多い。
残れない都市、帰れない農村
最新の『中国都市発展報告』によると、毎年1億人以上の農民工が都市部に移動し、世界最大の移民群を成している。しかし、彼らは中国の戸籍制度に阻まれ、長く都市に住んでいても、都市の住民になることはできない。子供の教育、医療保険、年金などすべての社会保障制度から外されている彼らは、窮屈で不安定な生活を余儀なくされている。
社会の発展期は工事現場や工場などで大量の農民工を必要とするが、2008年の金融危機の時は2800万の農民工が失業に追い込まれた。保障制度の対象外である彼らは、都市の発展に大きく貢献しながらも、いつでも都市から切り捨てられる運命にある。
家庭の危機
1億人以上いる農民工の約半分は既婚男性で、そのうち長期的に帰郷できない農民工は2千万人に上る。夫婦間の連絡が途絶えたり、出稼ぎに出た側からの振込みが途絶えたり、寂しさに耐え切れずに不倫したりなど彼らの家庭生活は危機にさらされている。
また、夫婦で出稼ぎに出ている家庭の子供はおよそ1千万人で、学校教育も家庭教育も満足に受けられないまま祖父母や親戚の家に預けられる。彼らはほぼ野放しの状態で、若い世代の農民工犯罪者の8割はこのような農民工二世だという。また、風俗業で働く多くの女性出稼ぎ労働者が派手に着飾って帰郷すると、田舎で質素な生活を送る女性や子供の憧れの的となり、家庭崩壊に拍車をかけることもあるという。
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