【大紀元日本6月7日】日本を訪問中の李登輝・台湾前総統(84)は7日、都内のホテルで講演を行った。会場を埋め尽くした政財界人ら約1500人の聴衆を前に、「2007年とその後の世界情勢」と題して、米・ロ・中を基軸とした世界情勢の俯瞰から、政治的に転換期を迎える東アジア情勢分析、台湾海峡問題、今後の戦略的な意義とその動向に迫った。特に、東アジアで最も重要な位置を占める中国について、経済危機はすでに存在しており、外資の減少や、都市と農村の経済格差などの経済問題で引き起こされる衝撃の緩和策、あるいは、北京五輪や宇宙計画など大衆の注意をそらす愚民政策の方針をとりながら、北京政府は問題の表面化を「無期限に先延ばしたいと考えている」と非難した。
李氏は講演に先立ち、同日午前、東京・千代田区の靖国神社を参拝した。実兄の李登欽氏は日本海軍の軍人として大戦中の1945年、フィリピン戦線で没し、日本名「岩里武則」で靖国神社に祭られている。参拝前の記者会見と同様、「兄に会いに来るのは当然であり、個人的なこと。政治的なものではない」と参拝の目的をあらためて強調した。
講演では、はじめに反テロ対策を掲げイスラム世界との衝突によるブッシュ政権の弱体化に悩む米国、旧ソ連時代の対外的支配力の奪還を目論むロシア、経済問題など内部に問題の処理に追われる中国と、世界情勢の基軸となる三国の2007年の現状を分析した。特に、中国の経済問題は深刻で、「(中国の)経済の高度成長は決して健全な経済の現れではなく、逆に経済疾病の症候群」と厳しく指摘した。
東アジアの情勢では、日本・台湾・韓国・フィリピン・オーストラリアの各国で中央選挙が行われるほか、中国・北朝鮮・ベトナムの共産党国家も上層部の人事再編が行われることから、各国が内政問題に集中すると指摘。特に、日本の教育基本法と憲法改正により「普通の国家に転換しようとしている」として安倍政権の支持を表明しながら、本年7月の参院選を「真の戦い」と位置づけ、「強い内閣政治は、日本にとって大切なこと」として、米国に倣ったNSC(国家安全保障会議)構想の具体的な推進を求めた。
経済危機に直面する中国の取るべき対策は、地方政府の汚職一掃による経済行為の管理・誘導、つまり、政府役人の免職を敢行すべきであるとし、上海閥の粛正はこの一環で、今秋開かれる「十七全大会」を、胡錦涛政権の「強大な権力の樹立」と位置づけ、経済の中央集権体制の立て直しが狙いであると分析。経済危機の管理に取り組まざるを得ない中国が、関心を持っているのが「米議会の対中国経済攻撃の動き」と指摘した。
台湾海峡問題では、中国当局は、台湾の政局動向を注視しており、国民党への影響力を維持しながら、民進党へも影響力を強化していく、リスクを低減する慎重姿勢をとると、李氏はみている
2008年以降の戦略的動向として、米国は、弱体化したブッシュ政権後の体制立て直しで、失った太平洋制海権を巡って中国と競争すると分析。07~08年の2年間は米国が東アジアの主導権を失うことから、同地域の権力競争は日中が主軸になるとみて、中国と対等に張り合う力を持つよう、日本は努力すべきだ
(大紀元)
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