【大紀元日本5月19日】ナイフを持って、幼い娘を殺そうと追いかけるお父さん…。夕食後の親子の団欒の時間は「殺人ごっこ」。1ヶ月前、仕事後、娘との時間のすごし方についてのあるネットユーザーのこの書き込みは、中国のネット上で議論を引き起こし、多くの反対を招いたが、今月は賛成するばかりか、子持ちの若い多くのお父さんらが真似をしてしまう。
我が子を幼稚園に行かせながら、日中、恐怖を覚える親たち。福建省、広東省、江蘇省、山東省、山西省、陝西省…、3月下旬から連続7回も起きた無差別児童集団殺傷事件で、社会全体が大きく揺れ動いている中国。「調和のある社会」を唱える共産党中国のトップリーダー温家宝首相も、「治安策を強めるほか、これらの問題を作りだした深層にある原因を解決しなければいけない」と火山口に立つ中国の深刻な社会環境問題を認める。
その深層にある原因として、社会学専門家は、「社会への復讐犯罪」と指摘している。中国社会科学院研究員の于建嶸氏は、著しく変貌している中国社会は今、公理や正義が極端に欠如している。弱者が社会に反抗する傾向となるのも不思議ではないと指摘する。最高アクセス数を持つブロガーで、中国の人気作家、韓寒氏は、当局によって削除された文章の中で、「この社会で行き詰まった彼らが、幼稚園や小学校に行って子どもたちを殺すことは、社会への復讐を果たすためだ」と記す。
2カ月で7回の児童殺傷事件
3月23日、解職された外科医師・鄭民生容疑者が、福建省南平市南平実験小学校に侵入し、刃物で小学生8人を殺害、5人に重傷を負わせた。被害者はみな8、9歳の小学生だった。
4月12日、広西チワン族自治区合浦県西鎮小学校前で、無差別殺人事件が起き、刺されて死亡した2人のうち1人は8歳の小学生だった。
4月28日、広東省雷州雷城第一小学校の停職処分を受けた教師・陳康炳容疑者が、学校に押し入り、刀を振りまわして、教員と学生の計19人に重傷を負わせた。
4月29日、無職の者が江蘇省泰興鎮中心幼稚園に入り、刃物でスタッフ、園児、保護者の計29人を負傷させた。
4月30日、農民が山東省濰坊市尚庄小学校で、ハンマーで小学生5人を殴ったあと、自分は焼身自殺をはかった。
5月9日、江西省吉水県の周葉忠容疑者が、刃物で、娘、母親、妻を含む計8人を殺害した。
5月12日、陝西省漢中市南鄭県で男性が、刃物を持って幼稚園に乱入。園児7人と幼稚園スタッフ1人を殺害し、園児11人と大人1人を負傷させた。
緊迫した小学校
弱い児童を対象とした無差別殺人事件が相次ぐ中、児童を守るために、中国の各地ではそれぞれ緊急対策が実施されている。
北京市の学校では、警察用の道具を用意したほか、キャンパス内の監視カメラが警察とネットワークで結ばれている。南京市では、67の学校が警備員、警棒などを配備した。長沙市では、保護者たちが自発的に警備隊を作り、ローテーションで子供たちを守っている。重慶市は、学校に警備員を配備した上に、学校周辺に精神病患者がいないか調べている。済南市では、警察が小中学校に常駐。また、武漢市では、2千ほどの学校が暴力防止対策案を策定。成都市では、700万元で「学校天網」システムを作り、学生の安全を守っている。
このように、各地域、各学校が、慌てて独自の対策を打ち出し、緊急体制にはいっている状態だ。
一方、「学校も監獄のように武装警察を配備し、厳しく管理しなければならないのか」「学校は本来安全で自由な場所のはずなのに、まるで恐ろしい墓地のような場所になってしまったのではないか」という疑問の声も上がっている。
加害者による「社会への復讐」
仇を討つためでなく、無差別に殺人するためであれば、その行為はテロの性質を帯びてくる。専門家は「社会への復讐犯罪」と呼ぶ。
雷州の殺人容疑者・鄭民生は、捕まった時に「お前たちが俺を生かせないなら、お前たちに仕返ししてやる!」と叫んでいた。社会に対しさまざまな不満を抱え、絶望を感じる彼は、エリートの子供だけが通う小学校を選んで、自分なりの社会への復讐を行った。
彼のケースについて、複数の社会・犯罪心理学者が次のように指摘している。「社会への復讐犯罪」を阻止するには、国民の生存問題の解決が最も重要。たとえば、社会保障制度を実施し、弱者を失望させない最終的な保障システムを提供する。また、弱者には、物質的な援助だけでなく精神的な支援も不可欠である。彼らには、自分たちの尊厳と生きていく希望を感じさせなければならない。あらゆる手段を使って、官僚と民間とのギャップを解消し、貧富の差を縮め、対立を弱める必要がある。
「社会の圧力があまりに大きい。幸福の指数がきわめて低い。不公平極まりない状態だが、問題解決のめどが立たない。一部の人が極端な手段を用いて、長年のストレスを発散しようとした……。要するに、今のような状態が続けば続くほど、問題はますます深刻化するばかりだ」と内モンゴルの「古雪風」と名乗るネットユーザーは語る。
深圳市のあるネットユーザーは、「子供は国家の未来と希望というが、その子供たちが続けて殺害されているこの国家に、未来と希望はまだあるのだろうか。そもそも国家と言われるものは、私が左右できるものではない。私は不平を言う権利も剥奪されてしまったからだ」と書き込んでいる。
北京市のあるネットユーザーは「学校が貴族化し、指導者は多元化し、教員は奴隷化し、学生は宗教化し、人間関係は複雑化し、残業は日常化し、各種の検査が厳格になり、待遇が低下する中、国家の主になるなんて、まったくの神話だ。こういった社会において、このような事件が起きるのも、ごく当たり前」との考えを示している。
貴陽市のあるネットユーザーは「子供たちを殺害した犯罪者は非難されるべきだが、同時に今のような道徳を喪失した社会になってしまった原因を探ることを忘れてはならない」と指摘した。
連鎖反応を食い止める根本的な対策
5月11日、ある男が広州市の110番に「俺は社会に不満を抱き、今、汽車で広州に向かっているところで、下車後、先ず何人かを殺してやる」と自分の犯罪計画を通報した。
その後、男の身分が判明したため、彼は広州に向かわず、故郷の河南省に帰った。警察は今も徹底捜査を行っており、本人を見つけ次第、すぐ逮捕すると言っている。
これを受けて、武漢市のネットユーザーは、「同胞よ、危機がわれわれのすぐそばに迫っている。自分をしっかりと保護しよう」と呼びかけている。
一連の事件で、不安を募らせている中国の国民は、このような悪質な犯罪を譴責すると共にその背後にある社会的な原因も考えざるを得なくなっている。
中国社会科学院研究員の于建嶸氏は次のような見解を述べている。中国社会は今、著しく変貌しているところだが、公理や正義が欠如している。法律を遵守し勤勉に働く者が得るものはわずかで、法律を無視し、腐敗・横領する者が多大な利益を享受している。弱者が社会に反抗する傾向となるのも不思議ではない。
中国の民主活動家である武振栄氏は、別の視点から、問題の背後にある社会的な要因を指摘し、中国の国民に呼びかけている。
同氏は、一連の殺人事件を共産党の国家的殺人を模倣したものであり、すなわち「高位摸倣」行為と名付ける。また、これらの無差別殺人事件は、孤立した刑事問題ではなく、中国が危機の状態に入ったシグナルであり、殺人を好む中国の独裁政治が崩壊する一種の前兆でもある。
この事件を受けて、多くのネットユーザーたちが、中国では革命がそろそろ起きる。今の政権はすでに滅びた。動乱がそろそろ起きるなどと予測している。それらはみな正しい推断であり、「中国の民主活動家として、呼びかけたい。殺人を基盤とする中国の政治を徹底的に埋葬することこそ、このような連続的な無差別児童殺傷事件を食い止める唯一の方法だ」と提起している。